会社設立に公認会計士の出番はあるのか|監査・証明の資格と、税理士登録に要る研修
この記事は、こういう疑問に答えます
- 会社設立の相談先を調べていて名前が出てきた公認会計士は、何をする資格なのかが分からない方。税理士との違いがはっきりしない、という方も含みます。
- 「公認会計士は税理士の仕事もできる」という説明を読んで、それは無条件なのかが気になっている方。ここは条件が付いているところです。
- 先にお伝えしておくと、会社設立そのものの場面で公認会計士の出番はほとんどありません。それがなぜなのかを条文で確かめたうえで、では何を依頼できるのかを整理します。専門家の優劣を書くつもりはありません。担当する分野が違うだけです。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
会社設立の手続きを並べて、出番を探してみる

公認会計士に会社設立を依頼できるのか。この問いに答えるには、まず会社設立でやることを並べてみるのが早道です。定款をつくる、認証を受ける、出資金を払い込む、設立登記を申請する、税務署へ届出を出す、年金事務所へ届出を出す。この並びのどこにも、財務書類の監査や証明は出てきません。

会社設立の手続きは、登記・税務・社会保険・許認可という四つの分野に散らばります。それぞれ司法書士・税理士・社会保険労務士・行政書士の分野で、監査や証明という仕事が入り込む余地がありません。これは公認会計士という専門家の力量とは無関係で、業務の定め方の問題です。どの専門家に依頼するかを考えるときは、この定め方のほうを見ることになります。
以下で「できる」「できない」と書いているのは、報酬をもらって業として行えるかどうかです。会社設立の手続きをご自身で進めることは、どの資格がなくてもできます。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。
出典公認会計士の仕事内容(日本公認会計士協会)
公認会計士法2条を読む

公認会計士の業務は、公認会計士法2条が定めています。1項と2項で性質が分かれていて、この違いが会社設立の話にも効いてきます。
1 公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。
2 公認会計士は、前項に規定する業務のほか、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
1項が、いわゆる独占業務です。財務書類の監査または証明。同法47条の2が「公認会計士又は監査法人でない者は、法律に定のある場合を除くほか、他人の求めに応じ報酬を得て第二条第一項に規定する業務を営んではならない」と定めていて、ここは公認会計士と監査法人だけの領域になっています。
2項は、それ以外に行える業務です。財務書類の調製、財務に関する調査・立案、財務に関する相談。ただし末尾に「他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない」というただし書きが付いています。税務は税理士法で、登記は司法書士法で制限されていますから、このただし書きによって外れます。行政書士法1条の3第2項や社会保険労務士法2条4項と同じ考え方です。
行政書士法1条の3第2項、司法書士法3条8項、社会保険労務士法2条4項、そして公認会計士法2条2項ただし書き。どの法律にも「他の法律で制限されているものは除く」という趣旨の規定があります。この積み重ねで、士業の業務範囲は重ならないように区切られています。どの専門家が偉いという話ではなく、住み分けの仕組みです。
出典公認会計士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が監査・証明、同2項ただし書に他の法律による制限。
そもそも監査が要る会社は、ごく限られている

では、財務書類の監査はどんな会社に必要なのでしょうか。会社法の側を見ると、会計監査人を置く義務が生じるのは大会社とされています。
1 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
その「大会社」の中身は、会社法2条6号が定めています。最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であるか、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であるか。このいずれかに当たる株式会社が大会社です。
会社設立で決める資本金の額は、多くの場合そこまで大きくなりません。参考までに、株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%で、これで計算した額が15万円に満たないときは15万円とされています。5億円という基準は、会社設立の段階で意識するような水準ではないということです。負債200億円のほうも同じです。
つまり、会社設立の直後に法律上の監査を受けなければならない会社は、実際にはほとんど存在しません。公認会計士の1項業務が会社設立で出てこないのは、こういう理由です。会社が育って規模が大きくなったとき、あるいは株式の公開を考える段階になったときに、はじめて依頼の相手として名前が挙がる話になります。
ちなみに、金融商品取引法にもとづく監査や、補助金・助成金の関係で財務書類の証明を求められる場面もあります。ただし、これらも会社設立の手続きそのものとは切り離して考えたほうが整理しやすくなります。
出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。
「公認会計士は税理士登録できる」の、条件のところ

会社設立の相談先を調べていると、「公認会計士は税理士登録をすれば税務ができる」という説明をよく見かけます。これは正しいのですが、無条件ではありません。条文を見ると、条件が別の項に置かれています。
1 次の各号の一に該当する者は、税理士となる資格を有する。(略)
三 弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)
四 公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)
3 第一項第四号に掲げる公認会計士は、公認会計士法第十六条第一項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了した公認会計士とする。
1項4号だけを読むと「公認会計士」と書いてあるだけなので、無条件のように見えます。ところが3項が、その4号にいう公認会計士を絞り込んでいます。実務補習団体等が実施する研修のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了した公認会計士に限る、という書き方です。

税理士法3条3項の存在を書かずに1項4号だけを引く解説は少なくありません。ですが条文は、税法に関する研修の修了を条件にしています。会社設立の依頼先を選ぶときに直接効いてくる部分ではありませんが、説明の正確さとして押さえておきたいところです。
なお弁護士については、税理士法3条1項3号が資格を認めており、こちらには3項のような条件がありません。ただし実際に税理士業務を行うには、同法51条1項により所属弁護士会を経て国税局長に通知することが必要です。資格の話と、業務を行うための手続きの話は別だということです。
出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…
公認会計士に依頼できないこと

会社設立の周辺で、公認会計士に依頼できないものを並べておきます。いずれも公認会計士法2条2項ただし書きの「他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項」に当たります。
こうして並べると、会社設立の手続きのほぼ全部が、公認会計士の業務の外にあることが分かります。繰り返しになりますが、これは専門家としての優劣ではありません。依頼できないというのは、範囲の外にあるという意味です。監査・証明という別の領域を担当している、というだけのことです。
2025年6月1日から、刑法の改正にともなって「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。士業の罰則を引いている記事で「1年以下の懲役」と書かれているものは、それより前の条文を写しています。条文を引く記事は、確認した日付が書かれているかを見てください。
出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
では、公認会計士に相談する場面はいつ来るのか

会社設立の場面で出番が少ないというだけで、公認会計士に相談する場面がないわけではありません。時期がずれているとお考えください。おおまかには次のような場面です。
- 外部から資金を集めるとき投資を受ける、金融機関から大きな借入れをするといった場面では、財務の見せ方や事業計画の数字の組み立てが問題になります。公認会計士法2条2項の「財務に関する調査若しくは立案」「財務に関する相談」がここに当たります。
- 株式の公開を考えるとき上場を目指す段階になると、監査を受けられる体制を整えることそのものが課題になります。ここは監査の側の話です。
- 会社が大会社の規模に近づいたとき資本金5億円以上または負債200億円以上という会社法2条6号の基準に近づけば、会計監査人の設置が視野に入ります。
- 他社を買う・売る話が出たとき財務の内容を調べる場面で関わることがあります。ここは弁護士とも重なる領域です。
- 補助金などで証明を求められたとき制度によっては、財務書類について公認会計士等の証明を求められることがあります。制度ごとに要件が違うので、募集要項の確認が先になります。
会社設立の直後であっても、公認会計士法2条2項の財務に関する相談という形であれば接点はあります。ただし、この段階で数字の相談をしたい場合、多くの方はまず税理士に相談することになると思います。設立後の記帳と申告が続くためで、そこを一緒に見てもらえるほうが実務として動きやすいからです。
なお、公認会計士の資格と税理士の資格を両方持っている方もいます。その場合は税理士としての業務も行えますから、会社設立の直後から依頼して関わってもらうことができます。どちらの資格で関わってもらうのかを確かめておくと、依頼の範囲がはっきりします。
出典公認会計士の仕事内容(日本公認会計士協会)
資格の確かめ方。二つの名簿を見ます

公認会計士の資格を持つ方に会社設立や設立後のことを相談する場合、確かめておくとよいのは二つの登録です。公認会計士としての登録と、税理士としての登録。片方だけの場合もあります。

実費と報酬は、どの専門家に依頼しても分かれます
会社設立にかかるお金は「実費(法定費用)」と「報酬」に分かれます。登録免許税や定款認証の手数料といった実費は、誰に依頼しても、ご自身で手続きしても同じ額です。差が出るのは報酬のほうだけです。なお、税理士には全国団体が公表する報酬の統計がなく、公認会計士についても同様です。見積もりを取って比べることになります。
ここで挙げた検索は、いずれも各分野の全国団体が公開しているものです。当サイトは特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしていません。会員検索は、どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段として紹介しています。
出典公認会計士等検索システム(日本公認会計士協会) 登録済みの公認会計士・監査法人を検索できる公式DB
まとめ|出番が少ない理由がはっきりしています

ここまでの内容を短くまとめます。会社設立の依頼先を考えるときの材料として使ってください。
- 業務は監査と証明公認会計士法2条1項が「財務書類の監査又は証明」を業とすると定めています。47条の2により、これは公認会計士と監査法人だけの領域です。
- 2条2項にはただし書き財務書類の調製、財務に関する調査・立案・相談も行えますが、他の法律で制限されている事項は除かれます。税務と登記はここで外れます。
- 監査が要る会社は限られる会社法328条が会計監査人の設置を求めるのは大会社です。大会社は資本金5億円以上または負債200億円以上(会社法2条6号)。会社設立の時点で当てはまることはまずありません。
- 税理士登録には条件がある税理士法3条1項4号が資格を認めていますが、同条3項により財務省令で定める税法に関する研修の修了が条件です。無条件ではありません。
- 登記も社会保険も外れる登記は司法書士、社会保険は社会保険労務士の分野です。会社設立の手続きのほぼ全部が業務の外にあります。
- 出番は会社が育ってから資金調達、株式の公開、規模の拡大。時期がずれているだけで、相談する場面がないわけではありません。
会社設立をこれから進める段階でしたら、依頼先としてまず名前が挙がる専門家は登記なら司法書士、税務なら税理士です。公認会計士の資格を持つ方に相談する場合は、税理士としての登録があるかどうかを確かめてください。資格の優劣ではなく、依頼できる範囲の話です。
この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。条文も制度も改正されます。実際に判断されるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認のうえ、公認会計士・税理士・司法書士といった各分野の専門家に直接ご相談ください。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
会社設立の相談先としては、まず税理士か司法書士
会社設立の場面に限って言えば、公認会計士に依頼する場面はほとんどありません。登記は司法書士、税務は税理士、定款と許認可は行政書士、社会保険は社会保険労務士。この四つの専門家で会社設立の手続きはほぼ埋まってしまい、財務書類の監査・証明が必要になる会社はごく限られているためです。
ですから、公認会計士の資格を持つ方に会社設立や設立後のことを相談する場合、実際に関係してくるのは税理士としての登録があるかどうかです。税理士法3条1項4号は公認会計士を税理士となる資格を有する者に挙げていますが、同条3項が財務省令で定める税法に関する研修の修了を条件としています。無条件ではありません。
会社が育って外部から資金を集める段階になったり、株式の公開を考える段階になったりすれば、公認会計士に相談する場面が出てきます。時期の問題だとお考えください。いまの段階でどの専門家に依頼するのがよいかは、事業の状況によって変わります。個別の判断は当サイトでは行っていませんので、各分野の専門家に事情を伝えてご相談ください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。