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会社設立を弁護士に依頼できる範囲|「一般の法律事務」に登記と税務はどう入るのか

公開 約12分(7,081字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

会社設立を弁護士に依頼できる範囲|「一般の法律事務」に登記と税務はどう入るのか

この記事の読者として想定している方

  • 会社設立を進めていて、弁護士に依頼するという選択肢がありうるのかを知りたい方。専門家ごとの独占業務の話は聞いたものの、弁護士だけ位置づけが違うように見えて整理できていない方。
  • 共同で創業する、出資を受ける、契約書のやり取りが先に発生している。こうした事情があって、登記だけの話では終わらなさそうだと感じている方。
  • この記事では、弁護士法・司法書士法・税理士法の条文をたどって、弁護士が会社設立でどこまで自分の資格で動けるのかを確かめます。どの専門家が優れているという書き方はしません。目的によって適任の専門家が変わるだけです。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

弁護士は、ほかの士業とは並び方が違う

弁護士がほかの士業とは並び方が違うことを表したイラスト
外から範囲を切り出す形ではなく、例外を作る形になっています。

会社設立の依頼先を比べた表を見ると、税理士・司法書士・行政書士・社会保険労務士が横に並んでいて、弁護士だけが「別枠」と注記されていることがあります。これは弁護士を特別扱いしているからではなく、業務の定め方そのものが違うためです。

ほかの士業は、それぞれの法律が扱える書類や手続きを列挙する形で業務を定めています。これに対して弁護士法3条1項は「一般の法律事務」という広い言葉で職務を定め、そのうえで個別の法律の側に「弁護士は別」という趣旨の規定が置かれています。外から範囲を切り出すのではなく、ほかの法律が例外を作る形になっているわけです。

会社設立の仕事を弁護士・司法書士・税理士・行政書士・社労士のどの資格が担当できるかを示した表
この記事の「できる・できない」の意味

以下で「できる」「できない」と書いているのは、報酬をもらって業として行えるかどうかです。会社設立の手続きをご自身で行うことは、どの資格がなくてもできます。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。

出典弁護士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項が職務(一般の法律事務)、同2項が弁理士・税理士の事務、72条が非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止。

弁護士法3条の条文を読む

弁護士法3条の条文を表したイラスト
1項の「一般の法律事務」が、範囲を大きくしています。

まず条文そのものを見ておきます。弁護士法3条は2項までしかない短い条文ですが、会社設立を考えるうえではどちらも効いてきます。

弁護士法 3条

1 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。

2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

出典:弁護士法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

1項の最後にある「その他一般の法律事務」が、範囲を大きくしている部分です。訴訟や不服申立てが例として挙げられていますが、そこに限られるわけではありません。契約書の作成、会社の機関設計についての助言、株主間の取り決めの設計といったものは、いずれもここに収まります。

弁護士法3条・72条と司法書士法73条1項・税理士法51条1項を並べたカード

2項の「当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる」という書き方も特徴的です。ただし、これで手続きなしに税務ができるという話にはなりません。税理士法の側に別の条件が置かれているためで、そこは後のセクションで見ます。

出典弁護士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項が職務(一般の法律事務)、同2項が弁理士・税理士の事務、72条が非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止。

登記の代理ができる筋道

司法書士法73条1項のただし書きをたどるイラスト
ただし書きの「他の法律」に弁護士法3条が当たります。

会社設立でいちばん気になるのが登記です。弁護士は設立登記の申請を代理できますし、登記申請書類を作成することもできます。ただ、その根拠は弁護士法の中には直接書かれていません。司法書士法の側をたどる必要があります。

司法書士法3条1項1号は「登記又は供託に関する手続について代理すること」を、2号は「法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること」を司法書士の業務としています。そして73条1項が、この1号から5号までの業務を司法書士以外の者に禁じています。

司法書士法 73条1項

司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

出典:司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

ここで効いてくるのが末尾のただし書きです。「他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」。この「他の法律」に弁護士法3条が当たると読まれているため、弁護士は73条1項の禁止を受けずに登記の代理ができる、という筋道になります。行政書士や税理士や社会保険労務士には、これに当たる規定がありません。

「できる」と「日ごろ扱っている」は別の話です

資格として登記の代理ができることと、実際にその事務所が会社設立の登記を日ごろ扱っていることは、別のことです。登記の申請は書式と添付書類の実務が中心になるため、登記だけを依頼したい場合は司法書士に頼むのが自然な流れです。弁護士に会社設立を依頼する場合も、登記の部分は司法書士と組んで進める形になっていることがあります。これは優劣ではなく、専門家どうしの担当の分け方の話です。

ちなみに、司法書士法73条1項に違反した場合の罰則は同法78条1項で、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。2025年6月1日から「懲役」は「拘禁刑」に変わっていますので、古い解説の表記をそのまま写さないようにしてください。

出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

税務は、所属弁護士会を経た通知が要る

税理士法51条1項の通知の仕組みを表したイラスト
所属弁護士会を経る点まで含めて、条文の条件です。

弁護士法3条2項には「当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる」と書かれています。ここだけを読むと、弁護士なら何もせずに税務ができるように見えます。ところが税理士法の側に、手続きの条件が置かれています。

税理士法 51条1項

弁護士は、所属弁護士会を経て、国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内において、随時、税理士業務を行うことができる。

出典:税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

読み落としやすいのが「所属弁護士会を経て」という部分です。国税局長に通知すればよい、と書かれている解説を見かけますが、条文は所属弁護士会を経由することまで求めています。そして通知の効果が及ぶのはその国税局の管轄区域内に限られます。全国どこでも自由に、という書き方にはなっていません。

  • 条件その一所属弁護士会を経ること。弁護士が単独で国税局長に届け出る形ではありません。
  • 条件その二国税局長に通知すること。通知をした弁護士は「通知弁護士」と呼ばれることがあります。
  • 効果の及ぶ範囲その国税局の管轄区域内。複数の地域で税理士業務を行うのであれば、それぞれの国税局への通知が問題になります。
  • どんな義務がかかるか税理士法51条2項により、税理士業務を行う範囲では税理士とみなされ、税理士法の各種の規定が適用されます。
会社設立の場面で、これが問題になる場面

会社設立のあとには、法人設立届出書や青色申告の承認申請書といった税務の届出が続きます。弁護士に会社設立を依頼している場合でも、この部分は通知をしている弁護士か、税理士が担当することになります。実務では、会社設立の相談を弁護士に、設立後の記帳と申告を税理士に、と二人の専門家に分かれていることが多い部分です。

なお、税理士以外の者が税理士業務を行うことは税理士法52条で禁じられていて、罰則は59条1項4号の2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。士業の中でも重いほうの罰則になっています。会社設立の代行をうたう無資格の事業者が税務相談まで踏み込む場合、ここに触れる可能性があります。

出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…

会社設立で弁護士に依頼する意味が出る場面

会社設立で法律関係の設計が必要になる場面を表したイラスト
設計が絡むほど、登記より前の段階が大事になります。

会社設立という出来事を、書類を出す作業だと考えると、弁護士に依頼する場面はあまり思い浮かびません。ところが会社設立は、法律関係を新しく作る出来事でもあります。そちらの面が大きいときに、弁護士に相談する意味が出てきます。

登記が中心になる会社設立と法律関係の設計が絡む会社設立を比べた図

右側にあるものは、いずれも定款や契約書の中身をどう決めるかという話です。ここは弁護士法3条1項の「一般の法律事務」の中心にあたります。しかも、会社設立の登記が終わったあとでは直しにくいものが混ざっています。定款に書く事項を変えるには決議が要りますし、出資の割合を後から動かすのは簡単ではありません。

順番としては、設計が先に来ます

共同創業や出資が絡む場合、先に法律関係を決めて、そのとおりに定款と登記を作るのが自然な順番です。登記を先に済ませてから取り決めを考えると、決めた内容が定款と食い違って作り直しになることがあります。相談する時期としては、会社設立の登記を申請する前ということになります。

日本弁護士連合会は、中小企業向けの法律支援として「ひまわりほっとダイヤル」という相談の窓口を案内しています。各地の弁護士会にも中小企業向けの相談の仕組みがあります。いきなり依頼を決める前に、専門家に相談だけしてみるという進め方もできます。

出典中小企業への法律支援(日弁連中小企業法律支援センター)(日本弁護士連合会)

弁護士にも、できないことがあります

弁護士の業務から外れるものを表したイラスト
監査証明も社会保険も、弁護士の業務ではありません。

弁護士法3条1項の書き方が広いために、弁護士なら何でもできるように読まれることがあります。そうではありません。会社設立の周辺でいえば、はっきり外れるものがあります。

  • 財務書類の監査・証明
    公認会計士法2条1項が「他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする」と定めています。公認会計士(および監査法人)の分野で、弁護士の業務ではありません。もっとも、会社設立の段階で監査証明が必要になることはほとんどありません。
  • 社会保険・労働保険の届出
    健康保険・厚生年金保険の新規適用届や労働保険の保険関係成立届は、社会保険労務士法2条1項の事務です。社会保険労務士の分野にあたります。
  • 税務(通知をしていない場合)
    税理士法51条1項の通知をしていなければ、税理士業務は行えません。弁護士法3条2項があるからといって、手続きなしにできるわけではありません。
  • 登記の実務そのもの
    資格としては代理できますが、日ごろ登記を扱っていない事務所もあります。扱っているかどうかは、聞いて確かめる部分です。
  • 「全部お任せください」だけの案内は確かめてみる

    会社設立をまとめて引き受ける案内は、それ自体が問題なわけではありません。事務所の中や提携で分担している形が通常です。ただし、誰が何を担当するのかの説明がない場合は、一歩聞いてみてください。「登記はどなたが担当されますか」「社会保険の届出は範囲に入りますか」。依頼する側が確かめておけば防げる行き違いです。当サイトでは、特定の事業者を名指しして違法と結びつけることはしていません。

    なお、弁護士でない者が報酬を得る目的で業として法律事務を扱うことは、弁護士法72条が禁じています。会社設立の代行をうたう無資格の事業者が、契約書の作成や交渉の代理まで踏み込むと、ここに触れる可能性が出てきます。見分けるための知識として持っておくとよい条文です。

    出典公認会計士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が監査・証明、同2項ただし書に他の法律による制限。

    相談の窓口と、資格の確かめ方

    弁護士への相談窓口と資格の確かめ方を表したイラスト
    相談だけしてみる、という進め方もできます。

    弁護士に会社設立の相談をしてみようと思ったとき、入口はいくつかあります。いきなり依頼を決める必要はありませんし、複数から話を聞いて比べるのは普通のことです。

    • ひまわりほっとダイヤル日本弁護士連合会が案内している、中小企業向けの相談の窓口です。地域の弁護士会につながる仕組みになっています。
    • 各地の弁護士会の相談センター弁護士会ごとに、中小企業向けの法律相談を用意しているところがあります。会社設立や創業の相談を受け付けている場合があります。
    • 弁護士情報検索日本弁護士連合会が公開している検索で、登録されている弁護士を確かめられます。氏名や所属の弁護士会から引けます。
    • 法テラス法制度や相談窓口の情報を案内する公的な仕組みです。どこに相談すればよいか分からないときの入口として使えます。

    資格そのものを確かめる方法があるのは、弁護士に限りません。司法書士は日本司法書士会連合会の検索、税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト、行政書士は日本行政書士会連合会の会員検索が公開されています。社会保険労務士については、全国を横断する公式の個人検索は用意されておらず、都道府県ごとの社会保険労務士会の一覧が公式の入口になります。

    これは特定の事務所を勧めるものではありません

    ここで挙げているのは、いずれも各分野の全国団体または公的な仕組みです。当サイトは特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしていません。会員検索は、どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段として紹介しています。

    そのうえで、依頼するかどうかを決めるときに見るとよいのは、金額よりも先に対応の範囲です。会社設立の依頼に登記が含まれるのか、それは提携する司法書士が担当するのか。税務の届出はどこまでか。社会保険は範囲に入るのか。ここがそろっていないと、あとから追加が出てきます。実費と報酬が分かれた見積もりをもらえるかどうかも、見ておくとよい点です。

    出典ひまわりほっとダイヤル(日本弁護士連合会)

    まとめ|条文をたどると、線ははっきりしています

    弁護士に会社設立を依頼できる範囲のまとめを表したイラスト
    登記は可、税務は通知が前提、監査証明は外れます。

    ここまでの内容を短くまとめます。会社設立の依頼先を考えるときの、判断の材料として使ってください。

    • 職務は一般の法律事務弁護士法3条1項が、訴訟事件などのほか「その他一般の法律事務」を職務としています。契約書の作成や機関設計の助言はここに入ります。
    • 登記の代理もできる司法書士法73条1項ただし書きの「他の法律に別段の定めがある場合」に弁護士法3条が当たるためです。登記申請書類の作成も同様です。
    • 税務は通知が前提税理士法51条1項により、所属弁護士会を経て国税局長に通知することにより、その国税局の管轄区域内で税理士業務を行えます。弁護士法3条2項だけでは足りません。
    • 監査証明は外れる財務書類の監査・証明は公認会計士法2条1項の業務で、公認会計士の分野です。会社設立で必要になることはほとんどありません。
    • 社会保険も外れる健康保険・厚生年金保険や労働保険の届出は、社会保険労務士法2条1項の事務です。
    • 優劣の話ではない登記だけなら司法書士、税務なら税理士、設計が絡むなら弁護士。目的によって適任者が変わるだけです。

    会社設立を弁護士に依頼するかどうかを考えるときの目安は、やることが登記だけで終わるかどうかです。終わるなら、その部分を専門にしている司法書士に依頼するのが素直な流れになります。終わらないなら、登記より前の段階をどの専門家と一緒に決めるのかを先に考えることになります。

    なお、会社設立の手続きをご自身で進めることは、どの資格がなくてもできます。この記事で見た制限は、報酬をもらって業として代わりに行う場合の話です。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。条文も制度も改正されますので、実際に判断されるときは各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認のうえ、弁護士・司法書士・税理士といった各分野の専門家に直接ご相談ください。

    出典弁護士情報検索(日本弁護士連合会) 全登録弁護士が対象。ひまわりサーチ(bengoshikai.jp)は任意登録制なので性質が違う。

    「登記だけ」なのか「それ以上」なのかで考える

    会社設立で弁護士に依頼するかどうかは、やることが登記だけで終わるのか、それとも法律関係の設計まで含むのかでおおよそ決まります。商号と目的と資本金が決まっていて、あとは登記を通すだけという状態であれば、その部分を専門にしている司法書士に依頼するのが自然な流れです。

    一方で、複数人で出資する、持分や議決権の配分を決める、取引先や共同創業者との取り決めを文書にする、といった話が先にあるなら、そこは弁護士法3条1項の「一般の法律事務」の中心にあたる部分です。登記はそのあとに来る手続きなので、順番としても法律関係の設計が先になります。

    どちらの場合でも、弁護士・司法書士・税理士・行政書士・社会保険労務士のあいだに上下はありません。専門家として担当できる範囲と、日ごろ扱っている中身が違うだけです。ご自身の会社設立でどこに相談するのが合うかは、事情を伝えて見積もりを取ったうえで判断してください。制度は改正されますので、各セクションに添えた出典で最新の内容もご確認ください。

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