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会社設立の依頼先を変えたいとき|何を返してもらい、いつ切り替えるかを段ごとに整理する

公開 約12分(6,618字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

会社設立の依頼先を変えたいとき|何を返してもらい、いつ切り替えるかを段ごとに整理する

この記事は、こういう方に向けて書いています

  • 会社設立の手続きを依頼している最中に、別の専門家に頼み直したほうがよいのではないかと思い始めた方。
  • 設立は終わっていて、設立後の顧問税理士を替えたいと考えていて、切り替える時期と引き継ぎの段取りが分からない方。
  • この記事は、いまの依頼先を悪く言うためのものではありません。書いているのは、手続きのどこまで進んでいるかによって、切り替えの手当てがどう変わるかと、何を返してもらい、何を引き継ぐかという段取りです。依頼先を変えること自体は、揉めごとがなくても起きます。相性や、頼みたい範囲が変わったから、という理由でも構いません。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

まず、いまどこまで進んでいるかを確かめます

手続きの現在地を確かめることを表したイラスト
段のどこにいるかが、切り替えの重さを決めます。

会社設立の依頼先を変えたいと思ったとき、最初にやることは相手に伝えることではありません。いま手続きがどこまで進んでいるかを確かめることです。段によって、切り替えの手当てがまったく変わるためです。

設立登記の申請が済んでいるかどうかで切り替えの重さが変わることを示した分岐図

会社設立の手続きは、決める、書類をつくる、認証を受ける、払い込む、申請する、完了するという段の連なりでできています。前の段が終わっていれば、その成果は次の依頼先も使えます。だからこそ、いまどこにいるかを正確につかむことが、そのまま引き継ぎの準備になります。

変えること自体は、後ろめたいことではありません

会社設立の依頼先を変える理由は、揉めごとだけとは限りません。頼みたい範囲が広がった、設立後の顧問まで含めて考え直したくなった、連絡の取り方が合わなかった。どれも普通の理由です。専門家の側も、そうした申し出を受けること自体は珍しくありません。

出典商業・法人登記申請手続(法務局)

段ごとに、切り替えたときの手当てが変わります

段ごとの手当てを表したイラスト
認証と申請が、切り替えの重さを分ける二つの節目です。

会社設立の進み方に沿って、切り替えたときにどうなるかを並べます。とくに大きな節目は、定款の認証登記の申請の二つです。

会社設立の段ごとに依頼先を切り替えるときの手当てを並べた流れ図
  • 1と2の段いちばん軽い段です。まだ形になった成果物が少ないため、相談の内容と決めた事項を次の依頼先に伝えれば足りることが多くなります。
  • 3の段(株式会社)認証を受けた定款は、そのまま登記の添付書類として使えます。認証は公証役場で受けたものなので、依頼先が変わっても効力が変わるわけではありません。謄本を手元に確保しておきます。
  • 4の段払い込みを証する書面のもとになる通帳の記録などは、依頼する側の手元にあります。ここは引き継ぎで困りにくいところです。
  • 5の段審査が進んでいる最中です。取り下げると、登録免許税の扱いや日程がやり直しになることがあります。切り替えを急ぐ理由がなければ、完了を待つほうが軽く済むことが多い段です。
  • 6の段会社設立そのものは終わっています。ここから先は、税務の届出や顧問契約をどの専門家に頼むかという話になります。
定款認証は公証役場の手続きです

定款の認証は公証人が行う手続きで、依頼先の事務所が持っている権限ではありません。認証済みの定款は依頼先が変わっても使えます。なお、合同会社には定款認証そのものが要りません。会社法575条が定款の作成を定め、579条により設立の登記によって成立します。

出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。

返してもらうもの、受け取っておくもの

返してもらう書類を表したイラスト
原本が手元に戻れば、次の依頼先が動けます。

会社設立の依頼先を変えるときに、返してもらうもの・受け取っておくものを一覧にしておきます。原本を預けたままだと、次の依頼先が動けません。

依頼先を変えるときに取り戻しておくものを並べたチェックリスト

返却をお願いするときは、責める言い方にしないほうが話が早く進みます。「別の事務所に引き継ぐことにしたので、お預けしている書類をお返しいただけますか」という伝え方で十分です。専門家の側も、預かった原本を返すのは通常の事務です。

電子のファイルも忘れずに

定款の案や、決めた事項をまとめた資料は電子のファイルでやり取りしていることが多いはずです。次の依頼先が中身を確かめられる形で受け取っておくと、一から作り直さずに済むことがあります。ただし、事務所の書式そのものには作成した側の工夫が入っていますので、渡してもらえる範囲は依頼先によって異なります。

出典商業・法人登記の申請書様式(法務局)

支払い済みの報酬と、これからかかる費用の考え方

支払い済みの費用を整理することを表したイラスト
実費と報酬を分けると、精算の話がほどけます。

会社設立の依頼先を変えるときに気になるのが、すでに払った分の扱いです。ここも、実費と報酬を分けて考えると整理しやすくなります。

  • 実費(法定費用)
    登録免許税、定款認証の手数料、紙の定款の収入印紙など。誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。すでに国や公証役場に納めたものは、依頼先が変わっても戻ってくる性質のものではありません。
  • 報酬
    専門家に支払う対価です。ここだけが事務所ごとに違います。すでに行われた作業に対する分をどう扱うかは、契約の内容によります。
  • 立替金
    依頼先が代わりに払っておいてくれた実費です。見積書や請求書で報酬と分けて書かれていることが多い項目です。
  • 次の依頼先の報酬
    引き継ぎの段によって、作業量が変わります。どこまで進んでいるかを正確に伝えると、見積もりが正確になります。
  • すでに支払った報酬が返ってくるかどうかは、契約でどう定めているかによります。着手金として受け取っている場合、作業が進んだ分に応じて精算する場合、段ごとに区切って請求する場合など、事務所によって考え方が違います。当サイトでは個別の契約の解釈は行っていません。契約書と請求書を並べて、依頼先に確かめてください。

    二重に報酬を払わずに済むこともあります

    会社設立の依頼では、定款の作成と登記の申請を別の専門家が担当することがあります。すでに定款が仕上がっているなら、次の依頼先は登記の部分だけを引き受けられることもあります。見積もりを取るときに「定款は認証済みです」と伝えれば、その前提での金額を出してもらえます。

    なお、当サイトでは費用の内訳表や試算は作っていません。ここで触れているのは、実費と報酬の性質の違いという範囲までです。金額の詳細は、次の依頼先からの見積もりと出典の一次情報でご確認ください。

    出典No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)

    設立後の顧問税理士を替える場合|時期の考え方

    顧問税理士を替える時期を考えることを表したイラスト
    事業年度の区切りを見ながら、時期を選びます。

    会社設立そのものが終わったあと、設立後の顧問税理士を替えたいという場合は、また別の考え方になります。ここで効いてくるのが、事業年度と決算・申告の日程です。

    顧問契約は、記帳や申告といった継続する仕事に対するものです。期の途中で担当が変わると、それまでの帳簿の内容を新しい依頼先が引き継ぐことになります。この引き継ぎがどれだけ重いかで、切り替えやすい時期が決まります。

    • 事業年度の変わり目は、区切りとしては分かりやすい時期です。前の期の分が締まっているためです。
    • 決算と申告の直前は、引き継ぎが重くなりやすい時期です。期限のある作業と引き継ぎが重なります。
    • 設立の直後は、法人設立届出書や青色申告の承認申請書など、期限のある届出が続きます。空白をつくらないことを優先します。
    • 顧問契約に最低の契約期間や解約の予告期間が定められていることがあります。契約書を確かめます。
    • 次の税理士が決まってから伝えるほうが、途切れずに済みます。
    期限のある届出を落とさないこと

    法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、青色申告の承認申請書にも期限があります。顧問を替える時期がこれらと重なる場合は、どちらが出すのかを必ず決めてください。「相手が出していると思っていた」が、いちばん起きてはいけない行き違いです。

    なお、顧問税理士を替えることは珍しいことではありません。事業の規模が変わって求めることが変わった、連絡の取り方が合わなかった、対応してほしい範囲が広がった。理由を細かく説明する義務はありません。契約に沿って手続きを進めれば足ります。

    出典No.5100 新設法人の届出書類(国税庁)

    帳簿と会計のデータは、会社のものです

    会計データの引き継ぎを表したイラスト
    帳簿は会社のものです。受け取る形を先に決めておきます。

    会社設立のあと、顧問税理士を替えるときにいちばん詰まりやすいのが、帳簿と会計のデータです。会計ソフトで記帳している場合、データがどこにあるのか、どの形で受け取れるのかを先に確かめておきます。

    • 会社の帳簿は会社のもの帳簿書類の保存は会社の義務です。保存すべき期間は税法で定められていますので、期間の詳細は税理士か国税庁の案内でご確認ください。
    • データの形を確かめる会計ソフトのデータそのものを受け取れるのか、印刷や書き出しの形になるのか。次の税理士が使うソフトとの相性も出てきます。
    • どの期のものが必要か決算書、申告書の控え、総勘定元帳、仕訳の記録。次の依頼先に「何が必要か」を先に聞いておくと、一度で済みます。
    • 会計ソフトの契約者が誰か会社の名義で契約しているのか、事務所の契約に相乗りしているのか。後者の場合、切り替えの手当てが要ります。
    • 税務署などへの届出税務代理権限証書の扱いなど、事務的な手当てがあります。新しい税理士に確かめてください。
    受け取りの依頼は、一覧にして伝えます

    「一式ください」ではなく、必要なものを箇条書きにして伝えるほうが、双方の手間が減ります。次の依頼先の専門家に、引き継ぎで必要なものの一覧を作ってもらうこともできます。

    会社設立の直後は、そもそも帳簿の量が少ない時期です。引き継ぎがいちばん軽いのは、この時期でもあります。顧問を替えるかどうか迷っている場合、時期の選び方の材料のひとつになります。

    出典C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁)

    次の依頼先を決めるときに、確かめておくこと

    次の依頼先を選ぶときの確認を表したイラスト
    選び直せるのですから、前回の引っかかりを先に伝えます。

    会社設立の依頼先を変えるということは、もう一度選び直せるということでもあります。前回うまくいかなかったところを、今度は先に確かめておけます。

    • 引き継ぎの案件として受けてもらえるか途中からの引き継ぎを扱っているかどうかは事務所によります。最初に伝えておきます。
    • 今回の依頼はどこからどこまでか会社設立の途中からなら、残りの段だけを頼むことになります。範囲を言葉にします。
    • 登記は誰が担当するか事務所内の司法書士か、提携先か。どちらでも構いませんが、確かめておきます。
    • 実費と報酬が分かれた見積書か登録免許税などの実費は、誰に依頼しても同じ額です。差が出るのは報酬だけです。
    • 連絡の手段と、返事の目安前回ここで合わなかったのなら、今度は最初に確かめます。
    • 資格の登録を確かめたか各士業の全国団体が会員検索を公開しています。

    会員検索は、どの専門家を選ぶときにも使えます

    司法書士は日本司法書士会連合会の司法書士検索、行政書士は日本行政書士会連合会の会員検索、税理士は税理士情報検索サイトで登録を確かめられます。これは特定の事務所を勧めるものではありません。どの依頼先を選ぶときにも共通して使える確認の手段です。

    同じことを繰り返さないために

    前の依頼で何が合わなかったのかを、ひとことで言えるようにしておくと、次の見積もりのときに伝えられます。「連絡の頻度が分からなかった」「範囲が思っていたのと違った」。責める言い方でなく、希望として伝えれば十分です。

    出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。

    角を立てずに切り替える順番

    切り替えの順番を表したイラスト
    次を決めてから伝える。この順番が空白をつくりません。

    最後に、切り替えの順番をまとめておきます。順番を間違えると、手続きに空白ができます。とくに期限のある届出が控えている時期は注意が必要です。

    • 一|現在地を確かめる会社設立の手続きが、いまどの段まで進んでいるかを整理します。契約書と見積書、やり取りの記録を並べます。
    • 二|次の依頼先を決める引き継ぎとして受けてもらえるか、残りの範囲でいくらになるかを確かめます。この段では、まだ今の依頼先に伝えなくて構いません。
    • 三|引き継ぎに必要なものを聞く次の依頼先に、何を持ってくればよいかを一覧でもらいます。
    • 四|いまの依頼先に伝える契約の終わり方と、預けている書類の返却、報酬の精算をお願いします。理由を細かく説明する必要はありません。
    • 五|受け取ったものを確かめる一覧と照らして、足りないものがないかを見ます。
    • 六|次の依頼先に引き渡す会社設立の手続きがどこまで進んでいるかを正確に伝えます。ここで正確さが効いてきます。
    円満に終える意味があります

    会社設立の手続きは、あとから前の依頼先に確かめたいことが出てくることがあります。やり取りができる関係で終えておくほうが、結局は自分のためになります。伝えるときは、事実だけを簡潔に。それで十分です。

    それでも、報酬の精算や契約の解除の条件で折り合いがつかないことがあります。その場合は、依頼した相手の資格に応じて、各士業会の苦情や紛議の窓口に相談できます。資格のない相手との契約であれば、消費者ホットライン188から最寄りの消費生活センターにつながります。行き先がないわけではありません。

    出典税理士に相談する(日本税理士会連合会)

    まとめ|段を確かめ、返してもらい、次に渡す

    依頼先の切り替えのまとめを表したイラスト
    段取りとして扱えば、切り替えは片づきます。

    会社設立の依頼先を変えたいときの整理を見てきました。短くまとめます。

    • 現在地を確かめる定款の認証と登記の申請が、切り替えの重さを分ける二つの節目です。申請の審査中なら、完了を待つほうが軽く済むことが多くなります。
    • 返してもらうものを一覧にする預けた原本、定款の案や謄本、決めた事項の書面、見積書と契約書、やり取りの記録。
    • 費用は実費と報酬に分けて考える実費は誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額です。支払い済みの報酬の扱いは契約によります。
    • 顧問税理士の切り替えは時期を見る事業年度の区切りが分かりやすい時期です。期限のある届出を落とさないことが最優先です。
    • 帳簿と会計データは会社のもの受け取る形と、必要な期のものを先に決めておきます。
    • 次を決めてから伝える空白をつくらない順番です。引き継ぎとして受けてもらえるかを先に確かめます。

    依頼先を変えることは、必ずしも失敗の結果ではありません。会社設立を進めるうちに頼みたい範囲が変わることも、設立後に求めるものが変わることもあります。専門家の側も、そういう申し出を受けること自体は珍しくありません。段取りとして淡々と進めれば、たいていは片づきます。

    この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。制度も条文も改正されますので、実際に判断されるときは各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の契約の解釈や、支払い済みの報酬の扱いについては当サイトでは判断していません。契約書を手元に、依頼先の専門家か各窓口にご相談ください。

    出典司法書士とのトラブル|東京司法書士会(東京司法書士会) 依頼した司法書士との紛争時の申出先と会の解決手続

    切り替えは、段取りの問題として扱えます

    依頼先を変えると決めたら、あとは段取りの問題です。いまどの段まで進んでいるかを確かめ、返してもらうものを一覧にし、次の依頼先に渡す前に足りないものがないかを見る。この三つを順にやれば、たいていのことは片づきます。会社設立の手続きは段が分かれているので、途中で担当が変わっても引き継げるようにできています。

    そのうえで、新しい依頼先を先に決めてから切り替えるのが、いちばん動きやすい順番です。空白ができると、期限のある届出が抜けることがあります。とくに設立の直後は、税務や社会保険の届出が続く時期にあたります。次の専門家が決まってから、いまの依頼先に伝えるほうが安全です。

    なお、報酬の精算や契約の解除の条件で折り合いがつかない場合、各士業会の苦情や紛議の窓口、消費者ホットラインといった相談先があります。話し合いで収まらないときの行き先も用意されています。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。個別の契約の解釈や、支払い済みの報酬の扱いについては当サイトでは判断していません。契約書を手元に、依頼先か各窓口にご相談ください。

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