会社設立で司法書士に払う報酬の見方|設例つきの統計をどう読むか、実費とどう分けるか
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立の登記を司法書士に依頼するつもりで、受け取った見積もりが妥当なのかどうかを判断する物差しがほしい方。
- 検索して出てくる「司法書士の報酬は◯万円」という数字が、どこから来た数字なのかを確かめたい方。
- この記事では、特定の事務所の料金を比べたり順位を付けたりはしません。また、会社設立の費用の内訳表や総額の試算も作りません。書いているのは、公表されている統計をどう読むかと、実費と報酬をどう分けて見るかという読み方だけです。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
報酬の話に入る前に、頼める相手を確かめておく

会社設立の報酬を比べるときに、先に押さえておきたいことがあります。同じ「会社設立の費用」でも、担当する資格が違えば中身が違うということです。登記の報酬なのか、定款の作成の報酬なのか、税務の顧問料なのか。ここを分けずに比べると、比較になりません。
| 会社設立でやること | 報酬を得て業として担当できる資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設立登記の申請の代理 | 司法書士・弁護士 | 司法書士法3条1項1号 |
| 登記申請書・添付書類の作成 | 司法書士・弁護士 | 司法書士法3条1項2号 |
| 定款の作成と認証の手続き | 司法書士・行政書士・弁護士 | 行政書士法1条の3第1項ほか |
| 法人設立届出書などの税務の届出 | 税理士 | 税理士法2条1項 |
| 健康保険・厚生年金の新規適用届 | 社会保険労務士 | 社会保険労務士法2条1項 |
| 建設業・飲食業などの許認可の申請 | 行政書士 | 行政書士法1条の3第1項 |
確認日 2026年9月1日。会社設立の手続きをご自身で行うことは、どの資格がなくてもできます。表は報酬を得て他人の代わりに行う場合の区分です。
この記事で扱うのは、表のいちばん上の二行にあたる部分、つまり登記を担当する専門家の報酬です。設立登記の申請の代理と、登記申請書・添付書類の作成。それに定款の作成と認証手続きを加えた範囲が、司法書士に会社設立を依頼したときの報酬の対象になります。
会社設立の登記をご自身で申請すれば、司法書士の報酬はかかりません。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。ただし実費はかかります。登録免許税も、株式会社の定款認証の手数料も、自分で手続きした場合に安くなるものではありません。この違いが、次のセクションの話につながります。
出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)
実費と報酬は、まったく別のものです

会社設立にかかるお金は、実費(法定費用)と報酬の二つに分かれます。この二つは性質がまるで違います。実費は法令で額が決まっているもので、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。報酬は専門家の側が自分で決めるもので、ここにだけ差が出ます。

実費のおおまかな額だけ挙げておきます。設立登記の登録免許税は、株式会社が資本金の額の0.7%で最低15万円、合同会社が同じく0.7%で最低6万円です。株式会社の定款認証の手数料は資本金の額等によって区分されていて、合同会社に定款の認証は要りません。紙の定款には収入印紙4万円が要りますが、電子定款であれば不要です。
会社設立を司法書士や行政書士といった専門家に依頼すると、電子定款になるのが通常です。紙の定款に必要な収入印紙が不要になるので、依頼したときの実費が下がります。これは報酬の説明として書いてよい部分ですが、当サイトでは総額の試算は行いません。見積もりの段階で、電子定款に対応しているかを確かめてください。
会社設立の見積もりを比べるときに、この二つが混ざったまま総額だけ並んでいると、何が違うのか分かりません。実費と報酬が分かれて書かれているか。これが見積書を見るときの、いちばん最初の確認点になります。
出典No.7191 登録免許税の税額表(国税庁)
公表されている数字は、設例に対する回答です

司法書士の報酬については、日本司法書士会連合会が実施している報酬に関するアンケートがあります。最新のものは2024年(令和6年)3月の実施です。会社設立の登記についても数字が公表されていますが、これは相場表ではなく、ある設例に対する回答を集計したものです。
設例の中身を、そのまま書き出します。会社設立の報酬を語るときに、この前提を落としてはいけません。
「発起人2名、資本金の額500万円の株式会社の発起設立による設立登記手続の代理業務を受任し、定款、議事録、その他証明書等の全ての書類を作成し、定款認証手続及び登記申請の代理をした場合」。この設例に対する有効回答932件、平均107,887円です。

設例には定款認証の手続きまで含まれている点に注意してください。会社設立の見積もりを比べるときに、登記の申請だけを依頼した場合の報酬と、この数字をそのまま並べると比較になりません。含まれている仕事の範囲がそろっていないからです。
それから、この数字は株式会社の発起設立についてのものです。合同会社の設立登記についての設例は別に用意されていないので、合同会社の報酬としては使えません。会社設立の形態が違えば、必要な手続きも変わります。
出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…
このアンケートから読み取れないこと

会社設立の報酬を調べていると、「地域によって司法書士の相場が違う」という説明を見かけることがあります。ところが、現行のアンケートに地区別の低額者・平均・高額者を並べた表はありません。それは以前の形式のもので、いまの一次情報からは裏が取れません。
読み取れないことを、はっきり並べておきます。会社設立の報酬について書かれたものを読むときの、確かめる手がかりにしてください。
会社設立の報酬について具体的な金額が書かれているとき、それがどの調査の、いつの、どういう設例に対する数字なのかが添えられているかを見てください。添えられていなければ、その数字は根拠のたどれないものです。当サイトも、確かめられない数字は書かないようにしています。
そして、この統計は目安の枠として使うものです。枠から外れているから駄目だという話ではありません。外れているなら専門家の側から理由が説明されるはずだ、という程度の使い方が適しています。会社設立の依頼で理由になりやすいのは、役員の人数、電子定款への対応、書類の作成をどこまで含むかといった範囲の差です。
出典会社の登記(商業登記)(東京司法書士会) 設立登記など商業登記で司法書士に依頼できる範囲
見積書のどこを見るか

専門家から会社設立の見積もりを受け取ったら、合計額より先に見ておきたいところがあります。実費と報酬が分かれているかと、報酬に何が含まれているかの二つです。

実費と報酬が分かれていない見積書を受け取っても、それだけで問題があるわけではありません。分けて出してもらえますかと頼めば足ります。会社設立の依頼を受けている専門家であれば、断られる筋合いの依頼ではありません。
複数の見積もりを並べて金額に差があるとき、まず疑うのは含まれている仕事の範囲です。定款の作成が入っているか、認証の手続きが入っているか、完了後の書類が入っているか。ここをそろえてから比べ直すと、差が小さくなることがよくあります。範囲をそろえずに金額だけ並べるのが、いちばん比較を誤らせます。
出典会社設立を司法書士に依頼する報酬・費用は?株式会社と合同会社の違いを解説(比較ビズ) 料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
報酬に幅が出るのは、仕事の量が違うからです

同じ「会社設立の登記」でも、実際にかかる手間はかなり違います。報酬に幅が出るのは、そのためです。会社設立を依頼するときに、自分の場合がどちらに寄っているのかを見ておくと、見積もりの読み方が変わってきます。

見積もりを比べるときは、この条件をそろえてから並べてください。合同会社の見積もりと株式会社の見積もりを並べても、金額の差の意味が読めません。会社設立の形態と、発起人・役員の人数を同じにしたうえで、はじめて報酬の比較になります。
それから、報酬の額だけで依頼先を決める必要もありません。連絡への返しの早さ、説明の分かりやすさ、面談の方法。会社設立の手続きは短い期間にやり取りが集中しますから、こうした相性の部分も効いてきます。当サイトでは特定の事務所を比較したり順位を付けたりはしていません。確かめる項目までを書いています。
出典会社設立手続きは司法書士に依頼できる?法人設立の相談先の選び方(弥生) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
ほかの資格では、報酬の調べ方が違います

会社設立に関わる専門家のうち、全国団体が報酬の統計を公表しているのは司法書士と行政書士です。税理士には、これにあたる公的な統計がありません。このことを知っておくと、会社設立の費用について書かれたものを読むときの見方が変わります。
行政書士の数字と司法書士の数字が近い額に見えますが、同じ仕事に対する報酬ではありません。司法書士のほうは登記の申請の代理まで含む設例、行政書士のほうは会社設立手続という一括の項目です。並べて「どちらが安い」と読むのは誤りになります。
当サイトは、一次情報で確かめられた数字だけを書くようにしています。書けない数字は、書かずに確認先を示します。会社設立の報酬について具体的な金額が知りたい場合は、複数の専門家から見積もりを取っていただくのがいちばん確実です。統計は、その見積もりを読むための枠として使ってください。
なお、会社設立の登記を依頼する相手が登録された司法書士かどうかは、日本司法書士会連合会の司法書士検索で確かめられます。報酬を比べる前提として、資格の確認も一度しておくとよいと思います。どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段です。
出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…
まとめ|前提を添えれば、統計は使える物差しになります

会社設立で司法書士に払う報酬の見方について、ここまでの内容を短くまとめます。
- 公表されている数字は一つ日本司法書士会連合会の報酬アンケート(2024年3月実施)。有効回答932件、平均107,887円です。
- 設例の前提を必ず添える発起人2名、資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証の手続きと登記申請の代理を含む場合の数字です。
- 地区別の相場は書けない現行版に地区別の低額者・平均・高額者を並べた表はありません。合同会社を分けた数値もありません。
- 実費と報酬は別のもの登録免許税や定款認証の手数料といった実費は、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。
- 見積書は範囲から見る実費と報酬が分かれているか、定款の作成と認証手続きが含まれるか、電子定款に対応しているか。
- 幅が出るのは仕事の量の差会社の形態、発起人と役員の人数、許認可の有無。条件をそろえてから比べてください。
会社設立の依頼先を選ぶときに、報酬は判断の材料のひとつでしかありません。範囲がそろっているか、説明が分かりやすいか、連絡が取りやすいか。こうしたところも並べて見たうえで、納得できる相手にお願いするのがよいと思います。当サイトでは特定の事務所を勧めたり順位を付けたりはしていません。
この記事の内容は2026年9月1日時点で、各団体の公表資料と条文で確認したものです。統計は更新されますし、実費の額も改定されます。実際に会社設立を進められるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容を確かめたうえで、司法書士に見積もりをお取りください。個別の見積もりの妥当性については、当サイトでは判断していません。
出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。
数字は、前提とセットでなければ意味を持ちません
会社設立で司法書士に払う報酬について、公表されている数字は一つしかありません。日本司法書士会連合会が2024年3月に実施したアンケートの、ある設例に対する平均107,887円(有効回答932件)です。この数字は、設例の前提から切り離した瞬間に意味を失います。発起人2名、資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証の手続きと登記申請の代理まで含めた場合。ここまでを添えて、はじめて使える数字になります。
そして、会社設立の費用のうち実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。見積もりを比べて差が出るのは報酬のところだけですから、見積書で実費と報酬が分かれているかどうかを最初に見てください。分かれていなければ、分けて出してもらうよう頼めば足ります。
そのうえで、ご自身が受け取った見積もりが妥当かどうかは、当サイトでは判断していません。金額に差があるなら、その差が対応の範囲から来ているのかを聞いてみてください。まっとうに仕事をしている専門家であれば、範囲の説明は返ってきます。複数の司法書士から見積もりを取り、内容を並べて比べたうえでお決めください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。