会社設立の登記を依頼するとき、こちらが決めておくことと渡すもの|司法書士に頼む前の手元の準備
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立の登記を司法書士に依頼すると決めていて、最初の打ち合わせまでに何を用意しておけばよいかを知りたい方。
- 専門家に依頼すれば全部やってもらえると思っていたところ、自分で決めなければならない項目があると聞いて戸惑っている方。
- この記事は、登記申請の手順を説明するものではありません。書いているのは、依頼するときに何を渡し、何を決めておくのかという、依頼する側の準備の話だけです。申請そのものの進め方は扱いません。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
依頼する前に、誰が何を担当するのかを確かめておく

会社設立の準備を始める前に、その手続きを誰に依頼できるのかを確かめておくと、そのあとの段取りが立てやすくなります。会社設立は一つの資格で全部を引き受けられる手続きではないので、準備するものも相手によって変わってくるためです。
| 会社設立でやること | 業として担当できる資格 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設立登記の申請の代理 | 司法書士・弁護士 | 司法書士法3条1項1号 |
| 登記申請書・添付書類の作成 | 司法書士・弁護士 | 司法書士法3条1項2号 |
| 定款の作成と認証の手続き | 司法書士・行政書士・弁護士 | 行政書士法1条の3第1項ほか |
| 法人設立届出書などの税務の届出 | 税理士 | 税理士法2条1項 |
| 健康保険・厚生年金の新規適用届 | 社会保険労務士 | 社会保険労務士法2条1項 |
| 建設業・飲食業などの許認可の申請 | 行政書士 | 行政書士法1条の3第1項 |
確認日 2026年9月1日。会社設立の手続きをご自身で行うことは、どの資格がなくてもできます。表は報酬を得て他人の代わりに行う場合の区分です。

左側が、この記事で扱う範囲です。会社の中身は、専門家に依頼しても代わりに決めてもらえるものではありません。以下、項目ごとに、何を決めておくと会社設立の依頼が進みやすいのかを見ていきます。
出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)
商号と本店。会社設立の登記事項の中心になります

会社設立の依頼で最初に聞かれるのが、商号と本店です。どちらも登記される事項なので、あとから変えるには変更登記が必要になり、そのつど登録免許税がかかります。会社設立の時点で決めておく価値がある項目です。
本店については、会社設立の依頼をする前に決めておきたい実務的な事情もあります。自宅を本店にできるかどうか、賃貸であれば法人登記が認められているかどうか。ここは登記の話ではなく契約の話なので、貸主や管理会社への確認になります。
会社設立の登記の申請先は、本店の所在地を管轄する法務局です。依頼する司法書士の事務所がどこにあっても、申請先はこの管轄になります。ですから、遠方の事務所に会社設立を依頼することもできます。書類のやり取りや面談の方法を、依頼の前に確かめておいてください。
商号は、決めてしまえば会社設立の書類のあちこちに出てきます。銀行口座の名義にも、契約書にも使います。読み方や表記のゆれが起きないかどうかを、依頼の前に一度声に出して確かめておくと安心だと思います。
なお、同じ商号の会社が近くにあるかどうかは、会社設立の前に調べておくことができます。登記そのものが通るかどうかとは別に、取引先や検索での紛れが起きることがあるためです。この調査は登記に関する相談にあたるので、依頼した司法書士に頼めます。商号の候補をいくつか挙げて相談すると、登記できる形かどうかまで含めて見てもらえます。
出典商業・法人登記申請手続(法務局)
事業の目的。許認可が絡むと、書き方が変わります

事業の目的は、その会社が何をするのかを定款と登記簿に書いたものです。会社設立のあとで増やすことはできますが、定款の変更と変更登記が必要になります。最初にある程度の幅を持たせておくのが通常です。
そして、ここが会社設立の準備でいちばん相談の価値が出るところでもあります。事業に許認可が要る場合、目的の書き方そのものが許可の要件になることがあるためです。
- 建設業、飲食業、古物商、産業廃棄物の処理、貨物運送。こうした事業には許認可が要ります。
- 許認可の申請先は、その事業を所管する官公署です。申請の代理は行政書士の分野になります。
- 会社設立の登記が終わってから目的の不備に気づくと、変更登記からやり直すことになります。
- 許認可が要るかどうかが分からない場合は、会社設立の前に所管の窓口か行政書士に確かめてください。
同じような事業に見えても、扱う品目や取引の形によって許認可の要否が変わることがあります。当サイトでは個別の判断を行っていません。「一般に、この業種は許認可が要ることが多い」という程度の目安として読み、要否そのものは所管の官公署か行政書士にご確認ください。
許認可が絡まない事業であれば、目的の書き方はそれほど神経質にならなくて構いません。会社設立を依頼した専門家が、登記できる表現に整えてくれます。やりたいことを言葉で伝えられれば足ります。箇条書きのメモで渡すのがいちばん早いと思います。
出典許認可が必要な業種は(J-Net21(中小企業基盤整備機構)) 許認可が要る業種と申請先官公署の一覧
資本金の額と、出資の割合を決めておく

資本金の額は、会社設立の登記で登記される事項です。そして、設立登記の登録免許税の計算にも入ってきます。株式会社は資本金の額の0.7%で最低15万円、合同会社は同じく0.7%で最低6万円です。これは実費なので、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額になります。
出資する人が複数いる場合は、誰がいくら出すのかまで決めておくことになります。株式会社であれば持株の割合になり、議決権に直結します。会社設立の時点での配分が、そのあとの意思決定の形を決めます。

出資の払い込みをいつ、どの口座に行うかは、会社設立の段取りの中で司法書士から指示があります。払い込みを証明する書類として、通帳の写しなどを渡すことになるのが通常です。指示を待たずに動かすと、やり直しになることがあります。
資本金の額は、会社設立のあとの税や社会保険の扱いにも関わってきます。登記の面からは司法書士、税務の面からは税理士と、見てもらう相手が分かれます。当サイトでは費用の試算や節税の話は扱っていません。金額の決め方については、事情を伝えたうえで税理士にご相談ください。
出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。
役員の構成。何人で、どういう形にするか

会社設立の登記では、設立時の役員も登記されます。株式会社であれば取締役、代表取締役。合同会社であれば社員と業務執行社員です。誰が就任するのかは、依頼する側にしか決められません。
役員の人数と役職の組み合わせは、機関設計と呼ばれます。会社設立の相談で、専門家の側から確認されることが多いのは次のようなところです。
役員の任期が満了すると、同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要です。会社設立の時点で任期をどう定めるかによって、そのあと何年おきに登記の手間が来るかが変わります。依頼するときに、この点も相談しておくとよいと思います。登記のことなので、司法書士に聞ける範囲です。
役員に就任する方には、印鑑証明書を用意してもらうことになります。ご家族や共同創業者にお願いする場合は、取得のお願いを早めにしておくと、会社設立の段取りが詰まりにくくなります。何通必要かは会社の形態と機関設計によって変わりますので、依頼先の司法書士から案内があります。
出典登記-商業・法人登記-(法務省)
印鑑証明書と、会社の印鑑。渡すものの中心です

会社設立の登記を専門家に依頼するときに、実際に手元から渡すものはそれほど多くありません。中心になるのは個人の印鑑証明書と、会社で使う印鑑です。どちらも取得や作成に日数がかかることがあるので、早めに動いておくと段取りが楽になります。

印鑑証明書には、取得してからの期間について決まりが設けられていることがあります。早く取りすぎても使えなくなる場合があるということです。会社設立の依頼をしてから、司法書士の案内に合わせて取得するほうが確実です。
代表者印には商号が彫られます。ですから商号が決まらないと発注できません。会社設立の準備のなかでは、商号を早めに固めておくことが、そのまま印鑑の準備の早さにつながります。作成にかかる日数は発注先によって違いますので、余裕を見ておいてください。
出典商業・法人登記の申請書様式(法務局)
いつ、何を渡すか。会社設立の段取りの中で見る

会社設立の準備は、順番があります。商号が決まらないと印鑑が発注できませんし、資本金が決まらないと登録免許税の額が出ません。依頼の段取りの中で、どこで何を渡すことになるのかを見ておきます。

この流れのなかで、依頼する側の手が止まりやすいのは2番です。会社の中身を決めるところで悩むと、そのあとが全部止まります。逆にここさえ抜ければ、あとは専門家からの案内に沿って渡していくだけになります。
会社設立の相談は、決まっていない状態でしてもまったく構いません。むしろ、迷っている項目こそ相談の中身になります。司法書士法3条1項5号は、登記についての相談も業務に含めています。「株式会社か合同会社かも決めかねている」という段階で話を聞いてもらうことはできます。
なお、会社設立の登記をご自身で申請することもできます。本人申請は合法で、法務局には登記手続案内もあります。この記事は依頼する場合の準備を書いたもので、どちらが良いという話ではありません。判断の材料としては、かけられる時間と、許認可の有無、会社の形の複雑さあたりが分かりやすいと思います。
会社設立を依頼するかどうかを迷っている段階でも、見積もりを取ること自体は普通のことです。範囲と金額を見たうえで、自分で進めるほうが合うと判断してもかまいません。複数の専門家に相談して比べるのは、失礼にあたる行為ではありません。
出典会社設立手続きは司法書士に依頼できる?法人設立の相談先の選び方(弥生) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
まとめ|決めることを先に、渡すものはあとから

会社設立の登記を依頼するときに、こちらで用意することを短くまとめます。書類の形式は専門家に任せられますので、手元でやることは会社の中身を決めることに集約されます。
- 商号と本店どちらも登記事項です。本店の所在地で登記の管轄が決まります。賃貸なら法人登記の可否も確かめておきます。
- 事業の目的許認可が要る事業では、書き方そのものが要件になります。要否は所管の官公署か行政書士に確認してください。
- 資本金の額と出資登記事項であり、登録免許税の計算にも入ります。複数で出すなら割合まで決めます。
- 役員の構成取締役の人数、代表者、任期。就任には本人の承諾が要ります。
- 印鑑証明書と印鑑取得と作成に日数がかかります。商号が固まったら代表者印を発注できます。
- 渡す順番決めることが先、渡すものはあと。会社の中身が決まらないと段取りが動きません。
そして、実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。登録免許税も、株式会社の定款認証の手数料も、依頼先によって変わりません。会社設立の見積もりを比べるときに差が出るのは報酬のほうだけですので、見積書でこの二つが分かれているかを見てください。
この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。必要な書類の範囲や通数は、会社の形態と機関設計によって変わります。ご自身の会社設立で何が要るかは、依頼先の司法書士から案内があります。個別の判断については、当サイトでは行っていません。各セクションに添えた出典もあわせてご覧ください。
出典司法書士総合相談センター一覧(日本司法書士会連合会)
決めるところは、こちらにしか決められません
会社設立の登記を依頼すると、書類の形式や手続きの段取りは専門家が引き受けてくれます。それでも残るのが、会社の中身を決める部分です。商号も、本店も、事業目的も、資本金も、役員の構成も、依頼する側にしか決められません。ここが決まっていないと、司法書士の側も動き出せません。
逆に言えば、この記事に並べた項目を先に決めておけば、会社設立の依頼はかなり早く進みます。すべてを完璧に固めてから専門家に相談する必要はありません。迷っている項目は迷っていると伝えてください。判断の材料を出してもらうところまでが、登記の相談として依頼できる範囲に入っています。
印鑑証明書の通数や、いつ取得しておくべきかといった細かいところは、会社の形態と機関設計によって変わります。ご自身の会社設立で何がいくつ要るかは、依頼先の司法書士から案内があります。当サイトでは個別の判断は行っていません。分からない項目は、そのまま専門家にお尋ねください。
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