会社設立の「手数料0円」は何が0円なのか|誰の報酬・実費・顧問契約の四つに分けて読む
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立の依頼先を探していて「設立手数料0円」「設立サポート無料」という案内を見つけ、本当に0円なのか、何が0円なのかを確かめたい方。
- 0円と書いてあるのに、よく読むと小さな字で条件が添えられていて、どこまでが無料の範囲なのか読み取れない方。
- この記事では、特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしません。書くのは、0円という案内の一般的な組み立てと、依頼する前に自分で確かめられる四つの点だけです。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
「設立手数料0円」と書いてあったら、四つに分けて読む

会社設立の依頼先を調べていると、「設立手数料0円」「設立サポート無料」という案内に行き当たります。珍しいものではなく、税理士事務所を中心にかなり広く見られる案内です。この案内が怪しいという話をするつもりはありません。ただ、0円という言葉は、会社設立にかかるお金がまるごとかからないという意味では使われていません。
では何が0円なのか。ここを読み解くには、ひとつの数字として受け取らず、四つの問いに分けて確かめるのが早道です。この記事は、その四つを順番に見ていきます。

表示に関する法律では、値引きや無料の表示について、条件があるならそれを分かりやすく示すことが求められます。逆に言えば、依頼する側は「0円」という文字を見たら、同じ画面のどこかにある条件の文を必ず探す、という読み方をしておくと安全です。小さな字で「※登記の実費は別途」と書かれていることがあります。
なお、この記事では特定の事務所や代行サービスを名指しで比べたり、順位を付けたりはしません。書くのは、会社設立の依頼先を選ぶときに、どの依頼先に対しても同じように使える確かめ方だけです。
出典景品表示法(消費者庁) 「最安」「No.1」などの表示を扱うときの根拠。
一つ目。誰の報酬が0円なのか

会社設立の手続きには、ひとつの資格で全部をまかなえない、という事情があります。登記は司法書士(と弁護士)、税務は税理士、定款の作成と許認可は行政書士、社会保険は社会保険労務士。それぞれの法律で業務の範囲が決まっているためです。つまり、会社設立を依頼すると、たいてい複数の専門家が関わります。
そうすると「0円」の対象が誰の報酬なのかという問いが出てきます。一般に0円と書けるのは、その案内を出している事務所が自分で受け取る報酬の部分です。ほかの資格者の報酬まで含めて0円にすることは、その資格者が報酬を受け取らないという話になりますから、通常は起こりません。

ここで気をつけたいのが、「設立サポート」という言葉に決まった定義がないことです。ある依頼先では相談と書類の案内までを指し、別の依頼先では税務の届出まで含めて呼んでいる、ということが起こります。0円と書かれている範囲がどこまでなのかは、言葉ではなく、具体的な作業の名前で確かめるほかありません。
税理士の業務は税理士法2条1項が三つに定めています。税務代理、税務書類の作成、税務相談です。登記はこの三つに入りません。ですから税理士事務所が会社設立をまとめて引き受ける場合、登記の部分は事務所内の司法書士か、提携する司法書士が担当しています。この形そのものは通常のもので、問題はありません。
出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…
二つ目と三つ目。登記の実費と、司法書士の報酬

会社設立の費用は「実費(法定費用)」と「報酬」に分かれます。そして実費は、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。ここが分かっていると、0円という案内の輪郭がかなりはっきりします。
これらは政令と法律で決まっている金額ですから、どんな依頼先であっても0円にはできません。「設立費用0円」と読める案内があったとしても、登録免許税まで消えることはない、と考えて読んでください。
登記を担当する専門家の報酬は、含まれているのか
三つ目の問いがここです。会社設立の登記を代理できるのは司法書士と弁護士だけで、税理士や行政書士は登記申請書類の作成も申請の代理も行えません。ですから0円の案内を出しているのが税理士事務所であれば、登記は別の専門家が担当していることになります。その報酬が0円の中に含まれるのか、別に請求されるのかは、依頼先によって違います。
司法書士の報酬については、日本司法書士会連合会が2024年(令和6年)3月に実施した報酬アンケートがあります。発起人2名、資本金の額500万円の株式会社の発起設立で、定款・議事録その他の書類をすべて作成し、定款認証手続と登記申請の代理をした場合という設例に対して、有効回答932件、平均107,887円という結果です。設例の前提が付いた数値なので、そのまま自分の会社設立に当てはまるとは限りませんが、登記の依頼に一定の報酬が発生するということの目安にはなります。
「0円」の表示のそばに、小さな字で「※登記の実費は別途申し受けます」「※司法書士報酬は別」と添えられていることがあります。これは隠しているというより、書かなければならないから書いてあるものです。依頼する側としては、この一文を先に読んでから金額を見るくらいでちょうどよいと思います。
出典登録免許税法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 別表第一 第24号(一)イが株式会社の設立登記(資本金の額の1000分の7、15万円に満たないときは15万円)、ハが合同会社(同、6万円に満たないときは6万円)。
四つ目。0円の代わりに、何が条件になっているか

ここまでで、0円になっているのが案内を出している事務所自身の報酬であること、実費とほかの専門家の報酬は別に動くことを見ました。では、その事務所はなぜ自分の報酬を0円にできるのか。一般的な組み立てとしては、設立後の顧問契約が条件になっていることが多くなります。

顧問契約というのは、会社ができたあとの記帳・申告・税務相談などを継続して依頼する契約です。会社設立の手続きとは別の契約で、月額が発生します。依頼する側から見ると、設立のときに出ていくお金が下がる代わりに、その後に月額が続くという形になります。
- 月額はいくらか含まれる業務によって金額の意味が変わります。金額だけを聞いても比べられません。
- 最低の契約期間はあるか1年などの区切りが設けられていることがあります。設立サポートの分をその期間で回収する組み立てになっているためです。
- 解約の条件はどうなっているかいつまでに、どんな方法で申し出るのか。期間の途中で解約した場合に、0円だった分の請求が発生するのか。
- 含まれる業務の範囲はどこまでか記帳を自分でやるのか任せるのか、決算と申告は月額に入るのか、年末調整はどうか。社会保険の手続きは税理士の業務ではありません。
司法書士と行政書士には全国団体が公表している報酬の統計がありますが、税理士にはこれにあたる公的な報酬統計がありません。ですから「顧問料の相場と比べて高い・安い」という判断は、公的な数字にもとづいてはできません。書面で条件をそろえたうえで、複数の見積もりを見比べるのが現実的なやり方になります。
出典税理士に相談する(日本税理士会連合会)
仕組みとして見ると、こういう組み立てになっています

なぜ設立サポートを0円にできるのか。仕組みとしては、そう複雑な話ではありません。会社設立の手続きは一度きりですが、顧問契約は続きます。事務所にとっては続くほうが収入の柱になりますから、入口にあたる会社設立の部分を無料にしても成り立つ、という組み立てです。

この形そのものに問題はありません。入口を安くして続く契約で成り立たせるという商売の仕方は、ほかの業種にもあります。依頼する側から見ても、設立の時点で用意するお金が減るのは実際に助かることがあります。とくに、設立後の記帳と申告を最初から誰かに任せるつもりでいる方にとっては、無理のない選択になります。
当サイトは、0円の案内を出している依頼先を警戒すべきだとは考えていません。会社設立の依頼先を選ぶときに大事なのは、0円かどうかではなく、条件がはっきりしているかどうかです。聞けばきちんと答えてくれるか、書面に書いてあるか。そこを見てください。
逆に、会社設立を進めるうえで気をつけたい案内の形もあります。資格の話をせずに「うちで登記まで全部やります」とだけ言う、条件をたずねても書面が出てこない、契約を急がせる。こういう場合は、どの専門家が何を担当するのかをもう一度確かめたほうがよいと思います。
出典会社設立費用が0円で依頼できる税理士の注意点(税理士コンシェルジュ) 0円モデルの構造を説明する補助として使う。個別事務所の推奨には使わない。
そして総額で比べる。設立の一点では比べない

四つ目まで確かめたら、最後は総額です。会社設立の依頼先を比べるとき、設立の時点で払う金額だけを並べても比べられません。0円の案内は、続く契約と組みになっていることが多いからです。
比べるときの考え方は単純で、期間を決めて、同じ範囲でそろえることです。たとえば1年という単位を決めて、その中に入るものを両方の見積もりで同じにしてから並べます。設立時の報酬だけの見積もりと、顧問料まで含んだ見積もりを並べても、意味のある比較になりません。
- 期間をそろえる設立の月だけでなく、1年、あるいは2年という区切りで見ます。最低契約期間があるなら、その期間で見るのが自然です。
- 範囲をそろえる記帳を任せるのか自分でやるのか、決算と申告が入るのか。含まれる業務が違えば、金額が違うのは当然です。
- 実費は比較から外す登録免許税や定款認証の手数料は、どの依頼先でも同じ額です。差が出るのは報酬の側だけなので、実費を外して見ると差が見やすくなります。
- 登記の報酬を忘れない0円の案内でも、司法書士の報酬は別に発生することがあります。総額に入れて考えてください。
報酬の目安になる数字としては、公的な統計が二つあります。行政書士については、日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(令和7年度)に「会社設立手続」という項目があり、回答287件、平均106,371円、最頻値110,000円、最小7,000円、最大550,000円です。金額には消費税を含み、立替金は含みません。司法書士については、先に触れた日本司法書士会連合会のアンケート(2024年3月実施)の設例で平均107,887円です。
会社設立の費用は、会社の形(株式会社か合同会社か)、資本金の額、依頼する範囲によって変わります。当サイトは依頼先の種類と法律上の役割を解説するもので、費用の内訳表やシミュレーションは扱っていません。具体的な金額は、複数の依頼先から見積もりを取ってお確かめください。
なお、比べるときの言葉づかいにも触れておきます。「最安」「業界最安値」といった表示は、根拠がなければ問題になりうる表現です。当サイトはそうした表現を使いませんし、どこかの依頼先がいちばん安いという言い方もしません。
出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…
依頼する前に、この順番で聞いてみてください

四つの問いは、そのまま質問にできます。会社設立の依頼先に対して、次の順で聞いてみてください。どれも、まっとうに営んでいる専門家であれば答えに困る質問ではありません。
資格そのものは、公的な会員検索で確かめられます
会社設立を依頼する相手が、登録された専門家かどうかは、各団体の会員検索で確認できます。税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト、司法書士は日本司法書士会連合会の司法書士検索、行政書士は日本行政書士会連合会の会員検索です。税理士情報検索サイトでは、登録の有無に加えて懲戒処分の有無まで確認できます。
会員検索は、どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段です。当サイトは特定の事務所やサービスを比較したり、順位を付けたり、口コミを載せたりはしていません。書いているのは、依頼先を選ぶときに誰でも使える確かめ方だけです。
聞いた内容は、できれば見積書や契約書といった書面に残る形にしてください。会社設立は一度きりの手続きですが、顧問契約はその後も続きます。続く契約こそ、条件をはっきりさせておく意味があります。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
まとめ|0円かどうかより、条件がはっきりしているか

会社設立の「手数料0円」について、ここまで見てきたことを短くまとめます。
- 誰の報酬が0円か案内を出している事務所自身の報酬です。関わる専門家全員の報酬が0円になるわけではありません。
- 実費は0円にならない登録免許税と定款認証の手数料は法律と政令で決まった額で、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じです。
- 司法書士の報酬は別のことがある登記を代理できるのは司法書士と弁護士だけです。その報酬が0円の中か外かを確かめてください。
- 条件は顧問契約であることが多い月額、最低契約期間、解約の条件、含まれる業務の範囲。この四つを書面で確かめます。
- 総額で比べる期間と範囲をそろえて並べます。設立時の金額だけでは比べられません。
- 仕組み自体に問題はない入口を無料にして続く契約で成り立たせる形です。大事なのは条件がはっきりしているかどうかです。
会社設立の依頼先を決めるとき、金額は当然大きな判断材料です。ただ、同じ範囲のものを比べているのかどうかのほうが、金額そのものより先に来ます。0円という言葉は、範囲が見えにくくなりやすい言葉なので、この記事の四つを当てはめて輪郭を出してから比べてください。
制度も統計も変わります。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。実際に判断されるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の見積もりの妥当性や、どの依頼の形が合うかについては、税理士・司法書士といった各分野の専門家に直接ご相談ください。
出典0円で会社設立は現実的に不可能!実際の設立費用と資本金の目安解説(ハートランド税理士法人) 0円モデルの構造を説明する補助として使う。個別事務所の推奨には使わない。
0円かどうかではなく、何が0円かを見てください
「設立手数料0円」という案内そのものは、後ろ暗いものではありません。会社設立の依頼を入口にして、設立後の顧問契約で長くお付き合いする、という組み立てになっているだけです。依頼する側にとって、設立の時点で出ていくお金が下がるという利点は実際にあります。
困るのは、条件を知らないまま契約してしまい、あとから「登記の費用は別だった」「顧問契約に最低の期間があった」と気づく場合です。ここで挙げた四つ、つまり誰の報酬が0円なのか、登記の実費と司法書士の報酬は別か、顧問契約の条件はどうか、総額でいくらかを、契約の前に書面で確かめてください。
確かめるのは相手を疑うためではありません。会社設立を引き受ける専門家の側も、条件をはっきりさせておいたほうが後の行き違いが減ります。個別の見積もりが妥当かどうかは当サイトでは判断していませんので、複数の依頼先から見積もりを取り、税理士や司法書士に直接おたずねください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。