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電子定款とは何か|収入印紙4万円が要らなくなる理由と、誰に依頼すると電子定款になるのか

公開 約12分(7,154字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

電子定款とは何か|収入印紙4万円が要らなくなる理由と、誰に依頼すると電子定款になるのか

この記事は、こういう方に向けて書いています

  • 会社設立を専門家に依頼するか考えていて「電子定款なら4万円お得」と何度も見かけたものの、なぜ要らなくなるのかが説明されていないことに引っかかっている方。
  • 定款を電子にしてもらえるかどうかで依頼先を考えていて、そもそも誰に依頼すると電子定款になるのかを知りたい方。
  • この記事は、費用の内訳や節約のやり方を書いたものではありません。書いているのは、電子定款が制度としてどういうものか、なぜ印紙税がかからないのか、依頼するとどう扱われるのか、という範囲です。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

その前に、定款は誰が作れるのか

定款を作れる資格の線引きを表したイラスト
定款は行政書士・司法書士・弁護士が業として作成できます。

電子定款の話に入る前に、定款を業として作れるのは誰かを押さえておきます。ここを飛ばすと、会社設立の依頼先を考えるときに話がずれてしまうためです。

定款まわりの仕事を司法書士・行政書士・税理士・社労士のどの資格が担当できるかを示した表

定款は権利義務に関する書類にあたるため、行政書士が業として作成できます(行政書士法1条の3第1項)。司法書士は、登記の申請の代理に付随するものとして定款の作成と認証の手続きを扱えます。弁護士も法律事務として扱えます。一方、税理士や社会保険労務士の業務には、定款の作成は入っていません。

逆に、行政書士は定款を作れても、登記申請書類の作成と登記申請の代理はできません。行政書士法1条の3第2項が「その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と定めていて、登記は司法書士法3条1項が司法書士の業務としているためです。会社設立を依頼するときは、この二段構えを頭に置いておくと分かりやすくなります。

ご自身で作ることは、もちろんできます

ここで書いているのは、報酬をもらって業として行えるかどうかです。会社設立の定款をご自身で作り、ご自身で認証を受け、ご自身で登記を申請することは、どの資格がなくてもできます。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。

出典行政書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2026年5月21日施行の改正で条がずれた。現行は1条の3が業務、1条の4が代理等、1条の2は職責。19条1項違反の罰則は21条の2(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

電子定款とは、電磁的記録で作った定款のこと

紙の定款と電磁的記録の定款の違いを表したイラスト
電子定款は、会社法が正面から認めている作り方です。

電子定款という言葉は法律上の用語ではなく、電磁的記録で作成した定款を指す通称です。中身が特別なわけではありません。紙に印刷して発起人が署名または記名押印するかわりに、電子ファイルとして作って電子署名を付ける、という違いだけです。

会社法 26条

株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。

2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

出典:会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

2項の「署名又は記名押印に代わる措置」が、電子署名にあたります。合同会社などの持分会社についても、575条2項がまったく同じ形の規定を置いていますので、電子定款は株式会社に限った話ではありません。

日本公証人連合会も、定款の作成方法として「電子定款によるときは、定款をPDFファイルで作成し、電子署名をすることになります」と案内しています。電子公証で認証の対象になる電子文書はPDF形式に限られ、ファイルの大きさにも上限があります。ここは依頼先が段取りする部分なので、依頼する側が細かく把握しておく必要はありません。

電子定款にできるのは、会社設立のときだけの話ではありません

ここで扱っているのは会社設立のときに作る最初の定款(原始定款)です。設立後に定款を変更する場合、株式会社であっても公証人の認証は要りません。認証が必要なのは設立当初の定款だけだと日本公証人連合会が案内しています。

出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。

紙の定款に収入印紙4万円が必要な理由

紙の定款に収入印紙を貼ることを表したイラスト
第6号文書「定款」が、一通につき4万円と定められています。

会社設立で定款を紙で作ると、収入印紙が4万円分必要になります。この4万円がどこから出てくるのかを、先に確かめておきます。

印紙税法の別表第一は、印紙税がかかる文書を第1号から第20号まで並べた表です。このうち第6号の物件名が「定款」で、税率の欄には「一通につき 四万円」と書かれています。会社設立で語られる4万円は、この一行です。

  • 物件名
    第6号文書「定款」。
  • 定義の欄
    「定款は、会社(相互会社を含む。)の設立のときに作成される定款の原本に限るものとする。」つまり、設立のときの原本だけが対象で、控えや写しは対象になりません。
  • 税率の欄
    一通につき4万円。
  • 非課税物件の欄
    「株式会社又は相互会社の定款のうち、公証人法第58条第3項(書面の定款の認証)の規定により公証人の保存するもの以外のもの」。
  • 非課税物件の欄が少し読みにくいので、株式会社の場合に当てはめておきます。紙の定款を公証人に認証してもらうとき、公証役場は原本を保存します。課税されるのは、この公証人が保存する分です。専門家に依頼した場合も、この扱いは変わりません。会社が持つ分と発起人が持つ分は、この欄によって非課税になります。ですから紙の定款でも、貼る収入印紙は合計4万円で、3通作るから12万円ということにはなりません。

    実費と報酬は分けて考えてください

    会社設立の費用は「実費(法定費用)」と「報酬」に分かれます。収入印紙代、定款認証の手数料、登録免許税はいずれも実費で、誰に依頼しても、ご自身で手続きしても同じ額です。事務所によって差が出るのは報酬のほうだけです。当サイトでは費用の内訳表や試算は扱っていません。

    出典印紙税法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 別表第一 第6号「定款」が一通につき4万円。非課税物件欄により、公証人が保存するもの以外は非課税。

    電子定款に課税されない理由。「電子だから」ではありません

    印紙税の課税対象が文書であることを表したイラスト
    電磁的記録は文書に含まれない。だから課税されません。

    ここが、この記事でいちばん誤解されているところだと思います。電子定款に印紙税がかからないのは、電子化に対する優遇措置があるからではありません。そもそも課税の対象に入っていないからです。

    印紙税法 2条(課税物件)

    別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。

    出典:印紙税法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

    条文が「文書には」と書いていることが、すべての起点です。印紙税は文書に課される税であって、記録された情報一般に課される税ではありません。では電磁的記録は文書にあたるのか。ここについて、国税庁が質疑応答事例で答えを出しています。

    印紙税法2条と別表第一第6号、国税庁の質疑応答事例、会社法26条2項を並べたカード

    並べると筋道は単純です。課税されるのは文書。定款という文書は第6号に挙がっていて4万円。ただし電磁的記録は文書に含まれない。だから電磁的記録で作った定款には課税されない。「電子だから非課税」という言い方は、この途中の一段を飛ばしています。飛ばしても結論は同じですが、なぜそうなるのかが分からなくなります。

    「電子定款は非課税」という書き方に引っかかったら

    非課税というのは、課税の対象になったうえで税を課さないと決めている状態を指します。電磁的記録の定款は、そもそも課税物件である文書にあたりません。細かい違いに見えますが、印紙税の考え方を追うときにはここが出発点になります。

    出典取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い(国税庁) 電磁的記録は文書に含まれないため印紙税は課税されない、という一般則。電子定款を名指しした国税庁ページはないので、この質疑応答事例と印紙税法2条で説明する。

    誰に依頼すると電子定款になるのか

    専門家に依頼すると電子定款になることを表したイラスト
    定款を作れるのは行政書士・司法書士・弁護士です。

    では、会社設立を誰に依頼すると電子定款になるのか。答えは「電子署名を付けられる体制がある依頼先に頼んだとき」です。司法書士・行政書士・弁護士は定款の作成を業として扱えますので、この三つの専門家が候補になります。実務上は、これらの専門家に会社設立を依頼すると電子定款になるのが通常です。

    定款を自分で電子にする場合と専門家に依頼する場合を比べた図

    税理士事務所に会社設立を依頼した場合はどうなるか

    税理士の業務は税理士法2条1項の三つ(税務代理、税務書類の作成、税務相談)で、定款の作成はここに入りません。それでも税理士事務所が会社設立をまとめて受けている例は多く、その場合は事務所の中の有資格者か、提携する司法書士・行政書士が定款の部分を担当しています。この形そのものに問題はありません。

    ですから、税理士事務所に会社設立を依頼するときも、電子定款になるかどうかは確かめられます。聞き方としては「定款は電子定款になりますか。作成はどなたが担当されますか」で足ります。相手を試す質問ではなく、依頼の範囲をそろえるための質問です。

    無資格の代行をうたう案内には気をつけてください

    定款は権利義務に関する書類にあたるため、これを業として作成できるのは行政書士・司法書士・弁護士です。行政書士法19条1項がそれ以外の者に禁じており、違反した場合の罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(同法21条の2)。特定の業者を疑う話ではなく、担当する資格者を尋ねれば確かめられるという意味です。会計ソフト事業者の会社設立支援ツールは、本人が書類を作るためのソフトであり合法です。ツールが申請を代理することはありません。

    出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)

    電子定款にしても、なくならない費用

    電子定款でも残る実費を表したイラスト
    消えるのは紙の印紙4万円だけ。ほかの実費は残ります。

    電子定款にすると4万円が浮く、という説明は正しいのですが、会社設立の実費が4万円だけになるわけではありません。残るものを並べておきます。

    • 定款認証の手数料(株式会社のみ)資本金の額等が100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円です。電子定款でも同じようにかかります。
    • 認証手数料が1万5,000円になる場合資本金の額等が100万円未満で、①発起人の全員が自然人でその数が3人以下、②定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載または記録がある、③定款に取締役会を置く旨の記載または記録がない、の三つをすべて満たす場合です。2024年12月1日施行の改正によるもので、100万円以上の区分には適用されません。
    • 設立登記の登録免許税株式会社は資本金の額の0.7%で、15万円に満たないときは15万円。合同会社は同じく0.7%で、6万円に満たないときは6万円です。
    • 謄本の手数料など認証を受けた定款の謄本を登記申請用に請求する場合、その分の手数料がかかります。

    こうして並べると、電子定款で変わるのは紙の定款の収入印紙の部分だけだとはっきりします。認証の手数料も登録免許税も、電子か紙かでは動きません。そして、これらの実費は誰に依頼しても、ご自身で手続きしても同じ額です。

    見積書では実費と報酬が分かれているかを見てください

    会社設立の見積書を受け取ったら、まず実費と報酬が分かれているかを確かめてください。分かれていれば、事務所ごとに差が出るのは報酬の部分だけだと分かります。「電子定款対応で4万円お得」と書かれている場合、その4万円は実費が減る話であって、報酬が下がる話ではありません。

    会社設立の依頼先を電子定款だけで決める必要はない、というのはこの意味です。電子定款に対応しているかは確かめる価値のある項目ですが、対応の範囲や連絡の取りやすさとあわせて見てください。

    出典会社の定款手数料の改定(日本公証人連合会) 令和6年11月22日公布・同年12月1日施行。資本金100万円未満で3条件を満たす場合1万5,000円。

    合同会社では、話が少し変わります

    合同会社は定款認証が不要であることを表したイラスト
    認証は不要でも、紙の定款には印紙税がかかります。

    会社設立の依頼を考えるとき、株式会社と合同会社では前提がひとつ違います。合同会社の定款には、公証人の認証が要りません。

    会社法30条1項が認証を求めているのは26条1項の定款、つまり株式会社の発起人が作成する定款です。持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)については、575条が定款の作成を定めるだけで、認証を要する旨の規定がありません。579条により、持分会社は本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。日本公証人連合会も、持分会社の定款は認証を必要としないとはっきり書いています。

    では、合同会社なら紙の定款でも印紙は要らないのか。そうはなりません。先ほど見た非課税物件の欄は「株式会社又は相互会社の定款のうち」と書かれていて、持分会社の定款はここに挙がっていないためです。合同会社でも、紙で定款の原本を作れば第6号文書にあたります。電磁的記録で作れば、そもそも文書ではないので課税されない、という点は株式会社と同じです。

  • 株式会社
    定款認証が必要。紙なら公証人が保存する原本に4万円の収入印紙。電子定款なら印紙は不要で、認証の手数料は別途かかります。
  • 合同会社
    定款認証は不要。紙で原本を作れば第6号文書にあたります。電子定款なら課税されません。
  • 登録免許税
    株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円。電子か紙かでは変わりません。
  • 依頼の中身
    合同会社は認証の段取りがないぶん、専門家に依頼する手続きの数が少なくなります。
  • 会社形態を分けた報酬の統計はありません

    日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(令和7年度)にあるのは「会社設立手続」という一つの項目だけで、株式会社と合同会社を分けた数値は存在しません。回答287件、平均106,371円、最頻値110,000円、最小7,000円、最大550,000円という数値は、この一括の項目のものです。会社形態別の相場として書かれているものを見たときは、出どころを確かめてください。

    出典合同会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)

    まとめ|電子定款は制度どおりの作り方です

    電子定款についてのまとめを表したイラスト
    課税の対象は文書である。ここが出発点です。

    電子定款について、条文と一次情報から確かめられたことを短くまとめます。

    • 電子定款とは電磁的記録で作成した定款のことです。会社法26条2項(株式会社)と575条2項(持分会社)が正面から認めています。特別な抜け道ではありません。
    • 紙の定款の4万円印紙税法 別表第一 第6号文書「定款」が一通につき4万円。会社の設立のときに作成される定款の原本に限られます。
    • 課税されない理由印紙税法2条の課税対象が「文書」であり、国税庁の質疑応答事例が「電磁的記録は文書に含まれません」としているためです。電子化への優遇措置ではありません。
    • 誰に依頼すると電子定款になるか司法書士・行政書士・弁護士が定款を作成し電子署名を付けます。税理士事務所が窓口の場合は、提携先などがこの部分を担当します。
    • 残る実費定款認証の手数料(株式会社のみ)と登録免許税は、電子でも紙でも同じです。実費は誰に依頼しても、ご自身で手続きしても同じ額です。
    • 合同会社定款認証は不要です。ただし紙で原本を作れば第6号文書にあたります。

    会社設立の情報には、結論だけを短く書いたものが多く並びます。4万円が要らなくなるのは事実ですが、その理由が「電子だから」で止まっていると、次に似た場面が来たときに応用が利きません。課税の対象は文書である、という一行を覚えておけば足ります。

    この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。制度も条文も改正されます。実際に会社設立を進められるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の依頼の可否や見積もりの妥当性については、司法書士・行政書士といった各分野の専門家に直接ご相談ください。

    出典No.7141 印紙税額の一覧表(その2)(国税庁) 第6号文書「定款」が4万円。

    「電子だから非課税」ではなく、「文書ではないから課税されない」です

    電子定款をめぐる説明でいちばん多い誤解は、電子化そのものに割引や優遇があると読める書き方だと思います。実際には優遇措置ではありません。印紙税は文書に課される税で、電磁的記録は文書に含まれない。だから課税の対象にならない、というだけの話です。制度の作りが分かっていれば、案内文を読むときに迷わなくなります。

    そのうえで、会社設立の依頼先を電子定款だけで決める必要はありません。差が出るのは紙の定款の印紙4万円の部分で、定款認証の手数料も登録免許税も、電子か紙かでは変わらないからです。依頼先を選ぶときは、対応の範囲や連絡の取りやすさとあわせて見てください。

    会社設立の手続きをご自身で行うことも、もちろんできます。本人申請は合法です。ただ電子定款にするには電子証明書と対応するソフトの用意が要るため、一度きりの会社設立でそこまで揃えるかどうかは判断が分かれます。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。実際に進められるときは、各セクションの出典で最新の内容をご確認のうえ、専門家にご相談ください。

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