会社設立の依頼報酬は「幅」で見る|公表されている統計は二つだけです
この記事は、こういう場面で読んでいただくものです
- 会社設立を依頼しようとして料金のページをいくつか開き、書いてある金額の差が大きすぎて基準が持てないという方。
- 検索して出てきた「相場は◯万円」という記述の出どころが気になっている方。実際に一次情報にあたると、書けることと書けないことがはっきり分かれます。
- この記事では、特定の事務所やサービスの金額を比べたり、順位を付けたりはしません。扱うのは、公表されている統計に何が載っていて、何が載っていないかと、その数字を幅として読む方法です。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
「会社設立の相場はいくら」に、一つの答えが出ない理由

会社設立の依頼報酬を調べると、事務所ごとに数万円から数十万円まで幅があります。これは事務所が勝手な値付けをしているからではなく、引き受ける範囲が事務所ごとに違うからです。同じ専門家でも、受け方が違えば金額が変わります。
- どの段から引き受けるか定款の作成だけなのか、公証役場での認証手続きまで含むのか、設立登記の申請まで通しなのか。段の数が違えば金額も違います。
- どの資格が担当するか登記を代理できるのは司法書士と弁護士です。定款は行政書士・司法書士・弁護士が扱えます。担当する資格が違えば、引き受けられる範囲も変わります。
- 設立後まで含むか税務の届出や顧問契約まで含む案内もあります。会社設立の手続きだけの金額と並べると、比べたことになりません。
- 実費が入っているか登録免許税や定款認証の手数料を含んだ総額で書いてあるのか、報酬だけなのか。ここが混ざると差が大きく見えます。
ですから、会社設立の報酬は「いくらか」ではなく、「どのくらいの幅の中で、どこに位置するか」という見方をします。当サイトが数値を書くときも、必ず出どころと年次と前提を添えています。
特定の事務所やサービスの料金を並べて比べること、順位を付けることはしません。費用の内訳表や試算も作りません。書くのは、公表されている統計と、その読み方までです。
出典会社設立を司法書士に依頼する報酬・費用は?株式会社と合同会社の違いを解説(比較ビズ) 料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
数字を見る前に、実費と報酬を分けておく

会社設立にかかるお金は、実費(法定費用)と報酬に分かれます。そして実費は、どの専門家に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。ここを分けないまま金額を比べると、差が実際より大きくも小さくも見えます。
合同会社には定款の認証がありません(会社法575条・579条。認証を求める30条は株式会社の定款についての規定です)。ですから会社の形態が違えば、同じ「会社設立の費用」でも実費の側から違ってきます。形態をそろえずに金額を比べないでください。
「会社設立にいくらかかりますか」と聞くと、実費を含んだ総額で答える事務所と、報酬だけで答える事務所が出てきます。「報酬と実費を分けて出してください」と伝えるだけで、比べられる形になります。どの専門家に頼む場合でも同じことが言えます。
出典登録免許税法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 別表第一 第24号(一)イが株式会社の設立登記(資本金の額の1000分の7、15万円に満たないときは15万円)、ハが合同会社(同、6万円に満たないときは6万円)。
公表されている報酬の統計は、二つだけです

会社設立の依頼報酬について、全国団体が公表している統計は二つです。日本行政書士会連合会の報酬額統計調査と、日本司法書士会連合会の報酬に関するアンケートです。当サイトが数値を書けるのは、この二つの範囲までです。ほかの専門家については、公表された統計そのものがありません。

二つとも平均は10万円台の半ばあたりにあります。ただしこの二つを「だいたい同じ」と読むのは早すぎます。調べた対象も、含まれている仕事も違うからです。次の二つのセクションで、それぞれの中身を見ます。
検索すると「株式会社なら◯円、合同会社なら◯円」「地域によって相場が違う」という記述が出てきますが、この二つの統計にそうした数値はありません。出どころが書かれていない数字は、根拠が確かめられないものとして扱ってください。
出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…
行政書士の数字は「会社設立手続」の一括です

日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(令和7年度)にある項目は、「会社設立手続」の一つだけです。回答者287件、平均106,371円、最頻値110,000円、最小7,000円、最大550,000円。金額には消費税を含み、立替金は含みません。
| 金額帯 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 5万円未満 | 18件 | 6.3% |
| 5万円以上10万円未満 | 102件 | 35.5% |
| 10万円以上15万円未満 | 115件 | 40.1% |
| 15万円以上20万円未満 | 33件 | 11.5% |
| 20万円以上25万円未満 | 10件 | 3.5% |
| 25万円以上30万円未満 | 5件 | 1.7% |
| 30万円以上 | 4件 | 1.4% |
出どころは日本行政書士会連合会の報酬額統計調査。確認日 2026年9月1日。
分布を見ると、5万円から15万円のあいだに全体の四分の三ほどが集まっています。一方で5万円を切るものも、30万円を超えるものもあります。平均だけを見て「だいたい10万円」と考えると、この広がりが見えなくなります。
この統計にあるのは「会社設立手続」という一括の項目だけで、株式会社と合同会社を分けた行政書士報酬の数値は公表されていません。「株式会社なら◯円、合同会社なら◯円」という形で行政書士の統計値を示すことはできない、ということです。
それから、行政書士が担当できるのは定款の作成と認証の手続き、許認可の申請までです。登記申請の代理と登記申請書類の作成は行政書士の業務ではありません(行政書士法1条の3第2項)。この統計の数字に登記の報酬は入っていない、という前提で読んでください。登記まで頼むなら、そこは別の専門家の報酬が乗ります。
出典行政書士の業務(日本行政書士会連合会)
司法書士の数字は「設例」に対する回答です

日本司法書士会連合会の報酬に関するアンケート(2024年3月実施)で公表されているのは、特定の設例に対する回答です。設例の中身まで含めて書かないと、数字の意味が変わってしまいます。
「発起人2名、資本金の額500万円の株式会社の発起設立による設立登記手続の代理業務を受任し、定款、議事録、その他証明書等の全ての書類を作成し、定款認証手続及び登記申請の代理をした場合」。これに対する有効回答932件、平均107,887円です。

大事なのは、定款認証の手続きまで含んだ金額だという点です。定款は自分で作って認証も自分で受け、登記の申請だけを司法書士に依頼した場合と、この数字を並べても比較になりません。含まれる仕事がそろっていないからです。
それから、この設例は株式会社の発起設立についてのものです。合同会社の設立登記についての設例は別に用意されていませんので、合同会社の報酬としてこの数字を使うことはできません。
出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…
この二つの統計から、言えることと言えないこと

二つの統計をそのまま読むと、言えることはかなり限られます。言えないことを言ってしまうのが、報酬の記事でいちばん起きやすい誤りです。整理しておきます。

とくに気をつけたいのが地区別の相場です。「都市部は高い」「地方は安い」といった説明を見かけますが、いまの一次情報からは裏が取れません。当サイトでは書けない、という扱いにしています。
もう一つ、二つの統計を足し算しないでください。行政書士に定款、司法書士に登記を分けて依頼した場合の費用は、二つの平均を単純に足したものにはなりません。同じ作業が二重になるわけではないからです。実際の金額は、両方の専門家に関わってもらう形で見積もりを取って確かめてください。
出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)
税理士には、公的な報酬の統計がありません

会社設立の依頼先として税理士を検討している場合、報酬の見方が少し変わります。税理士には、司法書士・行政書士のような全国団体が公表する報酬の統計がありません。これは当サイトが確認した2026年9月1日時点の事実です。
ですから、「税理士に会社設立を依頼したときの相場は◯円」という数字を、公的な出どころ付きで示すことはできません。そう書いてある記述を見かけたら、出どころを確かめてください。事務所の公開料金を集計したものであれば、その集計の対象と時期が書かれているはずです。
- 設立サポートの料金事務所ごとに公開されています。顧問契約とセットの条件が付いていることがあります。
- 顧問料月額で決まるのが一般的です。事業の規模、訪問の頻度、記帳をどちらがやるかで変わります。
- 決算・申告の料金顧問料とは別に、年に一度の決算と申告の料金が設定されていることが多くあります。
- 登記の部分税理士は登記申請書類の作成も申請の代理もできません。「会社設立をまとめて」という案内の登記部分は、提携する司法書士が担当しています。
税理士事務所が設立サポート料を0円としている案内は、顧問契約を前提にしていることが多くあります。誰の報酬が0円なのか、登記の実費と司法書士の報酬は別なのか、顧問契約の月額と最低契約期間はどうなっているのか。総額で見るという発想が要ります。仕組みそのものは別のカテゴリーで扱っています。
出典税理士に相談する(日本税理士会連合会)
金額の表示を読むときに、気をつけること

会社設立の依頼先を探していると、金額を大きく打ち出した案内に行き当たります。表示そのものが悪いわけではありませんが、条件まで含めて読む必要があります。
- 「◯円〜」の表示:下限だけが書かれています。どういう場合にその金額になるのか、標準的にはいくらになるのかを確かめてください。
- 「無料」「0円」の表示:何が無料なのかを確かめてください。実費は無料になりません。顧問契約などの条件が付いていることがあります。
- 総額表示と報酬表示:実費を含む総額なのか、報酬だけなのか。混ざると比べられません。
- 消費税の扱い:税込か税別か。統計の数値は消費税を含んでいますので、そろえて比べてください。
- 立替金:登録免許税などを事務所が立て替える場合、その扱いが分かれていることがあります。
当サイトでは、「最安」「業界最安値」といった表現は使いません。根拠を示せない優良誤認につながるためです。景品表示法は、実際より著しく有利だと誤認させる表示を禁じています。読む側としても、そうした語が出てきたら根拠と条件が書かれているかを見てください。
会社設立の見積もりを比べるときは、①会社の形態をそろえる ②依頼する範囲をそろえる ③実費と報酬を分ける ④税込か税別かをそろえる。この四つを整えるだけで、複数の専門家から出てきた数字が比べられる形になります。
出典景品表示法(消費者庁) 「最安」「No.1」などの表示を扱うときの根拠。
まとめ|幅を知って、外れたときに理由を聞けるように

会社設立の依頼報酬について、ここまでの内容を短くまとめます。
- 一つの相場はない引き受ける範囲が事務所ごとに違うため、金額だけを取り出しても比べられません。
- 実費と報酬を分ける実費は誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額です。動くのは報酬の部分だけです。
- 統計は二つだけ行政書士は令和7年度の報酬額統計調査、司法書士は2024年3月実施のアンケート。いずれも年次と前提つきで読みます。
- 行政書士は一括の項目「会社設立手続」の一つだけで、平均106,371円、最頻値110,000円、幅は7,000円から550,000円(回答287件)。株式会社と合同会社は分かれていません。
- 司法書士は設例つき発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む設例に対し、平均107,887円(有効回答932件)。
- 税理士に公的統計はない事務所ごとの公開料金を見ることになります。顧問契約の条件まで含めて確かめてください。
依頼先を決める前に、資格の確認も
報酬の話と並べて確かめておきたいのが、相手が登録された有資格者かどうかです。日本行政書士会連合会、日本司法書士会連合会、日本税理士会連合会が会員の検索を公開しています。特定の事務所を勧めるものではなく、どの依頼先を選ぶ場合にも使える確認の手段です。
統計は更新されますし、実費の額も制度改正で変わります。この記事は2026年9月1日時点で確認した内容です。実際に判断されるときは、各セクションに添えた出典で最新の数値を確かめたうえで、複数の専門家から範囲をそろえた見積もりを取ってご検討ください。個別の見積もりが妥当かどうかの判断は行っていません。
出典行政書士会員検索(日本行政書士会連合会) 末尾スラッシュなしが実効URL。
数字は、範囲とセットでなければ意味を持ちません
会社設立の報酬について、この記事でいちばん伝えたいのは、金額だけを取り出しても比べられないということです。同じ「会社設立手続」という名前でも、定款の作成だけの事務所と、認証と登記まで通しで受ける事務所とでは、中身がまるで違います。数字は範囲とセットではじめて意味を持ちます。
幅を知っておく効用は、値切るためではなく、目安から大きく外れたときに理由を聞けるようになることにあります。安ければ何が含まれていないのか、高ければ何が上乗せされているのか。理由を聞ける状態になれば、依頼先とのやり取りは落ち着きます。
そのうえで、実費は誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額だという前提を忘れないでください。動くのは報酬だけです。ここを分けて見れば、比べるべきものは自然に絞られます。個別の見積もりが妥当かどうかの判断は当サイトでは行いませんので、複数の専門家から見積もりを取り、範囲をそろえて確かめてください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。