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会社設立で相見積もりを取るときの整え方|金額だけで比べないための観点

公開 約11分(6,033字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

会社設立で相見積もりを取るときの整え方|金額だけで比べないための観点

この記事を読んでいただきたいのは

  • 会社設立の依頼先を決めるにあたって、複数の事務所から見積もりを取ってみようと思っている方。何をどう伝えればよいかで迷っている段階の方に向いています。
  • すでに何通か見積もりが手元にあるけれど、書き方がばらばらで比べられないという方。取り方を整えると、次からは比べられる形になります。
  • この記事では、特定の事務所やサービスを比べて順位を付けることはしません。「最安」「業界最安値」といった表現も使いません。書くのは、比べられる形に整える方法と、金額以外に見ておく観点です。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

相見積もりを取る前に、こちらの条件を固める

相見積もりを取る前に条件を固めることを表したイラスト
聞き方をそろえるところから始めます。

会社設立の相見積もりで、返ってきた金額が比べられない形になる原因のほとんどは、こちらの伝え方がそろっていないことにあります。事務所ごとに違う前提で答えているので、当然そろいません。

ですから、問い合わせる前に、こちらの条件を固めておきます。決めておくのは次の五つです。

  • 会社の形態株式会社か合同会社か。合同会社には定款の認証がありません(会社法575条・579条)ので、手続きの数から変わります。
  • 依頼する範囲定款からか、登記からか、設立後の届出まで含むか。ここがそろわないと金額は比べられません。
  • 会社の中身発起人と役員の人数、資本金の額、本店の所在地、事業目的のおおよそ。細かく決まっていなくても、分かる範囲で伝えます。
  • 期限があるかいつまでに会社設立を終えたいか。急ぎの場合は料金が変わることがあります。
  • 希望する進め方対面かオンラインか、電子定款を希望するか。紙の定款だと収入印紙4万円がかかります。

会社設立の依頼では、この五つのうち依頼する範囲がとくに効きます。定款の作成だけを頼むのか、認証と登記まで通しで頼むのか、設立後の税務や社会保険まで含めるのか。範囲が違えば、担当する専門家の数も変わります。範囲を先に決めておくと、返ってくる見積書の形もそろいます。

何社に聞くかについては、決まりはありません。数が多いほど手間も増えますし、返ってきた見積もりを読み比べる時間も要ります。会社設立の期限が決まっているなら、二、三社にそろえて聞くくらいが現実的なところだと思います。

相見積もりは失礼ではありません

会社設立の依頼で複数から見積もりを取ることは、まったく普通のことです。事務所の側も慣れています。伝えづらければ「何社かにお話を伺っています」と添えるだけで十分です。隠して進めるほうが、あとで気まずくなります。

出典会社設立代行とは|必ず知っておきたい6つの基礎知識(GMOあおぞらネット銀行) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。

問い合わせのときに、何を書いて送るか

同じ文面を複数の事務所に送ることを表したイラスト
同じ文面を送る。これがいちばん確実です。

固めた条件は、同じ文面にして複数の事務所に送るのがいちばん確実です。口頭で説明すると、相手によって伝わり方が変わってしまいます。次の項目が入っていれば十分です。

  1. 会社の形態(株式会社/合同会社)と、想定している資本金の額。
  2. 発起人・役員の人数と、本店を置く予定の都道府県。
  3. 依頼したい範囲(定款の作成から、認証の手続き、設立登記の申請、設立後の税務の届出、社会保険の届出、許認可のうちどこまでか)。
  4. 希望する時期と、期限があるならその理由。
  5. 電子定款を希望すること、対面かオンラインかの希望。
  6. 「報酬と実費を分けて、含まれない作業も書いてください」という一文。

最後の一文が効きます。これを入れておくと、比べられる形の見積書が返ってきやすくなります。実費は誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額ですから、分けてもらえば報酬の部分だけを見比べられます。

それから、許認可が必要な業種であれば、その旨も最初に書いてください。事業目的の書き方に関わりますし、許認可の申請は行政書士の分野なので、対応できるかどうかで話が変わります。

会社設立の相談は、はじめての方であれば分からないことのほうが多いのが普通です。分からない部分は「分からないので教えてください」と書いて構いません。そこにどう答えてくれるかも、専門家を選ぶ材料になります。

返信の速さと丁寧さも記録しておく

会社設立の手続きは、短い期間に何度もやり取りが発生します。最初の問い合わせへの返信がどれくらいで来たか、質問に答えているかは、そのまま依頼後の進めやすさにつながります。金額と一緒に、この印象もメモしておいてください。

出典株式会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)

比べる観点は、金額のほかに六つあります

金額以外の観点を並べて比べることを表したイラスト
金額は観点の一つです。先に範囲と担当を見ます。

見積もりが集まったら、金額だけを横に並べたくなりますが、そこは最後にしてください。先に見ておく観点を挙げます。

会社設立の相見積もりを比べるときの観点を並べたチェックリスト

この中で見落とされやすいのが面談の方法です。会社設立では印鑑証明書などの原本をやり取りしますし、定款認証の場面もあります。遠方の事務所に依頼する場合は、どこまでオンラインで進むのかを最初に確かめておくと、あとで往復の手間が増えずに済みます。

もう一つ、説明の分かりやすさも観点に入れてください。会社設立の手続きは専門用語が多く、依頼した後も何度か判断を求められます。こちらの言葉に置き換えて説明してくれる専門家であれば、その後のやり取りが楽になります。

「対応が早い」だけで決めないでください

返信が速いことは魅力ですが、それだけで決めると、範囲の確認が抜けたまま契約することになりがちです。速さは観点の一つであって、範囲と担当の確認に代わるものではありません。

出典会社設立で代行できる手続きとは?専門家に依頼するメリット・デメリットと選び方(freee) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。

金額の差を見るときの、土台になる数字

公表されている統計の幅を土台にすることを表したイラスト
幅を知っておくと、差の理由を聞けるようになります。

金額を比べる段になったら、幅の目安を持っておくと落ち着いて見られます。全国団体が公表している統計は二つあります。

  • 行政書士(令和7年度)日本行政書士会連合会の報酬額統計調査の「会社設立手続」で、平均106,371円、最頻値110,000円、最小7,000円、最大550,000円(回答287件)。消費税を含み、立替金は含みません。株式会社と合同会社を分けた数値はありません。
  • 司法書士(2024年3月実施)日本司法書士会連合会の報酬に関するアンケートで、発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む設例に対し、有効回答932件・平均107,887円。
  • 税理士公的な報酬の統計はありません。事務所ごとに公開されている料金を見ることになります。顧問契約とセットの条件が付いていることがあります。
  • 実費登録免許税や定款認証の手数料は、誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額です。ここは比べても差が出ません。

この幅から大きく外れた見積もりが出てきたときに、理由を聞けるようになるのが、統計を知っておく効用です。安いなら何が含まれていないのか、高いなら何が上乗せされているのか。外れていること自体が問題なのではありません。

なお、会社設立の依頼で複数の専門家に分けて頼む場合、たとえば定款は行政書士、登記は司法書士という形になっても、二つの平均を単純に足した金額になるわけではありません。実際の総額は、両方を含む形で見積もりを取って確かめてください。

統計の数字をそのまま自分の見積もりに当てはめないでください

行政書士の統計は「会社設立手続」の一括の項目で、登記の報酬は含みません。司法書士の数字は設例に対する回答で、合同会社には使えません。前提が違う数字を並べても比較にはならない、という点だけ押さえておいてください。

出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…

担当する資格を確かめる。ここは省けません

担当する資格を確かめることを表したイラスト
誰がどの手続きを担当するのか。ここは必ず聞きます。

会社設立の見積もりを比べるときに、金額と同じくらい大事なのが誰が何を担当するのかです。士業が業として行える範囲は法律で決まっているので、ここは省けません。

会社設立で誰が何を担当できるかを定めた条文を並べたカード

ですから、見積もりを取るときは「登記はどなたが担当されますか」と聞いてください。税理士事務所や行政書士事務所であれば、提携する司法書士が担当しているのが通常です。その形自体に問題はありません。確かめるべきなのは、誰も担当が決まっていないまま話が進んでいないか、という点です。

同じように、設立後の社会保険の届出を含む見積もりであれば、社会保険労務士が担当するのかを確かめてください。税理士が社会保険の届出を代行することはできません。「全部やります」という答えだけで安心しないようにしてください。会社設立から設立後までを一つの窓口で受ける形であっても、中では複数の専門家が分担しています。

出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

登録された有資格者かどうかは、自分で確かめられます

各士業の会員検索で登録を確かめることを表したイラスト
登録の有無は、公式の検索で確かめられます。

会社設立の依頼先を絞り込む段階で、相手が登録された有資格者かどうかは自分で確かめられます。各士業の全国団体が、会員の検索を公開しているためです。

  • 司法書士
    日本司法書士会連合会が全国の司法書士・司法書士法人の検索を公開しています。登記を依頼する場合はここで確かめられます。
  • 行政書士
    日本行政書士会連合会の会員検索があります。定款の作成や許認可を依頼する場合に使えます。
  • 税理士
    日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトがあります。設立後の顧問を検討する場合に使えます。
  • 弁護士
    日本弁護士連合会の検索で、登録されている弁護士を確かめられます。
  • 社会保険労務士については、全国団体による全国横断の個人検索は公開されていません。都道府県ごとの会の一覧が公式に案内されていますので、そちらから各会の情報を確かめる形になります。検索上位に出てくる民間の団体の名簿を公式のものと取り違えないよう、運営元を確かめてください。

    検索して確かめられるのは、登録されているかどうかまでです。会社設立をよく扱っているかどうかまでは分かりませんので、そこは問い合わせのときに直接聞いてください。「会社設立の依頼をどれくらい受けていますか」「合同会社の設立も扱っていますか」といった聞き方で構いません。

    会員検索は、順位づけの道具ではありません

    会員検索に載っているかどうかは登録の有無を表すもので、実力や評判を表すものではありません。当サイトが会員検索を挙げているのは、どの依頼先を検討する場合にも共通して使える確認の手段だからです。特定の事務所を勧めるものではありません。

    出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。

    比べたあと、どう決めて、どう断るか

    比べたあとの決め方と断り方を表したイラスト
    範囲をそろえたうえでなら、金額で選んで構いません。

    見積もりがそろったら、いよいよ決める段です。ここでも金額を最後に置くという順番は変わりません。

    金額だけで選ぶ場合と条件をそろえて選ぶ場合を比べた図

    表示についてもひとこと。「◯円〜」は下限の表示ですし、「無料」「0円」には条件が付いていることがあります。当サイトでは「最安」「業界最安値」「絶対」といった表現は使いません。根拠のない有利さを示す表示は景品表示法の問題になり得ます。読む側としても、根拠と条件が書かれているかを見てください。

    断り方は簡単で構いません。「今回は別の事務所にお願いすることにしました」で十分です。理由を細かく説明する義務はありません。見積もりに応じてもらったお礼だけ添えれば、それで済みます。会社設立は一度きりでも、事業が続けば別の場面で相談することもあります。

    出典景品表示法(消費者庁) 「最安」「No.1」などの表示を扱うときの根拠。

    まとめ|そろえて聞く、範囲で比べる、担当を確かめる

    会社設立の相見積もりの取り方をまとめたイラスト
    そろえて聞けば、比べられる見積もりが返ってきます。

    会社設立の相見積もりについて、ここまでの内容をまとめます。

    • 同じ文面で聞く会社の形態、依頼する範囲、人数と資本金、期限、電子定款の希望。同じ内容を複数に送ります。
    • 報酬と実費を分けてもらう実費は誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額です。比べる意味があるのは報酬だけです。
    • 含まれない作業を聞く許認可、設立後の顧問、社会保険の届出は別立てのことがほとんどです。
    • 担当する資格を確かめる登記は司法書士か弁護士、税務は税理士、社会保険は社会保険労務士、許認可は行政書士。
    • 幅を知っておく行政書士は令和7年度の統計、司法書士は2024年3月実施のアンケート。税理士に公的な統計はありません。
    • 金額は最後に見る範囲がそろってはじめて、金額の比較が意味を持ちます。

    見積もりを取る前に相談だけしたい場合

    いきなり見積もりを依頼するのが気後れするなら、公的な相談の窓口もあります。商工会議所や商工会の経営相談、よろず支援拠点、中小企業庁の創業支援など、無料で使えるものがあります。ただし窓口では代理までは行いません。書類の作成や申請を頼む段になれば、それぞれの分野の専門家への依頼になります。

    この記事は2026年9月1日時点で確認した内容です。統計は更新されますし、実費の額も制度改正で変わります。実際に判断されるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容を確かめたうえで、依頼先の専門家にご相談ください。個別の見積もりの妥当性について、当サイトでは判断していません。

    出典経営相談|日本商工会議所(日本商工会議所)

    比べるのは金額ではなく、条件のそろった見積もりです

    会社設立の相見積もりで大事なのは、同じ条件で聞くことの一点に尽きます。会社の形態、依頼する範囲、急ぎかどうか、電子定款を希望するか。こちらの前提がそろっていなければ、返ってくる金額もそろいません。

    そして、金額はいくつかある観点のうちの一つです。説明の分かりやすさ、返信の速さ、誰が担当するのか、聞いたことに答えてくれるか。会社設立の手続きは短期間に集中して進みますから、やり取りのしやすさは金額と同じくらい効いてきます。

    見積もりを取った事務所すべてに依頼する必要はありませんし、断るのに理由をこまかく説明する必要もありません。比べたうえで選ぶのは、依頼する側の当然の行動です。迷ったときは、範囲をそろえてもう一度聞き直してください。実際の可否や金額は、それぞれの専門家に直接ご確認ください。

    この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。

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