事務所の中に資格者がいるのか、外部の提携なのか|どちらでもよい理由と、確かめ方だけを書きます
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立をまとめて依頼しようとしていて、「提携司法書士が対応します」という表記を見て不安になった方。
- 事務所の中に資格者がそろっている依頼先のほうが安心なのか、それとも提携でも変わらないのかを知りたい方。
- 先に結論を書きます。どちらでも問題ありません。この記事は、提携という形を疑わせるために書いたものではありません。書くのは、二つの形で実際に違ってくるところと、契約の前に確かめておくとよい言い回しだけです。特定の事務所を比べたり、順位を付けたりはしません。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
01二つの形があります。どちらもよくある形です

会社設立をまとめて依頼できると案内している事務所を見ていくと、専門家の抱え方には大きく二つの形があります。事務所の中に複数の資格者がいる形と、外部の専門家と提携している形です。

どちらの形でも、会社設立で登記を担当する専門家は司法書士か弁護士です。ここは変わりません。変わるのは、その司法書士が同じ事務所の人なのか、別の事務所の人なのか、という点だけです。
案内に「提携司法書士が対応します」と書いてある場合、それは担当の割り振りを先に明かしているということです。書かずに「全部お任せください」とだけ書いてあるより、依頼する側からは分かりやすい表記だといえます。
出典会社設立で代行できる手続きとは?専門家に依頼するメリット・デメリットと選び方(freee) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
02どちらでも問題がない理由

結論の理由から書きます。法律が求めているのは、その業務を資格者が行っていることであって、窓口と同じ事務所にいることではありません。司法書士法73条1項は、司法書士でない者が登記の業務を行うことを禁じています。禁じられているのは業務を行うことであって、他の事務所と協力すること自体ではありません。
司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
ですから、税理士事務所が窓口になり、提携先の専門家である司法書士が登記を担当する形は、登記の業務を司法書士が行っている限り、通常の形です。逆に、同じ事務所の中に司法書士がいても、資格のない担当者が登記申請書類を作成していれば、それは形の問題ではなく中身の問題になります。
- 見るのは資格者が担当しているか事務所の場所の話ではありません。会社設立の各段を、その分野の資格者が担当しているかどうかです。
- 提携でも責任の所在は決まる誰が受任するのか、契約の相手方は誰かが書面で分かれば、責任の所在ははっきりします。
- 内部でも連携が悪いことはある同じ事務所でも、専門家どうしで情報が渡っていなければ会社設立の進みは遅くなります。
- 長く組んでいる提携は滑らか外部でも、同じ相手と長く組んでいれば手順が決まっていて、やり取りが早いことがあります。
もう少し実際的な話をすると、会社設立の依頼で提携という形が使われるのには理由があります。登記の件数がそれほど多くない事務所が、専属の司法書士を抱え続けるのは現実的ではないからです。逆に、司法書士の側から見れば、複数の税理士事務所と組むことで会社設立の案件が安定して回ってきます。この関係は長く続いていることが多く、手順もお互いに決まっています。
ですから、提携が「その場しのぎで探してきた相手」だとは限りません。むしろ、何度も一緒に会社設立を進めてきた相手であることのほうが多いといえます。気になるようであれば、「その司法書士の方とは、どのくらいのお付き合いですか」と聞いてみても構いません。差し支えのある質問ではありません。
「提携だと危ない」という趣旨ではまったくありません。提携は、会社設立の依頼でごく普通に使われている形です。書いているのは、どちらの形でも同じように確かめられる項目があります、ということだけです。
出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
03窓口がひとつであることの利点

形の話をする前に、窓口がひとつであること自体の利点を確かめておきます。会社設立の依頼で「丸投げしたい」と思うのは、たいていこの利点が欲しいからです。
この利点は、事務所の中に資格者がいる形でも、外部と提携している形でも同じように得られます。窓口が機能していれば、依頼する側から見た手間は変わりません。逆に、窓口が機能していなければ、同じ事務所の中に全員がいても手間は減りません。
担当する専門家が複数になる場合、日常の連絡はどなたにすればよいのかを最初に決めておくと、会社設立の進行が読みやすくなります。窓口が変わる場面があるのか(登記までは司法書士、そのあとは税理士、など)も、聞いておくとよいところです。
出典会社設立代行とは|必ず知っておきたい6つの基礎知識(GMOあおぞらネット銀行) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。
04二つの形で、実際に違ってくるところ

では、二つの形でまったく同じかというと、そうでもありません。品質の差ではなく、見え方や手続きの形として違ってくるところがあります。あらかじめ知っておくと、戸惑いません。

依頼する側にとっていちばん実感しやすいのは、契約と請求の本数だと思います。提携の場合、登記の報酬は司法書士へ、税務の報酬は税理士へ、というように専門家ごとに分かれることがあります。分かれること自体は問題ではありません。むしろ、誰の報酬がいくらなのかが見えやすくなる面もあります。
会社設立の費用は「実費(法定費用)」と「報酬」に分かれます。登録免許税や定款認証手数料といった実費は、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。事務所の形によって変わるのは報酬のほうだけです。見積書でこの二つが分かれているかを見てください。
出典会社設立手続きは司法書士に依頼できる?法人設立の相談先の選び方(弥生) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
05確かめ方その一|聞く言葉は、短くて構いません

確かめ方の話に移ります。難しい聞き方をする必要はありません。依頼の範囲をそろえるための質問として、短く聞けば十分です。会社設立を扱い慣れた専門家であれば、すぐに答えが返ってきます。

会社設立の依頼で聞いておくとよいのは、次の三つです。これ以上は増やさなくて構いません。
- 登記はどなたが担当されますか。事務所の中の司法書士か、提携している司法書士か。どちらでも構いません。
- 税務の届出はどこまで含まれますか。税務署だけか、都道府県と市町村も含むか。設立後の顧問契約と分けられるか。
- 社会保険の届出は範囲に入りますか。入らない場合、社会保険労務士を紹介してもらえるか。
司法書士は日本司法書士会連合会の司法書士検索、行政書士は日本行政書士会連合会の会員検索、税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト、社会保険労務士は各都道府県会、弁護士は日本弁護士連合会で登録を確かめられます。特定の依頼先を疑うための手段ではなく、どこに依頼するときにも共通して使える確認の方法です。
出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。
06確かめ方その二|見積書と契約書で見るところ

口頭で聞いた答えは、時間がたつと記憶が食い違います。会社設立の依頼では、書面で残る部分を見ておくほうが確実です。見積書と契約書で、次のところを確かめてください。

とくに「実費と報酬が分かれているか」は、二つの形のどちらでも共通して見るところです。会社設立の見積もりで金額が大きく見えるとき、登録免許税などの実費が含まれているだけということがあります。実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額なので、比べるときは報酬の部分だけを見ると分かりやすくなります。
もうひとつ、見積書で気をつけて見ておきたいのが「一式」という書き方です。会社設立の依頼では、定款の作成、認証の手続き、登記の申請、設立後の届出と、いくつもの作業が重なります。それらがまとめて「会社設立一式」と書かれていると、どこまでが含まれているのかが読み取れません。内訳を出してもらえるかどうかを聞いてみてください。出せない理由は、通常はありません。
設立サポートの料金が下がる代わりに顧問契約が条件になっている案内もあります。それ自体は正当な組み立てですが、月額と最低契約期間、解約の条件は書面で確かめてください。会社設立のときだけを見るのではなく、1年分・2年分の総額で考えると比べやすくなります。
出典行政書士会員検索(日本行政書士会連合会) 末尾スラッシュなしが実効URL。
07気をつけたいのは、形ではなく説明のしかたです

最後に、注意の話を短く置いておきます。繰り返しますが、提携という形そのものは問題ではありません。気をつけたいのは、形ではなく説明のしかたのほうです。
国税庁や各士業の団体は、資格を持たない者による業務について注意を呼びかけるページを公開しています。特定の業者を名指しするのではなく、こうした一般的な案内を読んでおくと、判断の目安が持てます。
ここに挙げたのは、確かめても答えが返ってこないときの話です。会社設立を扱っている多くの依頼先は、聞けば普通に答えてくれます。当サイトでは、特定の事務所やサービスを違法と結び付けるような書き方はしていません。判断に迷った場合は、各士業の団体の相談窓口に問い合わせることもできます。
出典No.9204 にせ税理士にご注意(国税庁)
08まとめ|どちらでも構いません。割り振りだけ確かめてください

事務所の中に資格者がいるのか、外部の専門家と提携しているのか。会社設立の依頼で気になりやすいところを見てきました。まとめます。
- どちらでも問題ない法律が求めているのは、その業務を資格者が行っていることです。同じ事務所にいることまでは求められていません。
- 登記の担当は変わらないどちらの形でも、設立登記を代理するのは司法書士か弁護士です。
- 違いは見え方に出る契約の本数、請求の見え方、連絡の経路、書類の動き。品質の差の話ではありません。
- 窓口の一本化は利点連絡先がひとつ、書類を出す先がひとつ。この利点はどちらの形でも得られます。
- 聞くのは三つ登記・税務・社会保険を誰が担当するか。名前や資格を添えた答えが返ってくれば十分です。
- 書面で残す受任者、対応の範囲、実費と報酬の区分、追加費用の条件。見積書と契約書で確かめます。
会社設立の依頼先を選ぶときに、形を基準にしすぎると選択肢が狭くなります。中にそろっているから安心、提携だから不安、という見方ではなく、担当の割り振りを説明できるかどうかで見てください。そのほうが、実際の進み方をよく表します。
制度も運用も変わります。この記事は2026年9月1日時点で確認した内容です。各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の依頼先が自分に合うかどうかや、見積もりの妥当性については、当サイトでは判断していません。複数の専門家から話を聞いて、ご自身でご判断ください。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
形を選ぶより、説明できるかどうかを見てください
会社設立の依頼先を選ぶときに、「事務所の中に資格者がいるか」を基準にしすぎる必要はありません。中にいても連携が悪ければ進みませんし、外部の提携でも長く組んでいれば滑らかに進みます。形そのものが品質を決めるわけではない、ということです。
見ていただきたいのは、担当の割り振りを説明できるかどうかのほうです。「登記は誰が」「税務は誰が」「社会保険は誰が」。この三つに、名前や資格を添えた答えが返ってくれば十分です。答えられない、あるいは答えをあいまいにしたまま進めようとする場合だけ、もう一歩聞いてみてください。
そのうえで、窓口がひとつであることの価値も忘れないでください。会社設立は決めることが多く、書類の指示も次々に来ます。それを一か所で受けられるのは、依頼する側にとって実際に楽です。個別の依頼先が自分に合うかどうかは、見積もりを取り、話してみたうえでご判断ください。当サイトでは個別の判断はしていません。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。