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途中まで自分で、どこから依頼するか|会社設立の切り替え点と、切り替えでつまずくところ

公開 約11分(6,236字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

途中まで自分で、どこから依頼するか|会社設立の切り替え点と、切り替えでつまずくところ

こういう場面を想定して書いています

  • 会社設立を自分で進めはじめたものの、途中で手が止まってしまい、ここから先だけ依頼できないだろうかと考えている方。
  • 最初から全部を依頼するほどではないけれど、登記だけは確実に済ませたい、というように、部分的な依頼を検討している方。
  • この記事では会社設立の手順は書きません。書くのは、依頼に切り替えられる区切りがどこにあるかと、切り替えるときに実際につまずきやすいところです。途中まで進んだ書類の扱いや、報酬がどう見えるかも含めて整理します。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

会社設立には、依頼に切り替えられる区切りが何か所かあります

会社設立の途中から依頼に切り替えられることを表したイラスト
切り替え点は一か所ではありません。段ごとに選べます。

会社設立の依頼というと、最初から最後まで任せる形が思い浮かびがちです。けれども実際には、途中の区切りから依頼に切り替えることができます。手続きが性質の違う段に分かれていて、段ごとに担当できる資格が決まっているからです。

会社設立の段ごとに、そこから依頼した場合に担当できる専門家を示した流れ図

この図で分かるのは、切り替え点が一か所ではないということです。定款から依頼する、登記から依頼する、設立後の届出から依頼する。どこで切り替えても構いませんし、切り替えたあとの段だけを依頼することもできます。

ここでも手順は書きません

当サイトでは会社設立を自分で進める手順を扱っていません。上の図は、どの段で依頼に切り替えられるかを見るためのもので、各段のやり方を説明するものではありません。手続きのやり方は、法務局・公証役場・国税庁・日本年金機構の案内をご覧ください。

出典株式会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)

よくある切り替え方を、三つ挙げます

三つの切り替え方を表したイラスト
定款から、登記から、設立後から。目的で選びます。

実際に選ばれている切り替え方は、おおむね次の三つに整理できます。どれが正解ということはありません。どこに不安があるかで決まります。

  • 定款から依頼する商号や事業目的までは自分で決めて、定款の作成と認証の手続きから依頼します。事業目的の書き方に不安がある場合や、電子定款にしたい場合に選ばれます。定款は行政書士・司法書士・弁護士が扱えます。
  • 登記から依頼する定款まで自分で作り、設立登記の申請から司法書士に依頼します。登記でつまずきたくない、という考え方です。ただし後で述べるとおり、定款を作り直すことになる場合もあります。
  • 設立後から依頼する登記まで自分で済ませ、設立後の税務の届出から税理士に、社会保険の届出から社会保険労務士に依頼します。会社設立そのものは自分で終えて、続く実務を任せる形です。

三つのうち、会社設立が終わってから依頼する形がいちばん切り替えやすいといえます。登記が終わった時点で会社は成立していますし、税務も社会保険も、そこから新しく始まる手続きだからです。前の段で作ったものを引き継ぐ必要がほとんどありません。

逆に、定款や登記の途中で切り替える場合は、すでに作ったものをどう扱うかという問題が出ます。ここが、この記事でいちばん書いておきたいところです。

株式会社と合同会社で、区切りの数が違います

合同会社には定款の認証がありません(会社法575条・579条。認証を求める30条は株式会社の定款についての規定です)。公証役場に行く段がまるごとないぶん、切り替え点も一つ少なくなります。定款を作ったら、次はもう登記です。

出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。

途中まで作った書類は、そのまま使ってもらえるのか

途中まで作った書類の確認がやり直しになることを表したイラスト
固まるのは書類より、決めたことのほうです。

切り替えるときに最初に気になるのが、ここだと思います。自分で作った定款や書類を、そのまま使ってもらえるのか。結論からいえば、内容の確認はやり直しになるのが普通です。

理由は簡単で、会社設立の依頼を受けた専門家は、その書類の内容に責任を負う立場になるからです。司法書士が登記を代理するなら、添付する書類の内容が登記できるものかどうかを自分で確かめます。他人が作ったものをそのまま信じて出す、という進め方はできません。

ですから、途中まで作ってあることの意味は「作業が半分終わっている」ではなく、「決めたことが固まっている」という点にあります。商号、事業目的、資本金の額、役員の構成、本店の所在地。これらが決まっていれば、打ち合わせは短くなります。書類そのものは作り直しになったとしても、決定事項が固まっているぶんは確実に早くなります。

「作りかけだから安くなる」とは限りません

途中まで自分で進めたからといって、報酬がその割合で下がるとは限りません。確認の手間は結局かかるためです。事務所によっては、最初から依頼した場合と同じ料金体系のこともあります。安くなるかどうかは見積もりを取って確かめてください。「途中まで進んでいます」と伝えたうえで見積もりを依頼するのが確実です。

なお、登記の申請を代理できるのは司法書士と弁護士です(司法書士法3条1項1号、73条1項)。「途中まで自分でやったので、書類のチェックだけしてほしい」という頼み方をする場合も、報酬を得て業として行える範囲は資格によって決まります。誰に何を頼んでいるのかは、切り替えるときこそ確かめておいてください。

出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

切り替えでつまずきやすいのは、この四つ

切り替えでつまずきやすい四つの場面を表したイラスト
電子定款・順番・期限・窓口。この四つに気をつけてください。

会社設立の途中から依頼するときに、実際に手間が増えやすいところを挙げます。どれも、切り替える前に確かめておけば避けられるものです。

  • 電子定款にするかどうか紙で定款を作ってしまってから依頼すると、電子定款にするには作り直しになります。紙の定款には収入印紙4万円がかかりますので、依頼する予定があるなら、紙で確定させる前に相談したほうが無駄がありません。
  • 段の順番が戻せないこと定款の認証を受けたあとで内容を直すには、手続きが要ります。認証の前に見てもらうのと後で気づくのとでは、手間が大きく変わります。
  • 期限が動くこと出資金の払込と定款の日付、登記の申請までの期間には決まりがあります。切り替えの相談で日数が空くと、やり直しになる書類が出ることもあります。
  • 窓口が分かれること定款は行政書士、登記は司法書士、というように分けて依頼すると、こちらが両方に説明することになります。同じ事務所や提携先でまとめられるかを先に聞いてください。
会社設立の依頼に切り替える前に確かめる項目を並べたチェックリスト

この中でいちばん見落とされやすいのが、「途中からの依頼を受けてもらえるか」です。会社設立を一式で受ける形にしている事務所では、部分的な依頼を扱っていないこともあります。断られたからといって不親切なのではなく、専門家の側から見ると責任の範囲が切り分けにくいという事情があります。

もう一つ、会社設立を急いでいる場合は、切り替えの相談そのものに日数がかかる点も見ておいてください。問い合わせ、範囲の確認、見積もり、契約。ここに数日かかることは珍しくありません。期限が決まっているなら、切り替えの判断も早めにしてください。

出典株式会社の設立登記をしたい方(オンライン申請):法務局(法務局(法務省)) 株式会社設立登記のオンライン申請の手順・添付書面・様式へのリンクを掲載

定款まで自分でやる場合と、最初から依頼する場合の見え方

自分でやる部分と依頼する部分で費用の見え方が変わることを表したイラスト
実費は同じ額です。動くのは報酬の部分だけです。

途中まで自分でやると、何がどう変わるのか。費用と手間の見え方を並べておきます。

定款まで自分でやってから依頼する場合と最初から依頼する場合を比べた図

念のため書いておくと、会社設立の費用は実費(法定費用)報酬に分かれます。実費は、誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額です。登録免許税は株式会社なら資本金の額の0.7%で最低15万円、合同会社なら同0.7%で最低6万円。株式会社の定款認証の手数料も、資本金の額等の区分で決まっています。途中から依頼したからといって、実費が増えることも減ることもありません。

動くのは報酬です。そして報酬は、引き受ける範囲で決まります。定款から登記まで通しで受ける場合と、登記だけを受ける場合とでは、当然中身が違います。切り替えて依頼するときは、どこからどこまでを頼むのかを先に決めてから見積もりを取ってください。範囲が決まっていない状態で金額だけ聞いても、比べられる数字は出てきません。

紙の定款で確定させる前に相談を

紙の定款には収入印紙4万円がかかります。電子定款であれば不要です(印紙税法2条の課税対象が「文書」であるため)。専門家に依頼すると電子定款になるのが通常ですので、依頼する可能性が少しでもあるなら、紙で確定させる前に相談するほうが、結果として無駄が出にくくなります。

出典行政書士の業務(日本行政書士会連合会)

登記まで自分で終えて、そこから依頼する形

設立後の届出から依頼する形を表したイラスト
設立後からの依頼は、引き継ぎが少ない切り替え方です。

会社設立の登記まで自分で終えて、そのあとの手続きから依頼するという形もよく選ばれます。前の段からの引き継ぎがほとんどないため、切り替えとしてはいちばん軽い形です。

  • 法人設立届出書
    設立の日以後2か月以内に、納税地の所轄税務署長へ提出します。定款等の写しを添付します。都道府県と市町村にも同様の届出が要ります。税理士に依頼できる税務書類の作成に当たります。
  • 青色申告の承認申請書
    提出の期限があります。設立後の申告に関わりますので、税理士に相談する場合はここもあわせて確認してください。
  • 給与支払事務所等の開設届出書
    役員報酬や給与を支払う場合に必要です。こちらも税務の届出です。
  • 健康保険・厚生年金保険の新規適用届
    法人は代表者ひとりでも強制適用事業所になります。事実の発生から5日以内に年金事務所へ。提出代行を依頼できるのは社会保険労務士です。
  • ここで気をつけたいのが、会社設立のあとの手続きでも、税理士と社会保険労務士では担当が違うことです。税務の届出は税理士、社会保険と労働保険の届出は社会保険労務士。税理士が社会保険の届出を代行することはできません。「設立後をまとめてお願いします」と言うときは、社会保険の部分を誰が担当するのかを確かめてください。

    なお、設立後の依頼は多くの場合顧問契約の形になります。月額と、含まれる業務の範囲、最低契約期間、解約の条件。会社設立の依頼と違って続いていく契約ですので、そこは書面で確かめておいてください。

    登記が終わってからでは変えにくいものもあります

    資本金の額や決算期は、設立の時点で決まります。設立後に税理士へ相談したときに「決算期は別の月のほうがよかった」という話になっても、変えるには手続きが要ります。設立後の顧問を付けるつもりがあるなら、登記の前に一度相談しておくという選び方もあります。

    出典C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁)

    切り替えるときに、相手へ伝えること

    進み具合を三つに分けて伝えることを表したイラスト
    決めたこと、作ったもの、まだのこと。この三つです。

    最後に、実際に相談するときの伝え方です。難しいことはありません。進み具合を三つに分けて書き出すだけで、話が早くなります。

    1. 決めたこと:商号、本店の所在地、事業目的、資本金の額、役員の構成、決算期、会社の形態(株式会社か合同会社か)。
    2. 作ったもの:定款の案文があるか、紙で確定させたか、認証を受けたか。出資金の払込を済ませたか。
    3. まだのこと:ここから先で、何を頼みたいか。登記までなのか、税務の届出まで含めるのか、社会保険まで入るのか。

    この三つを伝えると、依頼を受ける側は引き受ける範囲をすぐに判断できます。範囲が決まれば見積もりが出ますし、複数の事務所から取れば比べることもできます。逆に、進み具合が曖昧なままだと、見積もりも幅を持った言い方になりがちです。

    それから、急いでいるかどうかも最初に伝えてください。取引先との契約や許認可の申請に間に合わせたい、といった事情があるなら、専門家の側の段取りの組み方が変わります。会社設立の依頼では、期限があるかどうかで進め方が大きく変わります。

    聞かれて困りやすいのは「会社設立をいつまでに終えたいか」です。希望の時期があるなら、その理由もあわせて伝えてください。理由が分かると、間に合う進め方を提案してもらえることがあります。

    資格の確認も、この段階で

    途中から依頼する相手であっても、登録された有資格者かどうかは確かめられます。日本司法書士会連合会、日本行政書士会連合会、日本税理士会連合会が会員の検索を公開しています。特定の事務所を勧めるものではなく、どの依頼先でも共通して使える確認の手段です。

    出典税理士に相談する(日本税理士会連合会)

    まとめ|切り替えは自由、ただし早いほど楽です

    会社設立の切り替えについてまとめたイラスト
    切り替えは自由です。ただし早いほど楽になります。

    ここまでの内容をまとめます。会社設立を途中まで自分で進めた方に向けた要点です。

    • 切り替え点は複数ある定款から、認証から、登記から、設立後の届出から。段ごとに担当できる専門家が変わります。
    • 書類より、決めたことが生きる作った書類は確認のやり直しになるのが普通です。生きるのは、決めたことが固まっている点です。
    • 紙の定款の前に相談紙で確定させると電子定款にするには作り直しになります。収入印紙4万円の差が出ます。
    • 認証の前に相談定款の認証を受けたあとで内容を直すのは手間です。順番は戻せません。
    • 実費は変わらない誰に依頼しても自分で手続きしても同じ額です。動くのは報酬の部分だけです。
    • 範囲を決めてから見積もりをどこからどこまでを頼むのかが決まらないと、金額は比べられません。

    部分的な依頼を断られることもあります

    会社設立を一式で受ける形にしている事務所では、途中からの依頼を扱っていないことがあります。断られても、それは相性の問題です。途中からの依頼を受けている事務所もありますので、最初の問い合わせのときに「ここまで自分で進めています」と伝えて確かめてください。

    制度も運用も変わります。この記事は2026年9月1日時点で確認した内容です。実際の可否や金額、切り替えの段取りは事務所によって異なりますので、各セクションに添えた出典で最新の内容を確かめたうえで、依頼先の専門家に直接ご相談ください。

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    切り替えは、早いほど楽です

    会社設立の途中から依頼する形は、珍しいことではありません。事務所の側も慣れています。ただ、切り替えは早いほど段取りが楽です。定款の認証まで済ませてから内容の問題に気づくより、認証の前に見てもらったほうが、直す手間も費用も小さくて済みます。

    そして、途中まで自分で進めたことは無駄になりません。商号・事業目的・資本金・役員・本店をすでに決めてあるという状態は、依頼を受ける側にとってはありがたい材料です。打ち合わせが短くなり、確認だけで前に進みます。

    迷っているなら、まず今どこまで進んでいるかを書き出してから相談してみてください。決めたこと、作った書類、まだ手を付けていないこと。この三つが分かれば、見積もりの範囲もはっきりします。範囲がはっきりすれば、金額の話も比べやすくなります。実際の可否と金額は、それぞれの専門家に確かめてください。

    この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。

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