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「会社設立は税理士に丸ごとお任せ」と読める案内は、どう読めばいいのか

公開 約11分(6,466字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

「会社設立は税理士に丸ごとお任せ」と読める案内は、どう読めばいいのか

この記事は、こういう方に向けて書いています

  • 税理士事務所の案内に「会社設立は設立から丸ごとお任せください」と書いてあるのを見て、本当に登記まで税理士がやってくれるのかが引っかかっている方。
  • 「税理士は登記できないと聞いたけれど、それならこの案内は何なのか」と、書いてあることと法律の説明が食い違って見えて止まっている方。
  • この記事は、そういう案内を出している事務所を疑ってかかるためのものではありません。むしろ逆で、その案内がどういう仕組みで成り立っているのかを先に知っておくと、依頼のときに何を聞けばよいかが分かり、余計な不安が消えます。書くのは仕組みの読み方と、確認の言い回しと、見積書の見どころまでです。特定の事務所やサービスを比べたり順位を付けたりはしません。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

「設立から丸ごとお任せ」という案内は、何を指しているのか

「丸ごとお任せ」という案内の中身を分解して読むことを表したイラスト
「引き受けます」と「自分の資格で行います」は別のことです。

会社設立の依頼先を探していると、税理士事務所のページで「設立から設立後まで、丸ごとお任せください」といった案内をよく見かけます。同じような言葉で「ワンストップ」「まるごと代行」「すべておまかせ」と書かれていることもあります。

こうした案内を読むときに、まず分けて考えたいことがあります。「引き受けます」と「自分の資格で行います」は別のことだという点です。会社設立には登記・税務・社会保険・許認可という性質の違う手続きが混ざっていて、これをひとつの資格でまかなうことはできません。案内が指しているのは、たいてい依頼の窓口をひとつにするという意味です。

会社設立の手続きと、業として担当できる資格
会社設立でやること 業として担当できる資格 税理士が自分で行えるか
設立登記の申請の代理 司法書士・弁護士 行えない
登記申請書と添付書類の作成 司法書士・弁護士 行えない
定款の作成・認証手続き 司法書士・行政書士・弁護士 行えない
法人設立届出書などの税務の届出 税理士 行える
設立後の記帳・決算・申告 税理士 行える
健康保険・厚生年金の新規適用届 社会保険労務士 行えない
営業のための許認可の申請 行政書士 行えない

確認日 2026年9月1日。ここでの「行える・行えない」は、報酬をもらって業として行えるかどうかの意味です。本人が自分で手続きするのは資格がなくてもできます。

表のとおり、税理士が自分の資格で行えるのは税務の部分だけです。それでも「丸ごと」と書けるのは、残りを担当できる専門家と組んでいるからです。次のセクションから、その組み方を順に見ていきます。

出典会社設立で代行できる手続きとは?専門家に依頼するメリット・デメリットと選び方(freee) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。

税理士が自分の資格で行えるのは、税務の三つだけです

税理士法が定める三つの業務に登記が含まれないことを表したイラスト
三つとも「租税に関し」の枠の中。登記はここに入りません。

案内の読み方を決める前に、税理士という資格が法律上どこまでを持っているのかを確かめておきます。税理士法2条1項が定めている業務は三つで、そのどれにも登記は入っていません

税理士法2条1項が定める税務代理・税務書類の作成・税務相談の三つを並べたカード

三つとも「租税に関し」という枠の中にあります。登記は租税の手続きではありませんから、どう読んでもここには入ってきません。会社設立の依頼を税理士に出したときに、税理士自身が動けるのは、法人設立届出書などの税務の届出と、設立の設計についての税務相談までということになります。

  • 税理士が会社設立で自分の資格で行うこと資本金の額・決算期・役員報酬の決め方の相談、法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書の作成と提出。
  • 税理士が行えないこと登記申請書と添付書類の作成、設立登記の申請の代理。社会保険・労働保険の届出代行も税理士の業務ではありません。
  • それでも「丸ごと」が成り立つ理由行えない部分を、その資格を持つ専門家が担当しているからです。依頼の窓口が税理士事務所であることと、手続きの担当が誰かは別の話です。

出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…

では登記は誰が担当しているのか。提携する司法書士です

税理士事務所を窓口に、登記を司法書士が担当する分担の形を表したイラスト
窓口はひとつでも、登記の段では司法書士が動いています。

結論から書くと、税理士事務所が会社設立を丸ごと引き受けている場合、登記は提携する司法書士(または事務所内の司法書士)が担当しています。依頼を受ける窓口が税理士事務所で、登記の申請そのものは司法書士が行う、という形です。

この形は、法律上まったく問題のないものです

複数の専門家が分担して一件の会社設立を進めることは、ごくふつうに行われています。司法書士が登記を担当している以上、そこに違法性はありません。「提携」と書いてあるのを見て身構える必要はなく、むしろ書いてあるほうが分かりやすい案内だといえます。

窓口が税理士事務所の場合に、段ごとに税理士と司法書士が分担する流れを示した図

この流れを知っておくと、案内の言葉に振り回されなくなります。「丸ごと」と書いてあっても書いていなくても、登記の段では必ず司法書士が出てくるからです。逆にいえば、司法書士が出てこない説明をされたときだけ、確かめる理由があります。

依頼する側から見ると、この形の実際的な意味は「説明を一度で済ませられる」ということです。商号や資本金、役員構成といった情報は、登記にも税務にも共通して要ります。窓口がひとつなら、同じ話を二か所でしなくて済みます。

出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)

税理士が登記申請書類を作成すれば、非司法書士行為になります

登記申請書類の作成が税理士の資格の外にあることを表したイラスト
越えられない線があるので、担当者が別にいるはずです。

ここまで書いてきた形が成り立つのは、あくまで司法書士が登記を担当しているからです。もし税理士が自分で登記申請書や添付書類を作成し、それを業として行えば、司法書士法の禁止規定に触れます。

司法書士法73条1項は「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない」と定めています。3条1項2号には「法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること」が挙がっているので、登記申請書類の作成はここに含まれます。違反した場合の罰則は同法78条1項で、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

「懲役」と書いてある解説は、古い条文を写しています

2025年6月1日から、刑法の改正にともなって「懲役」は「拘禁刑」に置き換わりました。罰則に触れている記事を読むときは、確認した日付が書いてあるかどうかを見てください。日付のない解説は、いつの条文を写したものか分かりません。

会社設立の各書類について税理士が業として作成できるかを示した表

大事なのは、これが事務所の姿勢の問題ではなく法律の線だということです。どれほど会社設立に詳しい税理士でも、この線は越えられません。ですから案内の文面を読むときも、「丁寧そうか」ではなく「登記の担当者が別にいるか」という一点で見れば足ります。

なお、無資格の代行業者についても同じ線が引かれています。手続きの案内やツールの操作サポート、書類を本人が作るための支援は行えますが、登記申請書類を業として作成することはできません。会社設立の依頼先を比べるときは、士業か否かにかかわらず、この線を基準にすると迷いません。

出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

依頼するときに確かめる言い回し。「登記はどなたが担当されますか」

会社設立の依頼前に確認する言い回しを表したイラスト
聞き方をひとつ決めておくと、話が早くなります。

ここまでを踏まえると、会社設立を税理士事務所に依頼するときに確かめることは、そう多くありません。ひとつだけ覚えておくとすれば、この言い回しです。

「登記はどなたが担当されますか」

この一言で足ります。返ってくるのは「提携している司法書士の先生が担当します」「うちのグループの司法書士法人が行います」といった答えのはずです。名前まで聞く必要はありませんが、司法書士が担当することだけは確かめておくと、あとで齟齬が起きません。

この質問は、相手を疑うためのものではありません。会社設立の依頼では、どこまでを引き受けてもらえるのかを最初にそろえておくことが、いちばんの手間の削減になります。専門家の側も、自分の資格で扱える範囲は当たり前に説明できます。身構えずに聞いて構いません。

会社設立を依頼する前に聞いておくとよいことを並べたチェックリスト

もし「登記も当事務所で行います」という答えが返ってきたら、それは司法書士が事務所の中にいるという意味であることがほとんどです。念のため、司法書士が担当するのかどうかをもう一段だけ確かめてください。士業は全国団体の会員検索で登録を確認できるので、気になる場合はそちらでも裏を取れます。

出典会社設立は誰に頼む?司法書士・行政書士・税理士に依頼できること(マネーフォワード) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。

見積書で、実費と報酬、それぞれの専門家の報酬が分かれているか

見積書で実費と各専門家の報酬が分かれているかを確かめることを表したイラスト
金額より先に、内訳の形を見てください。

会社設立の費用は、実費(法定費用)と報酬に分かれます。実費は登録免許税や定款認証の手数料などで、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。差が出るのは報酬の側だけです。

会社設立の費用が実費と報酬に分かれることを示した図

見積書を見るときに確かめるのは、金額そのものよりこの二つが分かれて書いてあるかです。ひとまとめの総額だけが書かれていると、実費がいくらで報酬がいくらなのかが読めません。そうなると、他の依頼先と比べようとしても、比べる軸がそろいません。

  • 実費と報酬が分かれているか分かれていれば、報酬の部分だけを他と比べられます。実費は共通なので、比較の対象になりません。
  • 誰の報酬なのかが分かるか司法書士の報酬と税理士の報酬が別の行になっているかを見ます。一行にまとまっていても違法ではありませんが、内訳を聞けば教えてもらえます。
  • 月額が別にあるか設立時の金額と、設立後の顧問料は別の話です。設立サポートの金額だけで比べると、総額が見えません。
  • 含まれない項目があるか許認可、社会保険の届出、登記事項証明書の取得などが別料金になっていることがあります。
「0円」と書かれているときも、読み方は同じです

会社設立の案内で「設立手数料0円」と出ている場合、確かめるのは誰の報酬が0円なのかです。多くは税理士の設立サポートの報酬を指していて、登記の実費と司法書士の報酬は別に必要です。表示に条件が付くこと自体は珍しくありませんので、条件が同じ画面に書いてあるかどうかを見てください。

出典景品表示法(消費者庁) 「最安」「No.1」などの表示を扱うときの根拠。

窓口がひとつであることには、はっきりした利点があります

窓口がひとつであることの利点を表したイラスト
分担していることと、頼みやすいことは両立します。

ここまで「中で誰が担当しているか」を確かめる話を続けてきましたが、分担していること自体は欠点ではありません。むしろ、依頼する側にとっては窓口がひとつであるほうが楽になる場面が多くあります。最後にその側から書いておきます。

窓口をひとつにする場合と自分で分けて依頼する場合を五つの観点で比べた図

会社設立は、多くの方にとって一度きりの手続きです。誰に何を聞けばよいのかを知らないところから始まるので、そこを引き受けてくれる相手がいることには実際の価値があります。報酬の差だけを見て窓口を分けた結果、自分で日程を調整して回ることになった、というのはよくある話です。

  • 時間を優先するなら窓口がひとつの形が向いています。説明も日程調整も一度で済みます。
  • 費用の内訳を細かく見たいなら分けて依頼するほうが、それぞれの報酬をそのまま比べられます。
  • 設立後の顧問を前提にしているならその相手に会社設立から入ってもらうほうが、引き継ぎの手間がありません。
  • 登記だけで足りるなら司法書士に直接依頼する形がいちばん短くなります。税理士を通す必要はありません。

どの形を選んでも、登記は司法書士、税務は税理士という担当の割り振りは変わりません。変わるのは、そこに至るまでの手間の置き場所だけです。会社設立の依頼先を決めるときは、報酬と手間のどちらを自分が引き受けたいかで考えると、迷いが減ります。

出典会社設立手続きは司法書士に依頼できる?法人設立の相談先の選び方(弥生) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。

まとめ|案内の言葉ではなく、担当者と内訳を見る

案内の言葉ではなく担当者と内訳を確かめることを表したイラスト
確かめるのは三つ。そのあとは比べるだけです。

「会社設立は税理士に丸ごと頼める」と読める案内について、ここまでの内容をまとめます。

  • 案内は窓口の話をしている「丸ごと」は依頼の窓口をひとつにするという意味で、ひとつの資格で全部行うという意味ではありません。
  • 税理士が行えるのは税務の三つ税理士法2条1項の税務代理・税務書類の作成・税務相談。登記はここに入りません。
  • 登記は司法書士が担当している提携でも事務所内でも構いません。この形そのものに問題はありません。
  • 税理士が登記書類を作れば線を越える司法書士法73条1項に触れ、78条1項の罰則がかかります。だから担当は必ず分かれています。
  • 確認は「登記はどなたが担当されますか」相手を試す質問ではなく、依頼の範囲をそろえるための質問です。
  • 見積書は内訳の形を見る実費と報酬、それぞれの専門家の報酬が分かれているか。実費は誰に依頼しても同じ額です。

それでも不安が残るときの確かめ方

士業の登録は、各全国団体の会員検索で確かめられます。税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで、登録の内容に加えて懲戒処分の有無まで確認できます。司法書士は日本司法書士会連合会の検索から確かめられます。どちらも公的な団体の提供するもので、特定の事務所を勧めるものではありません。

それから、会社設立を自分で手続きするという道も残っています。法務局が申請書の様式と記載例を公開していますし、税務の届出も国税庁のページに案内があります。本人申請は合法で、時間をかけられるなら現実的な選択肢です。依頼するかどうかは、時間と手間をどこに置きたいかで決めてください。

案内の言葉づかいは事務所ごとに違いますが、中で起きていることは同じです。窓口が誰であっても、登記は司法書士、税務は税理士。そこさえ押さえておけば、「丸ごと」と書かれた案内を落ち着いて読めるようになります。条文も制度も改正されますので、実際に依頼を決めるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。

出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。

疑うためではなく、話を早くするために確かめてください

「丸ごとお任せ」という案内は、依頼する側の手間を減らすための言い方です。中で複数の専門家が分担していることを、いちいち説明しないだけのことで、隠しているわけではありません。ですから、聞けばふつうに答えが返ってきます。「登記はどなたが担当されますか」は、相手を試す質問ではなく、範囲をそろえるための質問です。

確かめるべきことは三つだけでした。登記を司法書士が担当すること。見積書で実費と各専門家の報酬が分かれていること。依頼の範囲がどこまでかということ。この三つが分かれば、案内の言葉づかいがどうであれ、比べる材料はそろいます。

そして、窓口がひとつであることは、それ自体が価値のある形です。会社設立は一度きりの手続きで、依頼する側は誰に何を聞けばよいのかを知らないところから始めます。そこを引き受けてくれる相手がいるなら、報酬の差だけで判断しないほうが結果的に楽になることもあります。判断に迷うところは、見積もりを取ったうえで、それぞれの専門家に直接ご相談ください。

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