会社設立を税理士と司法書士の両方に依頼するときの進め方と、費用の見方
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立で税理士と司法書士の両方に依頼することになりそうで、どちらから声をかければよいのか、順番が決めきれずにいる方。
- 二人に頼むと同じような費用を二重に払うことにならないかが気になっている方。役割が違うので重複はしませんが、その理由まで確かめてから進めたい方。
- この記事では、二人の専門家に会社設立を依頼するときの進め方と、報酬をどこまで数字で確かめられるのかを書きます。司法書士には公表された報酬の統計があり、税理士にはありません。その差も含めて、見積書のどこを見ればよいのかまで並べます。特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしません。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
どちらから声をかけるか。設立後に顧問を付けるかで決まります

会社設立で税理士と司法書士の両方に関わってもらう場合、二人に同時に声をかける必要はありません。どちらか一方に連絡すれば、そこから先はつながることがほとんどです。問題は、その一方をどちらにするかです。
判断の軸はひとつで足ります。設立したあとに顧問を付けるつもりがあるかどうかです。付けるつもりなら税理士から、登記だけで済ませるつもりなら司法書士から。理由は次のセクションで見る手続きの順番にあります。

- 税理士から声をかける場合設立の設計から相談できます。資本金と決算期は登記に載るので、あとから変えるには手間がかかります。その相談を先にできるのが利点です。
- 司法書士から声をかける場合会社を成立させることに集中できます。登記が通ってから、必要になった時点で税理士を探す形になります。
- どちらでも変わらないこと登記は司法書士、税務は税理士という担当の割り振りは、どちらから入っても同じです。順番が変わるだけで、関わる専門家の数も顔ぶれも変わりません。
なお、会社設立を扱い慣れた事務所であれば、依頼する側が二人の専門家を自分で探して回る必要はありません。声をかけた先が、もう一方を連れてきてくれる形が一般的です。確かめておくとよいのは、その受け渡しをどちらが引き受けるのかという点だけです。
出典会社設立は誰に頼む?司法書士・行政書士・税理士に依頼できること(マネーフォワード) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
依頼の順番と、それぞれが担当する範囲

順番を決めているのは、依頼する側でも専門家の側でもなく、手続きのほうです。会社設立には前の段が終わらないと次に進めない箇所があり、税理士と司法書士が動く時期は、そこに合わせて自然に分かれます。

1段目と2段目のあいだに、はっきりした境目があります。定款に書いた瞬間から、資本金と決算期は動かしにくくなるからです。税理士に相談する意味がいちばん大きいのはここで、逆にいえば、この段を過ぎてから税理士を探しても、設計の相談としては間に合わなくなります。
5段目から7段目へは、登記が終わるのを待つ形になります。税務の届出には登記事項証明書や定款の写しが要るためで、税理士は登記が通るまで実務としては動けません。両方に依頼していても、二人が同時に手を動かす期間はほとんどない、と考えておくと予定が立てやすくなります。
法務局は商業・法人登記の申請書様式と記載例を公開していますし、税務の届出も国税庁のページに案内があります。本人申請は合法で、時間をかけられるなら現実的な選択肢です。この記事で書いているのは、報酬をもらって業として代わりに行ってもらう場合の話です。
出典商業・法人登記の申請書様式(法務局)
司法書士の報酬は、公表されている統計の幅で見る

会社設立の報酬は事務所によって差があるので、単一の金額を相場として示すことはできません。ただし司法書士については、日本司法書士会連合会が公表しているアンケートがあるため、幅としてなら確かめられます。

この数値を読むときに、必ずいっしょに見てほしいのが設例の前提です。アンケートが尋ねているのは「発起人2名、資本金の額500万円の株式会社の発起設立による設立登記手続の代理業務を受任し、定款、議事録、その他証明書等のすべての書類を作成し、定款認証手続及び登記申請の代理をした場合」で、有効回答932件に対する平均が107,887円です。前提が変われば金額も変わります。
現行のアンケートに、地区別の低額者・平均・高額者を並べた表はありません。「地域によって相場が違う」という説明を見かけますが、いまの一次情報からは裏が取れません。また、合同会社の設立登記についての設例も別に用意されていないため、株式会社と合同会社を分けた数値としては書けません。
会社設立の依頼を比べるときは、この幅を目安の枠として使ってください。枠から大きく外れているから駄目だという話ではなく、外れているなら理由が説明されるはずだ、という程度の使い方が適しています。理由としてよくあるのは、役員の人数、電子定款への対応、書類の作成をどこまで含むかといった範囲の差です。専門家の側から説明があるはずの部分です。
出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…
税理士には、公的な報酬の統計がありません

いっぽう税理士については、全国団体が公表している報酬の統計がありません。司法書士や行政書士のような公開されたアンケートや調査が存在しないため、「税理士報酬の相場は◯円」という説明には、公的な裏づけがないということになります。
かつて税理士の報酬には規程がありましたが、現在は各事務所が自由に決める形になっています。ですから会社設立の設立サポート料も、設立後の顧問料も、それぞれの事務所が公開している金額を見比べるのが唯一の方法です。単一の相場を探しても見つかりません。
- 設立サポートの報酬会社設立に関する相談と税務の届出をまとめた名目で提示されることが多い部分です。顧問契約と組み合わせて金額が変わることがあります。
- 顧問料(月額)事業の規模、記帳を自社で行うか任せるか、訪問の頻度、決算料を別にするかどうかで変わります。ここが総額に一番効きます。
- 決算・申告の報酬月額と別建てになっていることがあります。年1回のものなので、月額だけを見ていると見落とします。
- 会社設立時にだけ発生するもの設立の設計相談や届出の作成。設立後は発生しません。ここと顧問料を分けて考えると、比べやすくなります。

統計がないことは、依頼する側にとって不利な話ばかりではありません。比べる材料が見積書しかないと分かっていれば、最初から複数から取って並べるという行動になります。相場をあてにして一か所だけで決めるより、複数の専門家に当たるほうが結果としては確かな進め方になります。
出典税理士に相談する(日本税理士会連合会)
実費と報酬は分かれる。実費は誰に依頼しても同じ額です

会社設立の費用は、実費(法定費用)と報酬に分かれます。ここを分けておかないと、二人の専門家に会社設立を依頼したときの金額が読めません。実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。

両方に依頼する場合、見積書が二枚になることも、一枚にまとまることもあります。どちらの形でも、確かめるのは同じです。実費と報酬が分かれているかと、誰の報酬なのかが読めるかの二点だけです。
紙の定款には収入印紙が4万円かかりますが、電子定款なら不要です。司法書士や行政書士に定款の作成を依頼すると電子定款になるのが通常なので、報酬を払っても実費が下がるぶん、総額の印象が変わることがあります。見積もりを取るときに、電子定款に対応しているかどうかを聞いておくとよい項目です。
なお、合同会社には定款の認証が要りません。会社の種類によって実費の構成が変わるので、株式会社と合同会社で見積もりを比べるときは、そこも合わせて見てください。実費が違うのは会社の種類の差であって、依頼先の差ではありません。
出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。
二重に払うことにならないか。役割が違うので重複はしません

両方に依頼すると聞いて気になるのが、同じような費用を二度払うことにならないかという点だと思います。結論としては、二人が担当する仕事は重なっていないので、同じ仕事への二重払いにはなりません。

表のとおり、丸が二つ並ぶ行はありません。担当できる資格が法律で分かれている以上、仕事も重ならないからです。ですから「二人の専門家に会社設立を依頼すると割高になる」というのは、正確には「依頼する範囲が広いぶん総額が増える」という意味になります。
ただし、注意しておくとよい点がひとつあります。窓口をひとつにまとめた場合、手数料の扱いが変わることがあるという点です。税理士事務所が窓口になり、司法書士の報酬もまとめて請求する形をとると、見積書の上では一行にまとまり、内訳が見えにくくなります。取次ぎや事務の手数料が加わっている場合もあります。
- 一枚の見積書にまとまっている場合内訳を聞けば教えてもらえます。司法書士の報酬がいくらで、税理士の報酬がいくらかを確かめておくと、他と比べられる形になります。
- それぞれから見積書を取る場合報酬をそのまま比べられます。そのかわり、日程の調整や説明を自分で二回する手間が増えます。
- どちらでも共通すること実費は同じ額です。差が出るのは報酬の側だけなので、実費を除いた金額で並べると比べやすくなります。
会社設立の依頼を検討するときは、「二重払いになるかどうか」ではなく「依頼する範囲がどこまでか」で考えてください。範囲がそろえば、複数の見積書は同じ土俵に載ります。
出典会社設立手続きは司法書士に依頼できる?法人設立の相談先の選び方(弥生) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
「設立手数料0円」が顧問契約とセットになっている場合の見方

会社設立の案内でよく見かける「設立手数料0円」「設立費用0円」という表示について書いておきます。これは多くの場合、税理士事務所が顧問契約を前提に、自分の設立サポートの報酬を無料にしている形です。
この形そのものが問題だという話ではありません。設立時の負担を軽くして、設立後の顧問契約で続けていくという組み立ては、ごくふつうに行われています。確かめるべきなのは、何が0円で、何が0円ではないのかです。

0円と書かれた依頼先と、設立サポートに報酬がかかる依頼先を比べるときは、同じ期間で総額を出して並べてください。たとえば1年分なら、実費+司法書士の報酬+設立サポートの報酬+月額×12か月+決算・申告の報酬、という形でそろえます。設立時の金額だけを見ると、比べたことになりません。
「0円」「無料」という表示は、景品表示法の関係でも、条件が同じ画面に分かりやすく書かれているかが要点になります。条件が離れた場所に小さく書かれていたり、そもそも書かれていなかったりする場合は、会社設立の依頼を決める前に聞いて確かめてください。専門家に直接たずねれば答えてもらえるはずのことです。
なお、設立サポートが0円であっても、登記の実費と司法書士の報酬は必要です。会社設立が本当に無料で終わることはありません。ここは実費の性質からくる話で、どの依頼先を選んでも変わりません。
出典会社設立費用が0円で依頼できる税理士の注意点(税理士コンシェルジュ) 0円モデルの構造を説明する補助として使う。個別事務所の推奨には使わない。
まとめ|順番は顧問の有無で、費用は総額で決める

会社設立を税理士と司法書士の両方に依頼するときの進め方と費用の見方を、ここまでの内容からまとめます。
- 声をかける順番設立後に顧問を付けるなら税理士から、登記だけなら司法書士から。資本金と決算期は登記の前に決まるので、設計の相談は早いほうが効きます。
- 二人が動く時期税務の届出には登記事項証明書が要るため、税理士は登記が通ってから動きます。同時に手を動かす期間はほとんどありません。
- 司法書士の報酬日本司法書士会連合会のアンケート(2024年3月実施)で、設例に対する平均107,887円(有効回答932件)。設例の前提を必ず併記して読むこと。
- 税理士の報酬公的な統計はありません。各事務所が公開している金額と、取った見積書を並べて比べるしかありません。
- 実費と報酬実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。比べる意味があるのは報酬の側だけです。
- 二重払いになるか仕事が重ならないので、なりません。ただし窓口をまとめると内訳が見えにくくなることがあります。
- 設立手数料0円誰の報酬が0円か、登記の実費と司法書士の報酬は別か、月額と最低契約期間はどうか。総額をそろえて比べます。
見積もりを取るときに、そろえておくこと
複数の依頼先から見積書を取るときは、同じ条件を伝えることが一番効きます。会社の種類(株式会社か合同会社か)、資本金の額、発起人と役員の人数、決算期、設立の希望時期、設立後に顧問を付けるかどうか。この六つがそろっていれば、返ってくる金額は比べられる形になります。
そのうえで、依頼先が登録された有資格者かどうかは、各士業の全国団体の会員検索で確かめられます。司法書士は日本司法書士会連合会の検索から、税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトから確認できます。どの専門家に依頼する場合にも共通して使える手段で、特定の事務所を勧めるものではありません。
会社設立は一度きりの手続きですが、税理士との付き合いはそのあとも続きます。設立時の金額だけで決めないというのが、両方に依頼する場合のいちばん大事な点かもしれません。制度も統計も更新されますので、実際に判断されるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。
出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。
総額で並べれば、比べられる形になります
税理士と司法書士の両方に会社設立を依頼するとき、決めることは実はそう多くありません。どちらから声をかけるかと、費用をどの単位で比べるかの二つです。前者は設立後に顧問を付けるかどうかで決まり、後者は実費と報酬を分け、月額と契約期間まで足して総額にすれば決まります。
報酬について確かなことを言える範囲は限られています。司法書士は公表されたアンケートの設例と平均まで、税理士は公的な統計がないので各事務所の提示額まで。その範囲を超えて「相場はいくら」と書いてある説明には、出どころを確かめる価値があります。幅で見て、見積もりを取って、総額で並べる。この三段だけで十分に比べられます。
そして、会社設立の手続きを自分で進める道も残っています。本人申請は合法で、時間をかけられるなら現実的な選択肢です。依頼するかどうかは、時間と手間をどこに置きたいかで決めてください。個別の可否や金額の妥当性については、見積もりを取ったうえで、それぞれの専門家に直接ご相談ください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。