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会社設立は自分でやるか、依頼するか|どちらも正しい選択肢として、分かれ目だけを並べます

公開 約11分(6,285字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

会社設立は自分でやるか、依頼するか|どちらも正しい選択肢として、分かれ目だけを並べます

この記事は、こういう方に向けて書いています

  • 会社設立を自分でやるか、専門家に依頼するかで迷っていて、会社設立の判断の材料をそろえたい方。
  • 会社設立について「自分でやると失敗する」と書いてある記事と「意外と簡単」と書いてある記事の両方を読んで、どちらを信じればいいのか分からなくなっている方。
  • この記事では、自分で手続きする方法そのものは書きません。申請書の書き方や手順は、法務局が様式と記載例を公開していますし、専門にあつかっているサイトもあります。ここで書くのは、会社設立をどちらのやり方で進めるかの分かれ目だけです。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

まず前提。自分で手続きするのは合法です

本人が会社設立の手続きをすることが合法であることを表したイラスト
本人申請は合法です。まずここを前提にします。

会社設立の依頼先を調べていると、士業の独占業務という言葉に何度も行き当たります。登記の申請を代理できるのは司法書士と弁護士だけ、税務は税理士だけ、といった決まりのことです。これを読んで「資格がないと会社設立の手続きはできないのか」と思われるかもしれませんが、そうではありません。

独占業務の決まりは、他人の依頼を受け、報酬をもらって、業として行う場合に働きます。ご自身が、ご自身の会社をつくるために手続きをすることは、この決まりの外にあります。これを本人申請といいます。会社設立でも同じです。

司法書士法 73条1項

司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

出典:司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

条文が禁じているのは「業務を行う」ことです。会社設立の登記を自分の会社のために自分で申請するのは、業として行うことにあたりません。実際、法務局は商業・法人登記の申請書の様式と記載例を公開していますし、登記手続案内という相談の窓口も設けています。本人が申請することが想定されているということです。

士業の独占業務の決まりが働く場面と働かない場面を分けた図
ですから、この記事は「どちらが正しいか」を書きません

自分で手続きするのも、専門家に依頼するのも、どちらも正しい選択です。「自分でやると危険」といった書き方はしません。分かれ目だけを並べますので、ご自身がどちら側かを確かめてください。

出典商業・法人登記の申請書様式(法務局)

分かれ目は四つ。順に見ていきます

四つの分かれ目を表したイラスト
時間・許認可・複雑さ・設立後の顧問。この四つで見ます。

会社設立を自分でやるか依頼するかは、次の四つを見れば、おおよそどちら寄りかが決まります。ひとつずつ、あとの章で見ていきます。

  • 時間をかけられるか調べながら進める時間を取れるか。手続きそのものより、調べる時間のほうが長くなります。急いで会社設立を終える必要があるかどうかも効いてきます。
  • 許認可が要る業種か建設業や飲食業のように、営業に行政の許可が要る業種かどうか。要るなら、定款の事業目的の書き方から効いてきます。
  • 会社の中身が複雑か発起人や役員が複数いるか、出資の割合に取り決めがあるか、現物出資があるか。人数と取り決めが増えるほど、会社設立の書類の数と難しさが上がります。
  • 設立後に顧問を付けるか記帳と申告を自分でやるつもりか、誰かに任せるつもりか。任せるつもりなら、設立の相談も同じ相手にできます。
自分でやるか依頼するかを分ける項目を並べたチェックリスト

先に申し上げておくと、この四つはどれかひとつで決まるものではありません。時間は取れるけれど許認可が要る、というように、混ざるのが普通です。混ざったときは、会社設立の途中まで自分でやって、そこから先を依頼するという進め方も選べます。

出典株式会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)

一つ目。時間をかけられるかどうか

調べる時間がかかることを表したイラスト
手続きより、調べる時間のほうが長くなります。

自分で会社設立を進める場合、いちばん多く取られるのは調べる時間です。書類を書く作業そのものより、「この欄に何を書けばいいのか」を確かめる時間のほうが長くなります。会社設立がはじめての方であれば、当然そうなります。

しかも、調べるべきことは一か所にまとまっていません。定款の内容は会社法、認証の手続きは公証役場、登記の様式は法務局、設立後の届出は国税庁と日本年金機構、というように、窓口ごとに分かれています。

  • 定款の作成と認証
    株式会社は公証役場での認証が必要です。合同会社は不要です。電子定款にするかどうかで、収入印紙4万円の要否が変わります。
  • 設立登記の申請
    本店の所在地を管轄する法務局へ申請します。法務局が様式と記載例を公開しています。完全オンライン申請にも対応しています。
  • 設立後の税務の届出
    法人設立届出書は設立の日以後2か月以内。青色申告の承認申請にも期限があります。都道府県と市区町村にも届出が要ります。
  • 社会保険の届出
    法人は代表者ひとりでも健康保険と厚生年金の対象になります。年金事務所へ新規適用の届出をします。
  • 急いでいるなら、依頼したほうが早いことが多いです

    設立の期限が決まっている場合、たとえば取引先との契約や許認可の申請に間に合わせたい場合は、依頼したほうが結果的に早いことが多くなります。書類の不備で差し戻されると、そのぶん日数が延びるためです。慣れている専門家であれば、そこでつまずく確率が下がります。

    逆に、期限に余裕があって、調べながら進めるのが苦にならない方であれば、自分でやるのは十分に現実的です。会社設立にかける時間を報酬に換えるかどうか、という話だと考えると分かりやすいと思います。

    出典完全オンライン申請による法人設立登記の24時間以内処理について(法務省)

    二つ目。営業に許認可が要る業種かどうか

    許認可が必要な業種を表したイラスト
    許認可が要るなら、定款の段階から相談する意味があります。

    四つのうち、分かれ目としていちばん大きいのがここだと思います。始める事業に行政の許可や登録が必要な場合、会社設立の定款をつくる段階から気をつけることが出てきます。

    具体的には、定款に書く事業目的です。許認可の申請では、会社の事業目的にその事業が書かれていることが求められることがあります。会社設立のときに書いておかなかった場合、あとから定款を変更して、目的の変更登記をすることになります。変更登記には登録免許税がかかります。

    許認可の要否によって会社設立の進め方が分かれることを示した図

    許認可が要る業種の例としては、建設業、飲食業、古物商、産業廃棄物の収集運搬、旅行業、人材紹介、運送業などがあります。ただし同じ業種でも、扱う内容によって要否が変わることがありますので、当サイトの記載だけで判断せず、所管の窓口にご確認ください。

    許認可の申請そのものは行政書士の分野です

    官公署に提出する許認可の申請書類の作成と提出代理は、行政書士の業務です。定款の作成も行政書士に依頼できますので、許認可が要るなら、定款の段階から同じ専門家に相談できるという利点があります。登記は行政書士では扱えないため、そこは司法書士に回ります。

    出典主な許認可窓口(東京商工会議所)

    三つ目。会社の中身が複雑かどうか

    会社の中身が複雑になるほど手続きが重くなることを表したイラスト
    ひとりで、現金出資で始めるのがいちばん簡単な形です。

    会社設立の手続きは、発起人も役員も自分ひとり、出資は全額現金という形が、会社設立ではいちばん簡単です。書類の数も少なく、決めることも少なくて済みます。ここから外れるほど、手続きは重くなります。

    会社の中身によって会社設立の手続きの重さが変わることを示した表

    とくに気をつけたいのが、共同で創業する場合です。出資の割合をどうするか、議決権をどう配分するか、あとで誰かが抜けるときにどうするか。こうした取り決めは、あとから決めようとすると話がまとまりにくくなります。登記の手続きの話というより、当事者どうしの取り決めの話なので、弁護士に相談する場面になることもあります。

    現物出資、つまり現金以外のもの(車や機械、パソコンなど)を出資に充てる場合も、手続きが増えます。金額によっては調査が必要になることもあり、はじめての方が自分で進めるにはハードルが上がるところです。

    株式会社か合同会社かでも変わります

    合同会社は定款の認証が不要です(会社法575条・579条。認証を求める30条は株式会社の定款についての規定です)。公証役場に行く工程がまるごとなくなるぶん、自分で進めやすい形といえます。ただし会社の形をどちらにするかは、手続きの簡単さだけで決める話ではありません。

    出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。

    四つ目。設立後に顧問を付けるかどうか

    設立後の顧問をどうするかを表したイラスト
    設立後を任せるつもりなら、設立の相談も同じ相手にできます。

    見落とされやすいのが四つ目です。会社設立は一度きりの手続きですが、会社ができてからのほうが長く続きます。記帳と申告は毎年ありますし、人を雇えば社会保険の手続きも続きます。

    設立後の記帳と申告を税理士に任せるつもりが最初からあるのなら、設立の相談も同じ税理士にできます。資本金の額や決算期の決め方は、設立の時点で決まってしまい、あとから変えるには手続きが要ります。設立の前に税務の目で見てもらえるのは、そのぶん意味があります。

    設立後を自分でやる場合と税理士に任せる場合を比べた図
    「設立手数料0円」はこの四つ目と関係しています

    税理士事務所が「設立サポート手数料0円」と案内している場合、多くは顧問契約を前提に設立サポート料を無料にし、登記は提携する司法書士が担当するという組み立てです。設立後の顧問を付けるつもりがあるかどうかで、この案内の意味が変わってきます。誰の報酬が0円なのか、登記の実費と司法書士の報酬は別か、顧問契約の月額と最低契約期間はどうか、総額でいくらか。この四つを確かめてください。

    出典税理士に相談する(日本税理士会連合会)

    お金の話。実費は同じで、差が出るのは報酬だけ

    実費と報酬の違いを表したイラスト
    実費は同じ額です。差が出るのは報酬のぶんだけです。

    自分でやるか依頼するかを費用の面から見るときに、会社設立で必ず押さえておきたい前提があります。会社設立の費用は「実費(法定費用)」と「報酬」に分かれ、実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額だということです。

    • 登録免許税株式会社は資本金の額の0.7%で、最低15万円。合同会社は同0.7%で、最低6万円です(登録免許税法 別表第一 第24号(一))。自分でやっても同じです。
    • 定款認証の手数料株式会社だけに必要です。資本金の額等が100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円。100万円未満で一定の条件を満たす場合は1万5,000円。これも自分でやっても同じです。
    • 紙の定款の収入印紙紙で定款を作る場合は4万円かかります。電子定款であれば不要です。ここは自分でやる場合に差が出やすいところです。
    • 専門家の報酬ここだけが、依頼するかどうかで変わる部分です。事務所によって額が異なります。

    つまり、会社設立を自分でやることで浮くのは報酬のぶんだけです。そして報酬がいくらかは、公表されている統計から幅として見ることができます。行政書士については、日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(令和7年度)に「会社設立手続」という項目があり、平均106,371円、最頻値110,000円、最小7,000円、最大550,000円(回答287件)となっています。消費税を含み、立替金は含みません。

    電子定款のことも計算に入れてください

    紙の定款には収入印紙4万円がかかりますが、電子定款であれば不要です。これは印紙税法2条の課税対象が「文書」であり、電磁的記録は文書に含まれないためです。司法書士や行政書士に依頼すると電子定款になるのが通常なので、依頼したときの報酬から4万円を引いて比べると、実際の差が見えやすくなります。自分で電子定款を作る場合は、電子署名の環境を用意する必要があります。

    なお、当サイトでは費用の内訳表や試算は扱っていません。ここに書いたのは、報酬と実費の違いを示すのに必要な範囲だけです。実際の金額は、見積もりを取って確かめてください。

    出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…

    まとめ|二つ以上が依頼寄りなら、一度相談してみる

    自分でやるか依頼するかの判断をまとめたイラスト
    二つ以上が依頼寄りなら、一度相談してみてください。

    会社設立を自分でやるか依頼するかは、どちらが正しいという話ではありません。ここまでの内容を短くまとめます。

    • 本人申請は合法独占業務の決まりは、他人の依頼を受けて報酬をもらい、業として行う場合の話です。法務局は様式と記載例を公開しています。
    • 時間手続きより調べる時間のほうが長くなります。期限が決まっているなら依頼寄りです。
    • 許認可四つのうちいちばん大きい分かれ目です。要るなら、定款の事業目的の書き方から行政書士に相談する価値があります。
    • 複雑さひとりで、現金出資で始めるのがいちばん簡単な形です。共同創業や現物出資があると重くなります。
    • 設立後の顧問任せるつもりなら、設立の相談も同じ税理士にできます。「手数料0円」の案内もここと関係しています。
    • 費用実費は誰がやっても同じ額です。浮くのは報酬のぶんだけ。電子定款の印紙4万円も計算に入れてください。

    二つ以上が依頼寄りに当てはまるようなら、少なくとも一度は専門家に相談してみる価値があります。相談したからといって、その場で依頼を決める必要はありません。見積もりを見てから決められますし、複数から話を聞いて比べるのも普通のことです。

    正式に依頼する前に使える窓口もあります

    会社設立について、いきなり士業の事務所に連絡するのが気が重い場合は、公的な相談の窓口もあります。商工会議所の創業相談、中小企業庁の創業支援、法務局の登記手続案内など、無料で使えるものがあります。ただし窓口では代理までは行いません。書類の作成や提出を頼む段になったら、それぞれの専門家への依頼が必要になります。

    制度も統計も改正・更新されます。この記事は2026年9月1日時点で確認した内容です。実際に判断されるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の可否や見積もりの妥当性については、司法書士・税理士・行政書士といった各分野の専門家にご相談ください。

    出典創業・スタートアップ支援(中小企業庁) ページ名は「創業・起業支援」ではない。

    どちらを選んでも間違いではありません

    会社設立を自分で手続きすることは、まったく問題のない選択です。法務局は申請書の様式と記載例を公開していますし、完全オンラインでの申請にも対応しています。士業の独占業務という決まりは、他人の依頼を受けて報酬をもらい、業として行う場合の話であって、本人が自分の会社の手続きをすることを妨げるものではありません。

    同じように、専門家に依頼するのも当然の選択です。会社設立にかかる時間を買っているのだと考えれば分かりやすいと思います。手間がなくなるぶんの対価が報酬であって、依頼したから偉いということでも、自分でやったから偉いということでもありません。

    迷ったときは、この記事で挙げた四つ、つまり時間、許認可の有無、会社の中身の複雑さ、設立後に顧問を付けるかを順に見てください。二つ以上が依頼寄りなら、少なくとも一度は専門家に相談してみる価値があります。相談だけで終わらせても構いません。実際に依頼するかどうかは、見積もりを見てから決められます。

    この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。

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