会社設立の依頼先を選ぶチェックリスト|頼みたいことの整理から、対応範囲・報酬・電子定款・面談方法まで
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立の依頼先を探しはじめたものの、税理士・司法書士・行政書士のどこに問い合わせればよいのかから迷っている方。
- 会社設立の見積もりを何件か取ったけれど、何を基準に見比べればよいのかが定まらず、決めきれずにいる方。
- この記事では、特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしません。並べているのは、依頼先を選ぶ過程で順番に確かめていく項目です。自分の側の整理から始めて、相手に確かめることへ進みます。個別の見積もりが妥当かどうかは、当サイトでは判断していません。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
先に決めるのは、相手のことではなく自分の依頼内容です

会社設立の依頼先を選ぶチェックリストというと、事務所を見比べる項目から始まりそうなものですが、実際に効くのは自分の側の整理のほうです。何をどこまで頼みたいのかが決まっていないと、見積もりを取っても比べる軸ができません。

たとえば許認可が要る業種であれば、会社設立の定款の事業目的の書き方から行政書士に相談することになります。設立後すぐに記帳を任せたいなら、税理士事務所が窓口になっている形が合いやすくなります。自分の条件が決まると、問い合わせる先の種類が自然に絞られます。
上の項目がすべて埋まっている必要はありません。決まっていない項目こそ、専門家に相談する中身になります。ここで整理しているのは、何が決まっていて何が決まっていないかを自分で把握しておく、という意味です。
出典株式会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)
頼みたいことによって、依頼できる相手が決まります

会社設立でやることは、資格ごとに担当が法律で決まっています。どの専門家が優れているかという話ではなく、業として行える範囲が分かれているという話です。自分の頼みたいことが、どの列に入るのかを確かめてください。

根拠は、司法書士法3条1項1号・2号と73条1項、行政書士法1条の3、税理士法2条1項、社会保険労務士法2条1項・27条です。とくに間違えられやすいのが登記で、登記申請の代理と登記申請書類の作成は、司法書士(および弁護士)だけが業として行えます。
ひとつの資格で全部を引き受けることはできないので、まとめて案内している依頼先は、事務所の中か提携で分担しています。この形そのものに問題はありません。窓口がひとつで済むのは依頼する側にとって楽です。確かめるのは「登記はどなたが担当されますか」という一点だけです。
なお、会社設立の手続きをご自身で行うことは、どの資格がなくてもできます。ここで書いている「できる・できない」は、報酬をもらって業として代わりに行う場合の話です。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。
出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
対応範囲|どこからどこまでが依頼に入るか

見積もりを取ったあとに食い違いが起きやすいのが、対応範囲です。「会社設立一式」という言葉の中身が、依頼先によって違うためです。項目に分けて確かめてください。

この一覧をそのまま会社設立の問い合わせに使えます。「この項目は含まれますか」と順番に聞くだけで、範囲がそろいます。会社設立を扱い慣れた専門家であれば、どれも即答できる質問です。
たとえば社会保険の手続きは社会保険労務士の分野なので、司法書士事務所の見積もりに入っていないのは当たり前です。含まれるかどうかを知っておくことが目的であって、含まれていないことを責める話ではありません。含まれない部分を誰に頼むかが決まればよいだけです。
出典会社設立で代行できる手続きとは?専門家に依頼するメリット・デメリットと選び方(freee) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
報酬は幅で見る。実費とは分けて考える

金額の話です。会社設立の費用は「実費(法定費用)」と「報酬」の二つに分かれます。実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。事務所によって差が出るのは報酬のほうだけなので、見積書でこの二つが分かれているかを最初に見てください。
会社設立の報酬には幅があります。公表されている統計から、どれくらいの幅があるのかを見ておきます。

司法書士については、日本司法書士会連合会が報酬に関するアンケートを公表しています。2024年(令和6年)3月に実施されたもので、「発起人2名、資本金の額500万円の株式会社の発起設立による設立登記手続の代理業務を受任し、定款・議事録・その他証明書等のすべての書類を作成し、定款認証手続及び登記申請の代理をした場合」という設例に対して、有効回答932件、平均107,887円という数値が示されています。設例の前提が付いた数値なので、条件が違えば金額も変わります。
税理士には、これにあたる公的な報酬統計がありません。設立サポートや顧問料の相場を金額で示すことはできませんので、当サイトでは扱っていません。見積もりを取って、含まれる範囲とあわせて比べてください。
登録免許税は、株式会社が資本金の額の0.7%で15万円に満たないときは15万円、合同会社が同じく0.7%で6万円に満たないときは6万円。定款認証の手数料は株式会社のみで、資本金100万円未満は3万円(一定の3条件をすべて満たす場合は1万5,000円)、100万円以上300万円未満は4万円、300万円以上は5万円。紙の定款の収入印紙4万円は電子定款なら不要です。いずれも依頼先によって変わりません。当サイトでは費用の内訳表や試算は扱っていません。
出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…
電子定款に対応しているか

会社設立の見積もりを比べるときに見落としやすいのが、電子定款に対応しているかどうかです。定款を紙で作ると収入印紙4万円が必要ですが、電子定款であればこれがかかりません。
理由は印紙税法の仕組みにあります。印紙税の課税の対象は「文書」で、定款は別表第一の第6号文書として一通につき4万円とされています。電磁的記録は文書に含まれないというのが国税庁の質疑応答事例の示す考え方で、そのため電子定款には印紙税がかかりません。
- 依頼すると電子定款になるのが普通です司法書士や行政書士に定款の作成を依頼すると、電子定款で進めるのが通常です。これは報酬側の利点として書けるところです。
- 見積もりの比べ方が変わります紙の定款を前提にした見積もりと電子定款の見積もりでは、印紙代の分だけ総額が変わります。どちらの前提なのかを確かめてください。
- 合同会社でも定款は必要です合同会社に定款認証は要りませんが、定款そのものは作ります。紙で作れば印紙税の対象になります。
- 自分で電子定款を作る場合電子署名の準備が要ります。ここを理由に依頼する方もいます。手順そのものは当サイトでは扱っていません。
電子定款で進めれば印紙は不要なので、依頼先が値引きをしているわけではありません。仕組みとしてかからないだけです。案内の書き方としてはよくある表現なので、そういうものだと分かって読めば問題ありません。
出典No.7141 印紙税額の一覧表(その2)(国税庁) 第6号文書「定款」が4万円。
面談の方法と、やり取りの進め方

会社設立の依頼は、書類のやり取りが中心になります。どうやってやり取りするのかを先に確かめておくと、進めやすさの見当が付きます。とくに遠方の事務所に依頼する場合は、ここが決め手になります。
- 初回の面談は来所が必要か、オンラインで済むか。
- 書類の受け渡しは郵送か、電子でできるか。
- こちらが押印する書類はどれか。印鑑証明書は原本が必要になります。
- 定款認証はテレビ電話による面前確認に対応しているか。
- 登記が完了したあとの書類は、どうやって受け取るか。
- 連絡は電話かメールか。返事の目安があるか。
定款認証については、公証人によるテレビ電話を使った面前確認の仕組みがあります。遠方の依頼先を選びやすくなっている背景のひとつです。対応しているかどうかは公証役場と依頼先の両方に関わるので、依頼先に確かめてください。
問い合わせをしてから返事が来るまでの速さは、そのまま進め方の目安になります。急いでいるかどうかを最初に伝えて、対応できるかを聞いてみるのがいちばん確実です。ただし、返事が速いことと仕事の中身は別の話なので、これだけで決める材料にはなりません。
出典テレビ電話で電子定款の面前確認ができます(日本公証人連合会(公証役場一覧)) 公証役場に出向かずテレビ電話で電子定款の面前確認を受ける手順・必要環境・本人確認書類
資格の確認と、設立後まで見た依頼の範囲

会社設立の依頼先が決まりかけたら、担当する資格者が登録されているかを確かめられます。各士業の全国団体が会員検索を公開していて、どれも無料で使えます。特定の事務所を勧めるものではなく、どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える手段です。
あわせて考えておきたいのが、会社設立のあとをどうするかです。会社設立の手続きだけで終わるのか、記帳や申告まで見てもらうのか。ここが決まっていると、依頼先の選び方も変わります。設立の依頼と顧問契約は別の契約なので、まとめても、分けても構いません。
会員検索は登録の有無を確かめるためのもので、そこに載っていることが良し悪しを示すものではありません。当サイトも、特定の事務所やサービスを比較したり、順位を付けたりはしていません。並べているのは、依頼する側が確かめられる項目までです。
出典行政書士会員検索(日本行政書士会連合会) 末尾スラッシュなしが実効URL。
まとめ|順番に確かめれば、比べられる形になります

会社設立の依頼先を選ぶときに確かめる項目を、順番に並べ直しておきます。
- 自分の依頼内容を決める会社の形態、設立の時期、許認可の要否、資本金、設立後の記帳。決まっていない項目は、そのまま相談の中身になります。
- 頼みたいことから、依頼先の種類を絞る登記は司法書士(および弁護士)、定款は司法書士・行政書士、税務は税理士、社会保険は社会保険労務士。法律で担当が分かれています。
- 対応範囲を項目で確かめる「会社設立一式」の中身は依頼先ごとに違います。含まれる項目を一つずつ聞きます。
- 報酬は幅で見て、実費と分ける実費は誰に依頼しても同じ額です。行政書士と司法書士には公表された統計があり、税理士にはありません。
- 電子定款に対応しているか紙の定款には収入印紙4万円がかかります。電子定款なら不要です。
- 面談とやり取りの方法来所が必要か、オンラインで済むか。書類の受け渡しと押印の方法も確かめます。
- 資格の確認各士業の全国団体が会員検索を公開しています。登録の有無を確かめられます。
この順番で進めると、会社設立の問い合わせの内容がそろうので、返ってくる見積もりも比べられる形になります。逆に、条件を決めずに複数の事務所へ問い合わせると、範囲の違う見積もりが並んで判断できなくなります。
自分で手続きするという選択肢も残っています
会社設立の登記を自分で申請することは、まったく問題のない選択肢です。法務局が申請書の様式と記載例を公開していますし、会計ソフト事業者の会社設立ツールも、本人が書類を作るための道具として使えます。全部を専門家に依頼するか、全部を自分でやるかの二択ではありません。判断が要るところだけ相談する、という組み立ても可能です。
制度も条文も改正されます。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。個別の依頼の可否や見積もりの妥当性については当サイトでは判断していません。実際に判断されるときは、記事に添えた出典で最新の内容を確かめたうえで、司法書士・行政書士・税理士といった専門家に直接ご相談ください。
出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。
順番は、自分の整理が先です
会社設立の依頼先を選ぶとき、多くの方は先に事務所を探しはじめます。ただ、何をどこまで頼みたいのかが決まっていないと、見積もりを取っても比べられません。同じ「会社設立一式」という言葉でも、含まれる範囲は事務所ごとに違うからです。順番としては、自分の側の整理が先で、相手を調べるのはそのあとになります。
整理がついたら、あとは同じ条件で複数の専門家に問い合わせるだけです。同じ条件で聞けば、返ってくる見積もりも比べられる形になります。そこで見るのは金額だけではありません。対応の範囲、電子定款に対応しているか、面談の方法、設立後の話まで含まれるか。この記事のチェックリストは、そのための並べ方です。
そして、会社設立の手続きをご自身で行うことも、変わらず選べます。本人申請は合法で、法務局が申請書の様式と記載例を公開しています。全部を依頼するか、全部を自分でやるかの二択ではありません。判断が要るところだけ専門家に相談する、という組み立ても可能です。制度は改正されますので、実際に判断されるときは記事に添えた出典で最新の内容をご確認ください。
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