共同で会社設立するときの相談先|出資の割合と議決権、株主間の取り決めは誰に相談するか
この記事が想定している場面
- 友人や元同僚と一緒に会社設立をしようとしている方。出資をいくらずつ出すかまでは話したけれど、そのあと何を決めればいいのかが見えていない方。
- 自分は事業をやる側で、資金を出してくれる人が別にいるという形の会社設立を考えている方。
- この記事で扱うのは、共同で会社設立をするときに出てくる論点と、それぞれをどの専門家に依頼できるのかという対応です。個別の配分をどうすべきかは書きません。会社の事情によって答えが変わるためで、実際の設計は弁護士や司法書士に事情を伝えてご相談ください。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
ひとりの会社設立と、何が違うのか

会社設立の手続きそのものは、出資者がひとりでも複数でも大きくは変わりません。定款をつくり、株式会社なら認証を受け、出資金を払い込み、設立登記を申請する。流れは同じで、依頼できる先も変わりません。違うのは、その流れに入る前に決めておくことの数と、決め方です。そして、その段で相談する専門家も変わってきます。

注目していただきたいのは、弁護士が出てくるのが2番目と3番目だという点です。登記より前に来ます。ひとりで会社設立をする場合は、この二つの段がほとんど空になるので、いきなり4番目の依頼から始められます。共同の場合は、ここに時間がかかります。
誰にどこを相談できるかは、それぞれの法律が定める業務の範囲で決まっています。専門家の側が自由に選べるものではありません。なお、会社設立の手続きをご自身たちで進めることは、どの資格がなくてもできます。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。
出典株式会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)
出資の割合が、そのまま議決権になる

株式会社では、出資の割合がそのまま持株数になり、持株数がそのまま議決権の数になります。会社法308条1項が「株主(略)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する」と定めているためです(単元株式数を定款で定めている場合は一単元につき一個)。
そして株主総会の決議には、議決権の数にもとづく要件があります。会社法309条を見ておきます。
1 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。(略)

注意したいのは、ちょうど半分ずつという配分です。二人で出資して50対50にすると、意見が割れたときに普通決議すら通らなくなります。仲がよいうちは問題になりませんが、方針が分かれたときに動けなくなる形であることは知っておいたほうがよいところです。どう配分するのが正解かは会社の事情によりますので、ここでは論点として挙げるにとどめます。
309条1項には「定款に別段の定めがある場合を除き」、2項には「三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上」「これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合」という書き方が入っています。定款の作り方で決議の要件を調整できるということです。ここは会社設立の段階で決めておく部分になります。
出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。
定款に書くことと、別の文書で決めること

会社設立で作る文書のうち、いちばん大事なのは定款です。ただ、共同で会社設立をする場合に決めておきたいことのすべてが、定款に書けるわけではありません。定款は会社の基本的な決まりを定めるもので、登記される事項とも重なります。個々の出資者どうしの約束をすべて書き込む器ではないのです。
- 定款に書くこと商号、目的、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額、発起人の氏名など。加えて、株式の譲渡制限、機関設計、決議の要件といった任意の定めを置けます。
- 登記される事項商号、目的、本店、資本金の額、役員、公告の方法など。外から誰でも見られる情報です。変更するには変更登記が要り、登録免許税がかかります。
- 株主間の取り決め出資者どうしの約束を書いた文書です。役割の分担、途中で抜けるときの持株の扱い、意見が割れたときの決め方など。登記もされず、公開もされません。
- 役員の任期や報酬任期は定款で決める部分があり、報酬は株主総会や取締役会の決議で決めることになります。
三つ目の株主間の取り決めが、共同で会社設立をするときに効いてくる部分です。書いておく内容そのものが、法律関係の設計にあたるため、弁護士法3条1項の「一般の法律事務」の中心にある仕事になります。
共同で創業する相手と取り決めを文書にすることに、抵抗を感じる方もいます。ただ、これは相手を疑うための文書ではなく、あとで話し合うときの土台になる文書です。何も決めていない状態で意見が割れると、拠り所がないまま議論することになります。会社設立の前であれば、落ち着いて決められます。
なお、定款そのものの作成は、行政書士・司法書士・弁護士のいずれにも依頼できます。どこに依頼しても定款そのものの効力は変わりません。株式会社の定款は認証が要るため、公証役場でのやり取りも含めて依頼するのが一般的です。電子定款で作れば紙の定款に必要な収入印紙4万円がかからないという違いもあります。この4万円は印紙税法の課税対象が文書であることによるもので、電子定款には課税されません。
出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)
相談先が重なるところと、分かれるところ

共同で会社設立をする場面では、複数の専門家の分野が近い距離で並びます。どこが重なり、どこで分かれるのかを整理しておきます。

弁護士は登記の代理もできますが、それは司法書士法73条1項のただし書き「他の法律に別段の定めがある場合」に弁護士法3条が当たるためです。行政書士や税理士には、これに当たる規定がありません。したがって、登記申請書類の作成と登記の代理を依頼できる専門家は、司法書士か弁護士に限られます。
弁護士が税理士業務を行うには、税理士法51条1項により所属弁護士会を経て国税局長に通知することが必要です。通知の効果が及ぶのはその国税局の管轄区域内に限られます。会社設立の相談を弁護士にしていても、法人設立届出書などの税務の届出は税理士が担当する形になっていることが多い部分です。
なお、日本弁護士連合会は中小企業向けの相談の窓口として「ひまわりほっとダイヤル」を案内しており、各地の弁護士会にも中小企業向けの法律相談の仕組みがあります。いきなり依頼を決める必要はありません。まず相談してみて、そこから依頼の範囲を決めるという進め方もできます。
出典中小企業への法律支援(日弁連中小企業法律支援センター)(日本弁護士連合会)
合同会社は、仕組みそのものが違う

共同で会社設立をする場合、合同会社という選択肢もあります。ここは株式会社とかなり仕組みが違うので、分けて見ておきます。まず合同会社に定款認証は不要です。会社法30条が認証を求めているのは26条1項の定款、つまり株式会社の発起人が作成する定款だけで、持分会社については575条が定款の作成を定めるにとどまります。
そして、共同創業という観点から見たときのいちばんの違いは、出資の割合と議決・損益分配が直結しない点です。
590条2項 社員が二人以上ある場合には、持分会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。
622条1項 損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。
590条2項は、業務の決定を社員の頭数の過半数としています。出資額の多寡ではありません。622条1項の損益分配は出資の価額に応じるのが原則ですが、こちらは定款で別に定められます。つまり合同会社では、出資の割合と、議決の重みと、利益の配分を、それぞれ別に設計できる余地があるということです。
会社法585条1項は「社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない」と定めています(4項により定款で別段の定めを置くことは可能)。途中で抜ける人が出たときの扱いを、あらかじめ決めておく意味がここにあります。株式会社の株式譲渡制限とは考え方が違う部分です。
こうした設計の自由度があるぶん、定款をどう書くかが重くなります。共同で合同会社を作る場合は、定款の作成を依頼する段で中身を専門家と詰めておく意味が大きくなります。なお、合同会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の0.7%で、これで計算した額が6万円に満たないときは6万円です。株式会社の最低15万円と比べると低くなりますが、この実費は誰に依頼しても、ご自身で手続きしても同じ額です。
出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。
出資と資本金には、税務の面もある

出資の話は、法律関係の設計だけでは終わりません。集めた出資をいくら資本金に計上するかという論点があり、ここは税務の面が絡みます。税理士法2条1項3号の税務相談にあたる部分です。
会社設立にかかるお金は「実費(法定費用)」と「報酬」に分かれます。登録免許税や定款認証の手数料といった実費は、誰に依頼しても、ご自身で手続きしても同じ額です。事務所によって差が出るのは報酬のほうだけです。共同で会社設立をする場合、この費用を誰がどう負担するのかも、決めておくとよい項目のひとつです。
会社設立の相談を弁護士にしている場合でも、法人設立届出書や青色申告の承認申請書といった税務の届出は、税理士(または税理士法51条1項の通知をした弁護士)が担当することになります。設立後の記帳と申告は毎年続く部分なので、顧問として続けて依頼するかどうかもあわせて考えておくと、あとから慌てずに済みます。
出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…
決めないまま設立すると、どこで困りやすいか

共同で会社設立をするとき、話し合いにくい論点を先送りにしたまま登記まで進んでしまうことがあります。先送りしたことが悪いわけではありません。ただ、あとで困りやすい場所はだいたい決まっていて、専門家に相談すると必ず出てくる論点でもあるので、挙げておきます。

この中でとくに後戻りしにくいのが、出資の割合です。すでに払い込んで登記まで済んだあとで配分を変えようとすると、株式の譲渡や増資といった手続きが必要になり、税務の面も絡んできます。会社設立の前であれば、専門家を交えた話し合いだけで決められます。
共同創業者とのあいだで話がまとまらなくなった場合でも、相談できる窓口はあります。日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」や、各地の弁護士会の中小企業向け法律相談です。会社設立の前の段階で相談しても構いません。むしろ、決める前に相談したほうが選べる幅が残ります。
なお、当サイトは特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしていません。ここで挙げているのは、どこに相談できるかという入口の情報です。実際に依頼するかどうかは、複数の依頼先から話を聞いて、対応の範囲と見積もりを見比べたうえで決めてください。
出典中小企業等向け法律相談(中小企業法律支援センター)(東京弁護士会) 初回30分無料・弁護士紹介の流れ
まとめ|設計が先、登記があと

ここまでの内容を短くまとめます。共同で会社設立を進めるときの、判断の材料として使ってください。
- 流れは同じ、決めることが増える手続きの流れはひとりの場合と変わりません。増えるのは、登記より前に決めておく部分です。
- 株式会社は出資が議決権になる会社法308条1項により一株につき一個の議決権。309条1項の普通決議は出席株主の議決権の過半数、2項の特別決議は3分の2以上です。定款で要件を調整できる部分があります。
- 定款と、株主間の取り決めは別定款に書けることには限りがあります。出資者どうしの約束は別の文書にするのが一般的で、ここは弁護士法3条1項の「一般の法律事務」の中心です。
- 合同会社は仕組みが違う定款認証が不要で、会社法590条2項の業務決定は社員の頭数の過半数、622条1項の損益分配は定款で別に定められます。585条1項により持分の譲渡には原則として社員全員の承諾が要ります。
- 税務の面は税理士資本金の額は登録免許税にも設立後の扱いにも効きます。実費は依頼先を変えても同じ額です。
- 登記は司法書士か弁護士司法書士法73条1項ただし書きにより、弁護士も登記の代理ができます。行政書士や税理士にはこれに当たる規定がありません。
会社設立の前に決めておく作業は、正直なところ面倒です。ただ、決める前なら選べて、決めたあとは手続きになるというのがこの分野の性質です。とくに出資の割合は、登記まで進んでから動かそうとすると手間も費用もかかります。依頼の順番だけは守っておくと、後戻りが減ります。
この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。条文も制度も改正されます。実際に設計されるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認のうえ、弁護士・司法書士・税理士といった各分野の専門家に、事情を伝えて直接ご相談ください。
出典ひまわりほっとダイヤル(日本弁護士連合会)
決める順番を間違えないことが、いちばん効きます
共同で会社設立をするときにいちばん大事なのは、決める順番です。出資の割合と議決権と役割の分担を先に決め、それを定款に落として、そのとおりに登記する。この順番で進めば、あとから作り直しになる部分が減ります。逆に登記を先に済ませてから取り決めを考えると、定款と食い違って手戻りが出ます。
相談先としては、法律関係の設計そのものは弁護士法3条1項の「一般の法律事務」の中心にあります。定款の内容と登記は司法書士(および弁護士)の分野、出資と資本金の税務の面は税理士の分野です。分野が重なるところがあるので、誰か一人に全部を依頼するというより、順番に相談していく形になりやすい場面です。依頼の範囲も段ごとに分かれます。
そして、いちばん避けたいのは「仲がいいうちは決めなくていい」と先送りにすることです。決めておく作業そのものは、疑うためのものではなく、あとで話し合いの土台になる文書を作るためのものです。会社設立の前であれば選べる幅が残っています。ご自身の場合にどう設計するのがよいかは、事情を伝えたうえで各分野の専門家にご相談ください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。