会社設立のあとに出す税務の届出は、誰が出すのか|法人設立届出書・青色申告・給与支払事務所の担当
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立の登記までは依頼先が決まっているものの、そのあとに出す税務の届出を誰に頼めるのかが分かっていない方。
- 「登記が終わったら届出も出しておきます」と案内されて、その届出を出す人に資格が要るのかどうかが気になっている方。
- この記事は、届出書の書き方や提出のしかたを説明するものではありません。書いているのは、どの届出がいつまでに要るのかと、それを報酬を得て代わりに出せるのは誰なのかという担当の話です。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
会社設立の届出は、登記が終わってから始まります

会社設立の手続きを時間の順に並べると、税務の届出はいちばん後ろに来ます。定款をつくり、設立登記を申請し、それが通って会社が成立して、はじめて会社の名前で税務署に書類を出せるようになるためです。会社設立を依頼するとき、この順番を知っておくと、どの専門家にいつ声をかけるかが決めやすくなります。
そして、届出は一つではありません。税務署に出すものだけでも複数あり、それぞれ期限の数え方が違います。さらに都道府県と市区町村にも同じような届出があります。まずは、会社設立のあとに出てくる書類を並べたうえで、報酬を得て業として代わりに出せるのは誰なのかを見ておきます。

縦に見ると、税務の届出の行には税理士の列にだけ印が付いています。登記を担当した司法書士も、定款を作った行政書士も、税務の届出は扱えません。逆に、社会保険と労働保険の届出は税理士の分野ではなく、社会保険労務士の分野です。会社設立のあとの事務は、こうして複数の専門家に分かれます。
この表の「行えない」は、報酬を得て業として他人の代わりに行えるかという意味です。会社設立をした本人が、自分の会社の届出を作って税務署に出すことは、どの資格がなくてもできます。本人が出すのは合法で、現実的な選択肢のひとつです。この記事は、それを人に頼む場合に誰が担当できるのかを整理したものです。
出典C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁)
法人設立届出書。設立の日以後2か月以内に税務署へ

会社設立のあと、最初に出てくるのが法人設立届出書です。内国普通法人等を設立したときに、会社ができたことと、その中身を税務署に知らせるための届出です。会社設立を税理士に依頼したときに、実際に作ってもらう書類の代表格でもあります。
この届出を報酬を得て代わりに作成すること、そして代わりに提出することは、税理士法2条1項の税務書類の作成と税務代理にあたります。ですから、会社設立の依頼先が税理士であれば、そのまま依頼できます。
会社設立の登記を依頼した司法書士は、登記が終わった時点で仕事が終わります。「ついでに税務署の届出も出しておきます」ということはできません。行政書士も同じです。もし税務の届出まで含めて案内されている場合は、事務所の中か提携先の税理士が担当している、という形になっているはずです。担当する専門家の資格を確かめてみてください。
会社設立の日は、登記が完了した日ではなく登記を申請した日である点に注意が必要です。期限の2か月はそこから数えます。登記の完了を待っていると、それだけ準備の時間が短くなります。会社設立を依頼するときに、登記の申請日がいつになりそうかを聞いておくと、届出の段取りが立てやすくなります。
出典C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁)
青色申告の承認申請書。期限の数え方が独特です

青色申告の承認申請書は、会社設立のあとに出す書類のなかでいちばん期限を落としやすいものだと思います。通常の期限は、青色申告をしようとする事業年度開始の日の前日までです。ところが会社設立の初年度だけは、数え方が変わります。
会社設立の初年度については、設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日の、いずれか早い日の前日までが期限になります。決算期をどこに置いたかによって、どちらが効いてくるかが変わる仕組みです。

期限までに申請書の提出がなければ、その事業年度について青色申告の承認を受けることはできません。会社設立のあわただしい時期に重なるため、依頼の範囲にこの申請書が入っているかどうかは、はっきりさせておいたほうがよい項目です。
会社設立のサポートの案内に「設立後の届出も対応」と書かれていても、税務署の分だけなのか、青色申告の承認申請書まで含むのか、都道府県と市区町村の分も入るのかは、事務所によって違います。会社設立を依頼するときに、含まれる書類の名前を挙げて確かめておくと、あとで食い違いにくくなります。
出典C1-19 青色申告書の承認の申請(国税庁)
給与支払事務所等の開設届出書。役員報酬を出すなら関係します

三つ目が給与支払事務所等の開設届出書です。給与を支払う事務所を設けたときに、開設の事実があった日から1か月以内に提出します。人を雇っていなくても、代表者に役員報酬を支払うのであれば給与の支払いにあたりますから、会社設立の直後から関係してくることになります。
この届出も税務署に出す書類ですから、報酬を得て代わりに作成・提出できるのは税理士です。社会保険労務士の分野ではありません。給与という言葉が付いているために社労士だと思われがちですが、提出先が税務署であれば税務の書類です。
役員報酬を決めると、税務の側では源泉徴収の事務が、社会保険の側では健康保険・厚生年金の手続きが動き出します。税務署へ出すものは税理士、年金事務所やハローワークへ出すものは社会保険労務士。同じ「給与」の話でも、提出先で担当が分かれると考えると整理しやすくなります。
会社設立の依頼をまとめて引き受けている事務所では、この二つを同じ窓口で受け付けていることがあります。その場合も、中では税理士と社会保険労務士に分かれています。窓口がひとつであること自体は依頼する側にとって楽ですし、この形そのものに問題はありません。
出典A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出(国税庁)
都道府県と市区町村にも、同じような届出があります

会社設立のあとの税務の届出は、国税だけではありません。法人住民税と法人事業税の関係で、都道府県税事務所と市区町村にも設立の届出が必要になります。ここが依頼の範囲から漏れやすいところです。
様式の名前も、提出の期限も、自治体ごとに定められています。全国で統一された一つの決まりがあるわけではないので、この記事では日数を書きません。本店の所在地を管轄する都道府県税事務所と市区町村の案内で確かめてください。会社設立を税理士に依頼している場合は、その税理士が把握しているはずの部分です。

会社設立を依頼するときに、こうした項目を一度に確かめておくと、あとから「それは範囲外です」という話になりにくくなります。専門家の側にとっても、範囲がはっきりしているほうが見積もりを出しやすいはずです。
出典No.5100 新設法人の届出書類(国税庁)
税務の届出を代わりに出せるのが税理士だけである理由

ここまで「税務の届出は税理士」と書いてきましたが、その根拠は税理士法にあります。同法2条1項が税理士の業務を三つ定めていて、届出の作成と提出はそのうちの二つに当たります。
一 税務代理(税務官公署に対する租税に関する法令(略)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(略)につき、又は当該申告等(略)に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(略)をいう。)
二 税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(略)を作成することをいう。)
法人設立届出書も、青色申告の承認申請書も、給与支払事務所等の開設届出書も、税務官公署に提出する書類です。ですから二号の税務書類の作成にあたり、それを代わりに提出すれば一号の税務代理にあたります。そして52条が、税理士でない者がこれらを業として行うことを禁じています。

52条に違反して税理士業務を行った場合の罰則は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。司法書士法・行政書士法の1年以下より重く設定されています。なお2025年6月1日から「懲役」は「拘禁刑」に置き換わっていますので、古い解説の書きぶりをそのまま受け取らないようにしてください。
この線引きは、専門家の力量の話ではありません。税理士法がそう定めているというだけのことです。会社設立を依頼するときに、税務の届出を誰が担当するのかを確かめるのは、相手を疑う行為ではなく、依頼の範囲をそろえるための確認です。
出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…
自分で出すという選択肢も、普通に成り立ちます

ここまで担当の話を続けてきましたが、会社設立をした本人が自分の会社の届出を出すことは自由です。資格の制限は、報酬を得て他人の代わりに行う場合の話だからです。会社設立を自分で進めてきた方が、そのまま税務の届出まで自分で出すのは、まったく普通のことです。
公的な仕組みも用意されています。マイナポータル上の法人設立ワンストップサービスでは、定款認証や設立登記から、国税・地方税・年金・労働保険の届出までを一括で申請できます。ただし、これは本人が申請するための仕組みであって、これが申請を代理してくれるものではありません。専門家に依頼するのとは別の話です。
- 期限がいくつも並ぶのが手間の中心です。書類そのものより、期限の管理が負担になります。
- 会社設立の直後は、口座の開設や取引先への連絡など、ほかにやることが重なります。
- 設立後の記帳と申告まで自分でやるつもりがあるかどうかで、依頼の要否が変わってきます。
- 会社設立のあと顧問税理士を付ける予定があるなら、届出の段階から任せたほうが手戻りが少なくなります。
会社設立の手続きを自分で進めることも、届出を自分で出すことも、合法で現実的な選択肢です。当サイトは、依頼したほうがよいと勧めるためのものではありません。書いているのは、頼むとしたら誰に頼めるのかという線引きと、確かめておくとよい項目までです。
判断の材料としては、会社設立のあとに顧問を付けるかどうかが分かりやすいと思います。付けるつもりがあるなら、届出の段階から同じ税理士に任せておくと、決算の時期に情報を渡し直す手間が減ります。当面は自分でやってみるという場合でも、期限だけは先にまとめておくとよいはずです。
出典法人設立ワンストップサービス(デジタル庁) 旧URL app.houjin-portal.go.jp は存在しない。ドメイン直下は404なのでフルパスで書く。
まとめ|提出先を見れば、担当できる専門家が決まります

会社設立のあとに出す税務の届出について、ここまでの内容を短くまとめます。迷ったときは、その書類の提出先はどこかを見てください。それだけで担当できる専門家がほぼ決まります。
- 法人設立届出書納税地の所轄税務署長へ、設立の日以後2か月以内。定款等の写しを添付します。都道府県と市区町村にも別に届出が要ります。
- 青色申告の承認申請書会社設立の初年度は、設立の日以後3か月を経過した日と第1期の事業年度終了の日の、早いほうの前日までが期限です。
- 給与支払事務所等の開設届出書開設の事実があった日から1か月以内。役員報酬を支払うなら会社設立の直後から関係します。
- 代わりに出せるのは税理士だけ税理士法2条1項の税務書類の作成と税務代理にあたります。登記を担当した司法書士も、定款を作った行政書士も扱えません。
- 社会保険は税理士の分野ではない健康保険・厚生年金の新規適用届や労働保険の届出は、社会保険労務士の分野です。
- 本人が出すのは自由会社設立をした本人が自分の会社の届出を出すことに、資格は要りません。法人設立ワンストップサービスも本人が使う仕組みです。
会社設立を依頼するときに確かめておくとよいのは、含まれる届出の名前です。「設立後の届出も対応」とだけ書かれている場合、税務署の分だけのことも、都道府県と市区町村まで入ることもあります。名前を挙げて聞けば、範囲がはっきりします。
依頼先が登録された税理士かどうかは、日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで確かめられます。これは特定の事務所を勧めるものではなく、どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段です。会社設立の依頼先を決めるときの、最後のひと手間として使ってみてください。
制度も条文も改正されます。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。期限や様式は必ず各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の届出の要否や見積もりの妥当性については、税理士に直接ご相談ください。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
届出は、期限が近いものから順に並べてください
会社設立のあとの税務の届出は、書類そのものが難しいというより、期限がいくつも並んでいるところが手間です。法人設立届出書、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書。それぞれ数え方が違いますし、都道府県と市区町村の分もあります。
この部分を代わりに出してもらえるのは、報酬を得て業として行う限りにおいては税理士だけです。会社設立の登記を担当した司法書士も、定款を作った行政書士も、この届出は扱えません。逆に、会社自身が出すことは自由です。その場合でも、期限だけは自分で管理することになります。
依頼するかどうかを決めるときは、金額より先にどこまでが範囲に入っているかを見てください。税務署の分だけなのか、都道府県と市区町村も含むのか。設立後の記帳と申告まで続けるのか。範囲がそろっていれば、あとから追加が出にくくなります。個別の判断は、事情を伝えたうえで税理士にご相談ください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。