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会社設立で行政書士と司法書士は何が違うのか|重なるのは定款、分かれるのは登記

公開 約11分(6,481字) 合同会社commit 編集部 一次情報の確認日:2026年9月1日

会社設立で行政書士と司法書士は何が違うのか|重なるのは定款、分かれるのは登記

この記事は、こういう方に向けて書いています

  • 会社設立の依頼先を探していて、行政書士の事務所と司法書士の事務所が両方出てくる理由が分からない方。
  • どちらも「会社設立をお手伝いします」と書いているので、何が違うのかを条文の裏づけつきで知りたい方。
  • この記事では、どちらが優れているという話はしません。二つの資格は法律で業務の範囲が定められていて、重なる部分と重ならない部分があるというだけです。その線がどこにあるのかを見ていきます。
  • 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。

重なるところと、分かれるところ

行政書士と司法書士の役割が重なる部分と分かれる部分を表したイラスト
定款で重なり、登記と許認可で分かれます。

会社設立の依頼先として行政書士と司法書士が並んで出てくるのは、定款のところで二つの資格の業務が重なっているからです。まず、重なりと分かれ目を一枚にしておきます。

会社設立での行政書士と司法書士の役割を並べて比べた図

上の二行はどちらにも同じことが書いてあります。ここが重なっている部分です。下に行くにつれて内容が分かれます。司法書士だけができるのが登記、行政書士だけができるのが許認可、という形です。

できる・できないの意味

ここで「できる・できない」と書いているのは、報酬を得て業として行えるかの話です。ご自身の会社の定款を作り、登記を申請することは、どの資格がなくてもできます。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。

出典会社設立は誰に頼む?司法書士・行政書士・税理士に依頼できること(マネーフォワード) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。

行政書士法が定めている業務

行政書士法が定める業務を表したイラスト
定款も許認可も、この条文の中に収まります。

行政書士の業務は、行政書士法1条の3と1条の4に分かれて書かれています。1条の3が書類の作成、1条の4が提出手続の代理や相談です。

行政書士法 1条の3第1項

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

出典:行政書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁))

定款は、会社の目的や商号、株式の扱い、機関の設計を定める書類です。会社と発起人の権利義務そのものを決める文書ですから、「権利義務に関する書類」にあたります。ここが、行政書士が会社設立の定款を扱える根拠です。

建設業や飲食業の許認可の申請書は、前半の「官公署に提出する書類」に入ります。そして1条の4第1項1号が、その提出手続と許認可等に関して官公署に対してする行為の代理を業務としています。許認可は、行政書士の本来の分野です。

条番号が2026年5月21日に繰り下がっています

改正により、旧1条の2が現行の1条の3旧1条の3が現行の1条の4になりました。現行の1条の2は「職責」の条で、業務の条ではありません。「行政書士の業務は1条の2」と書かれた解説は、改正前のものです。この記事は2026年9月1日に現行条文を確認しています。

出典行政書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2026年5月21日施行の改正で条がずれた。現行は1条の3が業務、1条の4が代理等、1条の2は職責。19条1項違反の罰則は21条の2(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

司法書士法が定めている業務

司法書士法が定める業務を表したイラスト
登記の代理と、法務局に出す書類の作成が中心です。

司法書士の業務は、司法書士法3条1項が号ごとに定めています。会社設立に関わるのは次の三つです。

  • 3条1項1号登記又は供託に関する手続について代理すること。設立登記の申請の代理がここに入ります。
  • 3条1項2号法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録を作成すること。登記申請書と添付書類の作成です。
  • 3条1項5号前各号の事務について相談に応ずること。登記の相談です。
行政書士法と司法書士法の根拠条文を並べたカード

司法書士法にも、行政書士法1条の3第2項と同じ形の定めがあります。同法3条8項に「他の法律において制限されているものについては、これを行うことができない」とあり、たとえば税務は税理士法の側に譲られます。どちらの法律も、他の法律に道を譲る仕組みを内側に持っているということです。

定款の作成は、司法書士にも依頼できます

会社設立の登記を申請するには、その添付書類として定款が要ります。司法書士は登記の一連の手続きのなかで定款を作成し、認証の手続きも行います。日本司法書士会連合会の業務案内にも、会社の設立に関する手続きが挙げられています。定款は行政書士だけの分野ではありません。

出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)

重なっている部分。定款は両方が扱えます

定款の作成が両方の資格で扱えることを表したイラスト
定款だけなら、どちらに依頼しても同じ作業です。

会社設立で行政書士と司法書士の業務が重なるのは、定款のところです。作成も、公証役場での認証の手続きも、どちらの資格でも行えます。株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません(会社法30条1項)ので、この作業は必ず発生します。

会社設立の手続きを行政書士・司法書士・税理士・社労士のどの資格が担当できるかを示した表

上の三行が、二つの資格に共通する部分です。依頼する側から見れば、定款だけならどちらに頼んでも同じことをしてもらえることになります。どちらに依頼しても電子定款になるのが通常で、紙の定款に必要な収入印紙4万円は不要です。

合同会社には定款認証がありません

会社法30条が認証を求めているのは、26条1項の定款、つまり株式会社の発起人が作成する定款だけです。合同会社などの持分会社は575条が定款の作成を定めるだけで、認証を要する規定がありません。合同会社の会社設立では、この重なりの部分が定款の作成だけになります。

出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。

分かれている部分。登記は司法書士だけです

登記が司法書士の分野であることを表したイラスト
登記だけは、条文の側で司法書士に割り振られています。

定款が整ったあとに来るのが設立登記です。ここは行政書士の業務の範囲外になります。理由は二つの法律にまたがっていますが、順番にたどると単純です。

  1. 行政書士法1条の3第1項は「官公署に提出する書類」の作成を業務としている。登記申請書も、法務局という官公署に出す書類に見える。
  2. しかし同条2項が「その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と定めている。
  3. そして司法書士法3条1項1号・2号が登記の代理と法務局に出す書類の作成を司法書士の業務とし、73条1項がこれを司法書士・司法書士法人以外に禁じている。
  4. したがって、登記は行政書士の業務から外れる。

この四段が、会社設立で行政書士と司法書士が分かれる理由のすべてです。行政書士の力量の問題ではなく、条文の割り振りの問題だということが分かると思います。どちらの専門家が優れているという話ではありません。

分かれていることは、依頼の妨げになりません

実務では、会社設立を扱う行政書士の多くが司法書士と提携しています。定款は行政書士が作成し、登記は提携する司法書士が担当する、という組み立てです。この形そのものに問題はありません。依頼する側が確かめておくとよいのは「登記はどなたが担当されますか」だけで足ります。

逆向きも同じです。司法書士に会社設立を依頼した場合、許認可が要る事業なら、その申請は行政書士の分野になります。どちらから入っても、途中でもう一方の専門家が関わることがある、という理解でよいと思います。会社設立は、複数の専門家が順番に関わる手続きです。

出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。

会社設立の流れのなかで、どこで交代するのか

会社設立の流れの中で担当が交代することを表したイラスト
重なるのは2と3。そのあとで分かれます。

条文の話を、実際の会社設立の流れに置き直しておきます。株式会社の場合、次のような並びになります。どこで担当が入れ替わるかに注目してください。

株式会社の会社設立の流れと、各段を担当できる資格を示した流れ図

見ていただくと、行政書士は2と3、そして8に出てきます。司法書士は2と3、そして5です。重なっているのは2と3で、その先で分かれる。会社設立の依頼を組み立てるときは、この並びを見ながら「どこからどこまでをどの専門家に頼むか」を決めることになります。

許認可がある事業では、8から逆算します

会社設立の登記が終わっても、許認可が下りるまで営業は始められません。しかも許認可の審査では、定款の事業目的が見られます。つまり8で困らないように2を決める必要がある、ということです。許認可が絡む会社設立では、行政書士に早い段階から相談する意味がここにあります。

出典商業・法人登記申請手続(法務局)

報酬の統計は、それぞれの団体が別々に出しています

行政書士と司法書士の報酬統計が別々であることを表したイラスト
前提が違う統計なので、そのままでは比べられません。

行政書士と司法書士には、それぞれの全国団体が公表している報酬の統計があります。ただし調査の設計が違うので、金額だけを並べて「どちらが安い」と比べられるものではありません。

  • 行政書士の統計
    日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(令和7年度)。「会社設立手続」の一括の項目で、回答287件・平均106,371円・最頻値110,000円・最小7,000円・最大550,000円。消費税を含み、立替金は含みません。
  • 司法書士の統計
    日本司法書士会連合会の報酬に関するアンケート(2024年3月実施)。設例つきで、発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立につき、定款・議事録その他の書類をすべて作成し、定款認証手続と登記申請の代理をした場合。有効回答932件・平均107,887円。
  • 並べて比べにくい理由
    行政書士の項目は含まれる作業が回答者ごとに違う可能性があり、司法書士のほうは設例で作業の範囲が固定されています。前提がそろっていません。
  • 共通していえること
    どちらも幅が広く、専門家ごとに異なります。金額を比べる前に、含まれる作業の範囲をそろえるのが先です。
  • 書けない数値もあります

    行政書士の統計にあるのは「会社設立手続」という一括の項目だけで、株式会社と合同会社を分けた数値は公表されていません。司法書士のアンケートも、現行版に地区別の低額者・平均・高額者の表はありません。地区別の相場は書けないということです。当サイトでは、確認できない数字は書かないことにしています。

    なお、会社設立の費用は実費(法定費用)報酬に分かれます。設立登記の登録免許税(株式会社は資本金の額の0.7%で最低15万円、合同会社は0.7%で最低6万円)や、株式会社の定款認証の手数料は、誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。事務所によって差が出るのは報酬のほうだけです。

    出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…

    どちらに依頼するかを決めるときの見方

    依頼先を目的から決めることを表したイラスト
    目的から引くと、どちらに頼むかが決まります。

    会社設立でどちらの専門家に依頼するかは、何をいちばん重く見るかで決まります。優劣ではなく、目的別の適任という見方をしてください。

    • 登記まで一本で進めたい … 司法書士に依頼すると、定款から登記まで同じ相手で完結します。
    • 許認可が控えている … 行政書士に依頼すると、定款の事業目的と許認可を続きで見てもらえます。
    • 許認可も登記も両方ある … どちらかを窓口にして、もう一方を提携先が担当する形になります。窓口はどちらでも構いません。
    • 設立後の税務まで見据えたい … 税理士が窓口になり、登記は提携する司法書士が担当する形もあります。
    • 出資や株主間の取り決めが複雑 … 弁護士に相談する場面です。登記の代理も行えます。

    資格の登録は、名簿で確かめられます

    依頼しようとしている相手が実際に登録された専門家かどうかは、各団体の検索で確かめられます。行政書士なら日本行政書士会連合会の会員検索、司法書士なら日本司法書士会連合会の検索です。これは特定の事務所を勧めるものではなく、どの依頼先を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段です。

    資格の説明がない案内には、確認を足してください

    「会社設立の書類を一式作成します」とだけ書かれていて、誰が作成するのかが分からない場合は、担当する資格者を聞いてみてください。定款のような権利義務に関する書類を報酬を得て業として作成できるのは行政書士・司法書士・弁護士で、登記は司法書士・弁護士です。当サイトでは特定の事務所や業者を名指しして評価することはしていません。書いているのは確かめ方だけです。

    出典行政書士会員検索(日本行政書士会連合会) 末尾スラッシュなしが実効URL。

    まとめ|重なりは定款、分かれ目は登記と許認可

    行政書士と司法書士の違いのまとめを表したイラスト
    重なりと分かれ目を覚えておくと、依頼先を決められます。

    会社設立における行政書士と司法書士の違いを、短くまとめます。

    • 重なるのは定款作成も認証の手続きも、どちらの資格でも行えます。行政書士法1条の3第1項の「権利義務に関する書類」と、司法書士の登記手続に付随する業務が、ここで重なります。
    • 分かれるのは登記設立登記の申請の代理と登記申請書類の作成は、司法書士(および弁護士)だけの分野です。行政書士法1条の3第2項と司法書士法3条1項・73条1項によります。
    • 行政書士だけの分野もある建設業・飲食業・古物商などの許認可の申請です。会社設立のあとに控えている事業なら、ここが決め手になります。
    • 条番号に注意行政書士法は2026年5月21日施行の改正で条番号が繰り下がりました。業務は1条の3、代理等は1条の4、現行の1条の2は職責の条です。
    • 罰則は拘禁刑司法書士法78条1項も行政書士法21条の2も、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。「懲役」ではありません。
    • 報酬の統計は別物行政書士は「会社設立手続」の一括、司法書士は設例つき。前提が違うので、そのまま並べて比べられません。

    会社設立の依頼先を決めるときに、この違いが効いてくるのは「どこまでを一人に頼めるか」という点です。登記まで一本で進めたいなら司法書士、許認可まで見据えるなら行政書士、両方あるならどちらかの専門家を窓口にして提携先を使う。どの組み立てでも問題はありません。

    この記事の内容は2026年9月1日時点で、e-Gov法令検索の現行条文と各団体の公表資料で確認したものです。法令も統計も改まりますので、実際に判断されるときは各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の依頼の可否や見積もりの妥当性については、行政書士や司法書士といった各分野の専門家に直接ご相談ください。

    出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。

    重なりを知っておくと、依頼の組み立てが決まります

    会社設立で行政書士と司法書士の違いを一言でいえば、定款は重なっていて、登記は重なっていないということに尽きます。定款の作成と認証の手続きはどちらにも依頼できますが、設立登記の申請の代理と登記申請書類の作成は司法書士(および弁護士)だけの分野です。行政書士法1条の3第2項が、その線を引いています。

    そして、行政書士には司法書士にない分野もあります。建設業や飲食業、古物商といった許認可の申請です。会社設立のあとに許認可が控えている事業なら、行政書士に相談する意味は登記とは別のところにあります。優劣ではなく、目的別にどちらが適任かという見方をしてください。

    実際の依頼では、どちらか一方の事務所が窓口になり、足りない部分を提携先が担当する形が多くなります。この形に問題はありません。確かめておくとよいのは「登記はどなたが担当されますか」の一点です。ご自身の会社設立でどう組み立てるのが合うかは、見積もりを取ったうえで、行政書士や司法書士といった専門家に直接ご相談ください。

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