会社設立の登記を司法書士に依頼すると、どこまでやってもらえるのか|司法書士法3条1項が定める範囲
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 会社設立の登記は司法書士に頼むものだと聞いたものの、登記の申請以外に何が付いてくるのかが見えていない方。
- 定款は行政書士、登記は司法書士と分かれているように読める案内を見て、司法書士だけに依頼すると足りないのかを確かめたい方。
- この記事では、登記申請書の書き方や自分で申請する段取りは扱いません。書いているのは、司法書士法が司法書士の業務をどう定めているかと、その範囲が会社設立のどこまでを覆うのか、という話です。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
会社設立の登記を代理できるのは、司法書士と弁護士だけ

会社設立の手続きのなかで、依頼先が資格によってはっきり分かれるのが登記です。設立登記の申請を報酬を得て代理できるのは、司法書士と弁護士だけです。税理士事務所でも行政書士事務所でも、登記の部分は必ずどちらかが担当しています。

横に見ていくと、司法書士の行だけが登記から定款まで続けて印が付いていることが分かります。会社設立を一人の専門家に任せたいときに、司法書士が候補に上がりやすいのはこのためです。
「行えない」と書いているのは、報酬を得て業として他人の代わりに行えるかという話です。会社設立の登記をご自身で申請することは、どの資格がなくてもできます。本人申請は合法で、現実的な選択肢です。この記事は、人に頼む場合に誰が何を担当できるのかを整理したものです。
出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)
司法書士の業務は、3条1項の号ごとに書かれています

司法書士に会社設立の何を依頼できるかは、司法書士法3条1項を読むとほぼ分かります。この条文は業務を号ごとに並べていて、登記の代理と、書類の作成と、相談が、それぞれ別の号になっています。
一 登記又は供託に関する手続について代理すること。
二 法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(略)を作成すること。
五 前各号の事務について相談に応ずること。

会社設立の依頼という観点で大事なのは、この三つが分かれて書かれていることです。書類だけ作ってもらって申請は自分でする、という頼み方も条文上は成り立ちますし、相談だけを受けることもできます。実際にどう組み合わせるかは、事務所ごとの受け方によります。
そして73条1項が、これらの業務を司法書士以外に禁じています。会社設立の代行を名乗る無資格の業者が登記申請書を業として作成すれば、ここに触れることになります。業者を名指しして違法だと言うためのものではなく、依頼する側が担当者の資格を確かめるための線引きとして読んでください。
出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
設立登記の申請の代理。会社が成立する手続きそのものです

会社設立で登記が特別扱いされるのは、それが会社が成立する手続きそのものだからです。株式会社も合同会社も、本店の所在地で設立の登記をすることによって成立します。書類の届出とは重みが違います。
司法書士に会社設立の登記を依頼した場合、代理人として次のようなことを担当することになります。どこまでを含むかは事務所によって差がありますので、見積もりの段階で確かめてください。
会社設立の日は、登記を申請した日です。書類がそろっていることが前提になりますし、法務局の閉庁日には申請できません。記念日などの希望がある場合は、依頼の段階で司法書士に伝えておくと、そこから逆算して段取りを組んでもらえます。
なお、登記の申請を代理できるのは司法書士と弁護士だけですが、本人が申請すること自体は自由です。会社設立を自分で進める方は、法務局の登記手続案内を使いながら本人申請をしています。この記事は依頼する場合の範囲を書いたもので、自分で申請する手順は扱いません。
出典商業・法人登記申請手続(法務局)
登記申請書と添付書類の作成も、依頼に含まれます

司法書士法3条1項2号は、法務局に提出する書類や電磁的記録を作成することを業務としています。会社設立の登記では、申請書そのものよりも添付する書類の数が多く、ここを任せられることが依頼の中身の大半を占めます。

左側は会社の中身そのものなので、依頼した側にしか決められません。右側は形式の決まった書類なので、専門家に任せたほうが早い部分です。会社設立の依頼というのは、おおまかに言えばこの右側をまとめて渡すことだと考えると分かりやすいと思います。
条文上、代理と書類の作成は別の号です。ですから「書類は作ってもらって申請は自分で」という頼み方も成り立ちます。ただし、実際に受けてもらえるかは事務所によります。補正が出たときの対応まで含めて考えると、代理まで任せるほうが手戻りは少なくなります。
出典商業・法人登記の申請書様式(法務局)
定款の作成と認証の手続きも、司法書士に依頼できます

会社設立の案内を読んでいると、「定款は行政書士、登記は司法書士」という説明をよく見かけます。これはどちらか一方しか扱えないという意味ではありません。定款は権利義務に関する書類であり、司法書士も業務として作成できます。公証役場での認証の手続きも扱えます。
株式会社の場合、定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じません。合同会社には認証が要りません。会社設立をどちらの形態で行うかによって、依頼の中身がここで変わります。
- 株式会社は、定款の作成、公証人による認証、そのうえで設立登記という順に進みます。認証の手数料は資本金の額等によって区分されています。
- 合同会社は定款の認証が不要です。そのぶん、会社設立で必要になる手続きは少なくなります。
- 電子定款にすると、紙の定款に必要な収入印紙4万円がかかりません。司法書士や行政書士に依頼すると電子定款になるのが通常です。
- 認証の手数料や登録免許税は実費です。誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額になります。
印紙税の課税対象は文書であり、電磁的記録は文書に含まれないという扱いから、電子定款には収入印紙が要りません。会社設立を専門家に依頼すると電子定款になるのが通常なので、この差は依頼を検討するときの材料になります。ただし実費の内訳や総額の試算は、当サイトでは扱っていません。
つまり、会社設立の定款から登記までをひとつの窓口にまとめたいのであれば、司法書士への依頼で通ります。逆に、建設業や飲食業のように許認可が要る事業であれば、定款の事業目的を許認可の要件に合わせる必要が出てくるため、行政書士に相談する意味が大きくなります。目的別に選んでください。
出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。
司法書士に依頼できないこと。税務と社会保険が外れます

司法書士法3条8項には、他の法律において制限されているものについては、これを行うことができないという定めがあります。会社設立でいえば、税務と社会保険がここで外れます。

会社設立の登記を司法書士に依頼すると、登記が完了した時点でその依頼は完結します。そのあとの税務署への届出は、司法書士からは出せません。「登記が終わったので届出も出しておきました」ということはない、と考えておいてください。
司法書士事務所が会社設立を税務まで含めて案内している場合、事務所の中か提携先に税理士がいて、その部分を担当しています。この形そのものに問題はありません。確かめておくとよいのは「税務の届出はどなたが担当されますか」という一言です。まっとうに分担している専門家なら、聞かれて困る質問ではありません。
会社設立のあとにも登記は出てきます。役員の変更、本店の移転、商号や事業目的の変更、増資。いずれも登記の話ですから、司法書士に依頼できます。会社設立のときだけの付き合いではなく、そのあとも続く相手だと考えておくと、依頼先を選ぶときの見方が少し変わってくると思います。
出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…
依頼先が本当に司法書士かどうかは、名簿で確かめられます

会社設立の登記を依頼する相手が、登録された司法書士かどうかは、日本司法書士会連合会の司法書士検索で確かめられます。氏名や事務所の所在地から探せます。特定の事務所を勧めるためのものではなく、確認のための道具として使ってください。
会社設立の案内のなかには、資格の表示が見当たらないものもあります。次のような言い回しを見かけたら、担当する資格者が誰なのかを一度聞いてみるとよいと思います。悪意があるとは限りませんし、聞けば説明があるのが普通です。
「登記はどなたが担当されますか」。これだけで、会社設立の依頼の形はだいたい分かります。相手を試す質問ではなく、依頼の範囲をそろえるための質問です。司法書士の名前や、提携している事務所の話が出てくれば、それが通常の形です。
会社設立の依頼先を比べるときは、資格の確認に加えて、対応の範囲、電子定款に対応しているか、面談の方法、連絡への返しの早さといったところを見ることになります。当サイトでは特定の事務所を比較したり順位を付けたりはしていません。どの項目を確かめるかまでを書いています。
会社設立の登記を依頼したあと、書類のやり取りは短い期間に集中します。印鑑証明書の取得、定款の内容の確認、出資の払い込み、委任状への署名。こちらの手が止まると、そのぶん会社設立の日も後ろにずれます。依頼の前に、連絡の手段と、どれくらいの頻度でやり取りが発生するのかを聞いておくと、予定が立てやすくなります。遠方の司法書士に依頼する場合はとくに、書類の郵送にかかる日数まで含めて確かめておくとよいと思います。
出典司法書士検索(日本司法書士会連合会) 旧ドメイン kensaku.shiho-shoshi.or.jp は証明書のホスト名不一致で使えない。
まとめ|登記の周りは、司法書士でひとまとまりになります

会社設立の登記を司法書士に依頼したとき、どこまでやってもらえるのか。ここまでの内容を短くまとめます。
- 登記の代理司法書士法3条1項1号。設立登記の申請を代理します。代理できるのは司法書士と弁護士だけです。
- 書類の作成同項2号。登記申請書と添付書類を作成します。会社設立ではここが依頼の中身の大半です。
- 登記の相談同項5号。会社設立の登記についての相談も業務に入っています。
- 定款まで含められる定款の作成も、公証役場での認証手続きも依頼できます。株式会社は認証が必要で、合同会社は不要です。
- 外れるのは税務と社会保険3条8項により、他の法律で制限されているものは行えません。税務は税理士、社会保険は社会保険労務士の分野です。
- 本人申請は合法会社設立の登記をご自身で申請することはできます。この記事は、依頼する場合の範囲を書いたものです。
会社設立の依頼先を決めるときに、司法書士が候補になりやすいのは、登記の周りがひとまとまりで収まっているからです。定款から登記までを一人に任せられるのは、依頼する側にとって分かりやすい形だと思います。そのうえで、許認可が要るなら行政書士、設立後の税務なら税理士と、必要に応じて相手が増えていきます。
この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。条文も制度も改正されます。実際に会社設立を進められるときは、各セクションに添えた出典で最新の内容を確かめたうえで、司法書士をはじめとする専門家に直接ご相談ください。個別の依頼の可否や見積もりの妥当性については、当サイトでは判断していません。
出典司法書士及び土地家屋調査士関係(法務省)
登記の周りごと引き受けられるのが、この資格の特徴です
会社設立の依頼先として司法書士を見るときに、いちばん押さえておきたいのは、依頼できる範囲が登記の申請だけではないという点です。司法書士法3条1項は、代理だけでなく、法務局に出す書類の作成と、それらについての相談まで業務としています。定款は権利義務に関する書類として司法書士も作成でき、公証役場での認証手続きも扱えます。
ですから、会社設立の定款から登記までを一人の専門家に任せたいのであれば、司法書士への依頼で通ります。逆に、許認可が要る事業なら行政書士、設立後の税務なら税理士、社会保険なら社会保険労務士と、登記の外側は別の分野に移ります。ここは資格の優劣ではなく、担当の区切りです。
会社設立を依頼する前に、日本司法書士会連合会の司法書士検索で相手が登録された司法書士かどうかを確かめておくこともできます。個別の見積もりの妥当性や、ご自身の会社設立にどこまでの依頼が必要かは、当サイトでは判断していません。複数の専門家に相談し、見積もりを取ったうえでお決めください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。