会社設立の依頼先は、この順番で決めます|会社の形から相談窓口・見積もり・資格の確認まで
この記事は、こんなところで止まっている方のためのものです
- 会社設立の依頼先を探しはじめたものの、事務所のページをいくつ開いても書いてあることが似ていて、どこを基準に選べばいいのか分からなくなっている方。
- 「税理士と司法書士のどちらに声をかけるべきか」を先に決めようとして、そこで止まってしまっている方。この記事の立場は逆で、依頼先より先に、頼みたいことのほうを決めます。
- 扱うのは、依頼先を決めるまでの順番です。会社の形を決めるところから、公的な相談窓口の使い方、見積もりで見る項目、資格の確かめ方までを順に並べます。特定の事務所やサービスを比べたり、順位を付けたりはしません。費用の内訳や節約の方法も扱いません。
依頼先から探すと決まりません。頼みたいことから決めます

会社設立の依頼先を決めきれない、という相談の多くは、探し方の順番でつまずいています。事務所の比較ページを開き、料金と対応範囲を見比べ、どれも似ていて決まらない。そのうち会社設立そのものが止まってしまう。よくある流れです。
順番を入れ替えると、この行き詰まりはほどけます。先に決めるのは依頼先ではなく、頼みたいことのほうです。会社設立でやることは、登記・税務の届出・社会保険の届出・許認可の四つに分かれ、それぞれ担当できる資格が法律で決まっています。頼みたいことが決まれば、声をかける専門家は自動的に絞られます。
| 依頼先 | 会社設立で担当できること | 担当できないこと |
|---|---|---|
| 司法書士 | 設立登記の申請の代理、登記申請書類の作成、登記の相談。定款の作成と認証の手続きも扱える | 税務書類の作成・税務相談、社会保険の届出の代行 |
| 行政書士 | 定款の作成、公証役場での定款認証の手続き、許認可の申請 | 登記申請書類の作成と登記申請の代理、税務、社会保険 |
| 税理士 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談。法人設立届出書などの届出、設立後の記帳・申告・顧問 | 登記申請書類の作成、社会保険・労働保険の届出の代行 |
| 社会保険労務士 | 健康保険・厚生年金の新規適用届、労働保険の保険関係成立届などの作成と提出代行 | 登記、税務 |
| 弁護士 | 法律事務全般。登記申請の代理も可。税務は所属弁護士会を経て国税局長に通知すれば可 | 監査証明 |
根拠は司法書士法3条1項、行政書士法1条の3、税理士法2条1項・51条1項、社会保険労務士法2条1項、弁護士法3条1項です。この線引きは事務所によって変わるものではありません。
この表は動かせない前提です。そのうえで、どの行が自分に必要になるのかを決めていくのが、依頼先を決める作業の中身になります。以下では、その順番を五つの段階に分けて並べます。

会社設立の依頼で最初に決めるのは、事務所ではなく会社の中身です。商号、事業目的、資本金、役員、決算期。ここは独占業務のどれにも入っておらず、決めるのは発起人自身です。専門家に相談できるのは助言までなので、ここが決まらないと依頼そのものが前に進みません。
出典会社設立代行とは|必ず知っておきたい6つの基礎知識(GMOあおぞらネット銀行) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。
最初に決めるのは会社の形です。株式会社か、合同会社か

会社設立の依頼先を考えるうえで、いちばん先に決めておきたいのが会社の形です。株式会社にするのか、合同会社にするのか。ここが決まらないと、依頼する仕事の中身が決まりません。
なぜかというと、株式会社には定款の認証という工程があり、合同会社にはないからです。会社法は、株式会社の発起人が作成した定款について公証人の認証を受けなければならないと定めていますが、持分会社の定款には認証の規定を置いていません。工程が一つ違えば、依頼する範囲も、依頼先に確かめることも変わってきます。

どちらを選ぶかは、依頼先を決める話とは別の判断です。出資者を広く募る予定があるか、取引先や採用で会社の形が見られる場面があるか、意思決定の仕組みをどうしたいか。このあたりを踏まえて決めることになります。判断に迷うときは、後の見出しで挙げる公的な相談窓口や、会社法に詳しい専門家に相談してください。
株式会社で進めるなら、依頼先には「定款の認証まで含みますか」「電子定款に対応していますか」と聞けます。合同会社なら認証の工程がないので、聞くのは定款の作成と登記の範囲です。会社設立の見積もりが比べにくいのは、この前提がそろっていないことが多いからです。
なお、会社の形を途中で変えることはできますが、いったん設立したあとの変更は別の手続きになります。会社設立の依頼を出す前に決めておくほうが、結果として手間は少なくなります。
出典株式会社の設立手続き(中小企業基盤整備機構 J-Net21)
定款認証があるかどうかで、依頼の範囲が変わります

会社の形が決まったら、次はその形にひもづく工程を確かめます。会社設立の依頼で見落とされやすいのが、定款の認証をどこまで頼むのかという部分です。
株式会社の場合、定款は作っただけでは足りず、公証人の認証を受けてはじめて効力を持ちます。この認証の手続きは、行政書士・司法書士・弁護士が依頼を受けて行えます。定款の作成だけを依頼して、認証は自分で公証役場に行くという分け方もできますが、その場合は自分の手間が増えます。見積もりを見るときは、認証の手続きが含まれているかどうかを必ず確かめてください。

電子定款に対応しているかどうかは、依頼先を選ぶときの実質的な確認項目になります。専門家に依頼すると電子定款で進むのが通常ですが、そこは案内に書かれていないこともあるので、確かめておくほうが確実です。
登録免許税、定款認証の手数料、紙の定款の収入印紙。これらは実費(法定費用)で、依頼先によって変わりません。見積書の金額に差が出るのは報酬の部分です。会社設立の見積もりを比べるときは、この二つを分けて見てください。
ここまでで、頼みたい仕事の骨格は決まりました。次は、そこに足していく要素です。
出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。
許認可・雇用・設立後の顧問。頼みたいことを足していきます

会社の形が決まったら、そこに自分の事業の条件を足していきます。ここで足す要素は三つ。許認可が要るか、人を雇うか、設立後の税務を任せたいか。この三つで、必要な専門家の顔ぶれが決まります。
- 営業に許認可が要るか建設業、飲食業、古物商、産業廃棄物、運送業、人材紹介など、営業そのものに行政の許可や届出が必要な業種があります。許認可の申請は行政書士の分野です。会社の事業目的の書き方が許認可の審査に効くことがあるため、定款を作る段階から相談できると回り道が減ります。
- 人を雇う予定があるか従業員を雇うなら、労働保険の保険関係成立届や雇用保険の適用事業所設置届が要ります。社会保険労務士の分野です。法人は代表者ひとりでも健康保険・厚生年金の適用事業所になるので、雇わない場合でも新規適用の手続きからは逃れられません。
- 設立後の記帳や申告を任せたいか法人設立届出書などの税務の届出と、その後の記帳・申告・顧問は税理士の分野です。会社設立の段階から相談すると、資本金の額や決算期の決め方について助言を受けられます。
- 出資や株主の設計が複雑か共同で出資する、外部からの投資を予定している、といった場合は、持分や議決権の設計に踏み込むことになります。弁護士への相談も選択肢に入ります。

当てはまる項目が複数あっても、依頼する側が全部の専門家を自分で探して回る必要はありません。会社設立を扱い慣れた事務所であれば、提携先との分担はあちらで組み立ててくれます。確かめるのは「全部やってくれますか」ではなく、それぞれの仕事を誰が担当するのかです。
逆に、当てはまる項目がひとつもないなら、会社設立の依頼は登記が中心になります。この場合は司法書士に依頼するか、自分で申請するかを比べることになります。どちらを選んでも問題はありません。時間を掛けられるかどうかで決めてください。
出典主な許認可窓口(東京商工会議所)
迷ったら、まず公的な窓口で輪郭をつかむ

ここまでの整理が自分だけでは進まない、ということはよくあります。そのときにいきなり事務所探しに戻ると、また同じところで止まります。会社設立を考えている人が使える公的な相談の入口があるので、先にそちらで輪郭をつかむほうが早い場合があります。
- 商工会議所の創業支援各地の商工会議所が、創業を考えている人向けの相談やセミナーを行っています。会社設立の手続きだけでなく、事業計画や資金の話まで含めて相談できるのが特徴です。会員でなくても利用できる窓口があります。
- 中小企業庁の創業・スタートアップ支援国の側の入口です。創業支援の制度や、地域ごとの支援機関の情報がまとまっています。どんな支援があるのかを俯瞰したいときに向いています。
- 法務局の登記手続案内会社設立の登記そのものについて、法務局が手続きの案内を行っています。申請書の様式と記載例も公開されています。登記の中身についての一般的な案内はここが本家です。
- 各士業会の相談窓口司法書士会の総合相談センターや、弁護士会のひまわりほっとダイヤルなど、士業の団体が運営する相談の入口もあります。特定の事務所の宣伝ではないので、比べる前の情報収集に使えます。

会社設立の相談で「まだ何も決まっていないのに行っていいのか」と迷う方がいますが、決まっていないから相談するというのが本来の使い方です。決まっていないことを整理してもらう、という頼み方で構いません。
なお、公的な窓口は個別の依頼先を推薦する場所ではありません。「どの事務所がいいですか」と聞いても答えは返ってきません。そこは自分で比べる部分なので、次の見出しに進みます。
出典創業・スタートアップ支援(中小企業庁) ページ名は「創業・起業支援」ではない。
見積もりを取るときに、どこを見るか

頼みたいことが決まったら、いよいよ見積もりです。ここで大事なのは金額の大小ではなく、比べられる形になっているかです。前提がずれた見積もりを並べても、安いか高いかは判断できません。

報酬の水準そのものについては、士業の全国団体が公表している統計から幅として確かめられます。日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した報酬アンケートでは、発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立について、定款や議事録などの書類の作成、定款認証の手続き、登記申請の代理まで含めた設例に対する平均が107,887円(有効回答932件)でした。設例の前提が変われば金額も変わります。
日本行政書士会連合会の報酬額統計調査(令和7年度)では、「会社設立手続」の平均が106,371円、最頻値110,000円、最小7,000円、最大550,000円(回答287件)となっています。金額には消費税が含まれ、立替金は含まれません。株式会社と合同会社を分けた項目は、この統計にはありません。
司法書士・行政書士と違い、税理士には全国団体が公表している報酬の統計が存在しません。設立サポートの料金や顧問料は、各事務所が公開しているものを見比べるしかない、というのが前提になります。顧問料は事業の規模や訪問の頻度で変わるため、見積もりを取って確かめてください。
見積書に「設立手数料は無料」と書かれている場合は、誰の報酬が無料なのかを確かめてください。登記の実費と司法書士の報酬は別なのか、顧問契約が条件になっているのか、月額と最低契約期間はどうなっているのか。この四つを並べれば、総額で比べられる形になります。
出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…
最後に、資格そのものを確かめてから決める

依頼先の候補が絞れたら、最後にひとつ確かめておくことがあります。その相手が、本当に登録された有資格者かどうかです。会社設立の登記も税務の届出も社会保険の届出も、資格を持つ人だけが業として担当できる仕事なので、ここは押さえておく価値があります。
難しい作業ではありません。各士業の全国団体が名簿の検索を公開しているので、氏名や事務所名で引くだけです。特定の依頼先を勧めるものではなく、どこを選ぶ場合にも共通して使える確認の手段です。
- 司法書士日本司法書士会連合会が司法書士検索を公開しています。登記を担当する人の登録を確かめられます。
- 税理士日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで、登録の内容のほか懲戒処分の有無も確認できます。国税庁も税理士の探し方の案内を出しています。
- 行政書士日本行政書士会連合会が会員検索を公開しています。定款の作成や許認可を依頼する場合はここで確かめられます。
- 社会保険労務士全国社会保険労務士会連合会には全国横断の個人検索がなく、都道府県ごとの社労士会の一覧が公式の入口になります。所在地の会に問い合わせる形になります。
- 弁護士日本弁護士連合会の弁護士情報検索で、登録されているすべての弁護士を検索できます。

会社設立の依頼は、多くの方にとって一度きりの取引です。登録を確認したうえで依頼するのは自然なことで、まっとうな専門家であれば嫌がる理由がありません。担当者の資格を尋ねて、普通に答えが返ってくるかも、あわせて見ておくとよい目印になります。
ここまで確かめたら、あとは決めるだけです。順番どおりに進んできていれば、比べる軸はすでにそろっています。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
まとめ|会社設立の依頼先は、順番どおりに決めれば絞れます

会社設立の依頼先を決めるまでの順番を、五つの段階に分けて見てきました。最後に短くまとめます。
- 第一に、会社の形を決める株式会社か合同会社か。定款認証の有無で、依頼する工程が一つ変わります。
- 第二に、頼みたいことを足す許認可、雇用、設立後の顧問。当てはまるほど関わる専門家が増えます。
- 第三に、公的な窓口で輪郭をつかむ商工会議所、中小企業庁、法務局の登記手続案内。特定の依頼先に誘導されない入口です。
- 第四に、見積もりを取って比べる実費と報酬が分かれているか、範囲はどこまでか、電子定款に対応しているか。
- 第五に、資格を確かめて決める各士業の全国団体の会員検索で、登録された有資格者かどうかを確認します。
依頼しない、という結論も同じ順番から出てきます
この順番をたどった結果、「登記だけなら自分でやってみよう」という答えになることもあります。会社設立を自分で申請するのは合法で、法務局が商業・法人登記の申請書様式と記載例を公開しており、登記・供託オンライン申請システムからの申請にも対応しています。デジタル庁の法人設立ワンストップサービスを使えば、税や社会保険の届出まで本人の名前でまとめて申請できます。
時間を掛けられるか、許認可が要るか、設立後に顧問を付けるか。この三つで、依頼するかどうかはおおよそ決まります。依頼しない選択を最初から外す必要はありません。

会社設立の依頼先選びが難しく感じるのは、選択肢が多いからではなく、選ぶ順番が示されていないからだと思います。頼みたいことから決めて、条件を足して、輪郭をつかんで、見積もりを取って、資格を確かめる。この順番で進めば、依頼先は最後に自然と絞れます。制度も統計も改正・更新されますので、実際に判断されるときは、記事に添えた出典で最新の内容をご確認ください。
出典商業・法人登記申請手続(法務局)
決める順番さえ守れば、依頼先はあとから絞れます
会社設立の依頼先が決まらないとき、たいていは順番が逆になっています。依頼先を先に選ぼうとして、事務所の比較から入る。けれども、頼みたいことが決まっていなければ、比べる軸そのものが立ちません。会社の形を決め、許認可と雇用と設立後の顧問の要否を足していけば、必要な専門家の顔ぶれは自然に決まります。そこまで来てはじめて、どの事務所に声をかけるかという話になります。
途中で分からなくなったら、いきなり依頼先を探しに戻らず、公的な相談窓口を使ってください。商工会議所の創業支援、中小企業庁の創業・スタートアップ支援、法務局の登記手続案内。どれも会社設立を考えている人が使える入口で、特定の事務所に誘導されるものではありません。輪郭をつかんでから見積もりを取るほうが、比べる作業はずっと楽になります。
そして、順番どおりに考えた結果、依頼しないという答えが出ることもあります。会社設立を自分で申請するのは合法で、法務局が様式と記載例を公開しています。依頼するかどうかも含めて、この記事の順番が判断の助けになれば十分です。個別の事情による判断は、それぞれの専門家や所管の窓口にご相談ください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。