「会社設立は行政書士へ」という案内は、どこまでを指しているのか|定款までか、登記は提携先か
この記事は、こういう方に向けて書いています
- 行政書士の事務所のページで「会社設立をまるごと承ります」という案内を見つけ、登記まで含まれるのかどうかを確かめたい方。
- 会社設立の相見積もりを取っていて、同じ「会社設立一式」でも事務所ごとに中身が違うのではないかと感じている方。
- この記事は、特定の事務所や案内を疑わせるためのものではありません。行政書士に会社設立を依頼できるのは事実です。書いているのは、言葉の指す範囲を依頼する側からそろえる方法だけで、業者を名指しして評価することはしていません。
- 会社設立でやること全体と、士業ごとの線引きをまとめて確かめたい方は、会社設立を誰に頼むかの全体像からお読みください。
01「会社設立をお任せください」の中に、何が入っているか

会社設立という言葉は、実際には複数の手続きの束です。定款をつくり、認証を受け、出資を払い込み、登記を申請し、会社ができたら税務と社会保険の届出を出す。この一つひとつで、業として担当できる資格が違います。

「会社設立をお任せください」という一文は、この表のどこからどこまでを指しているのか。書き手はそこまで書いていないことが多いのですが、依頼する側にとっては、そこがいちばん知りたいところです。
事務所のページは限られた行数で書かれますし、実際に窓口としてまとめて引き受けているのであれば「お任せください」は正確な表現です。ここで扱うのは、依頼する側が範囲をそろえる方法であって、案内の善し悪しではありません。当サイトでは特定の事務所や業者を名指しして評価することはしていません。
出典会社設立で代行できる手続きとは?専門家に依頼するメリット・デメリットと選び方(freee) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
02行政書士に会社設立を依頼できるのは本当です

先に、はっきりさせておきます。行政書士に会社設立を依頼できます。これは事実で、あいまいなところはありません。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
定款は会社と発起人の権利義務を定める書類ですから、この後半にあたります。株式会社なら公証役場での認証の手続きも扱えますし、1条の4第1項1号により、官公署に提出する書類の提出手続と許認可等に関する代理も業務です。会社設立の入口と、許認可の入口の両方を担える専門家ということになります。
依頼できないのは、設立登記の申請の代理と登記申請書類の作成です。行政書士法1条の3第2項が「その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない」と定めていて、その「他の法律」が司法書士法にあたります。
改正により、旧1条の2が現行の1条の3、旧1条の3が現行の1条の4になりました。現行の1条の2は「職責」の条です。古い解説には旧番号のままのものが残っていますので、条文を引くときは確認した日付とあわせて見てください。この記事は2026年9月1日に確認しています。
出典行政書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2026年5月21日施行の改正で条がずれた。現行は1条の3が業務、1条の4が代理等、1条の2は職責。19条1項違反の罰則は21条の2(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
03案内の形は、だいたい三つに分かれます

行政書士の事務所が会社設立を案内しているとき、実際の組み立ては次の三つのどれかであることがほとんどです。どれが正しいということはなく、どれも通常の形です。

案内の文面からこの違いを読み取るのは、正直なところ難しいと思います。「会社設立一式」「まるごとサポート」という書き方は、どの形でも使われるからです。ですから、文面を読み解こうとするより、一言聞いてしまうほうが早いです。
複数の専門家に別々に依頼すると、同じ説明を二度することになり、書類の受け渡しも二本立てになります。窓口がひとつなら、そこが手間を引き受けてくれます。分担していること自体は、依頼する側にとって不利益ではありません。確かめたいのは、その中で誰が登記を担当するのかという点だけです。
出典会社設立代行とは|必ず知っておきたい6つの基礎知識(GMOあおぞらネット銀行) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。
04確かめる言い回しを、いくつか用意しておく

問い合わせや初回の面談で使える聞き方を並べます。どれも依頼の範囲をそろえるための質問で、相手を試すものではありません。きちんと分担している専門家であれば、聞かれて困る質問ではないはずです。

なかでも効くのは一つ目です。「登記はどなたが担当されますか」。この質問への答えで、案内が指していた範囲がだいたい分かります。司法書士の名前や提携先の話が出てくれば、右側の形。「登記はお客様のほうでお願いします」と返ってくれば、左側の形です。
出典会社設立手続きは司法書士に依頼できる?法人設立の相談先の選び方(弥生) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
05見積書のどこを見るか

口頭で聞いたことは、見積書で裏づけを取っておくと確実です。会社設立の費用は実費(法定費用)と報酬に分かれていて、実費は誰に依頼しても、自分で手続きしても同じ額です。まずこの二つが分かれて書かれているかを見てください。
行政書士の報酬については、日本行政書士会連合会が報酬額統計調査を公表しています。令和7年度の「会社設立手続」は、回答287件・平均106,371円・最頻値110,000円・最小7,000円・最大550,000円。金額には消費税を含み、立替金は含みません。
最小7,000円から最大550,000円まで開いているのは、同じ「会社設立手続」という項目名でも、定款だけなのか、認証まで含むのか、登記の窓口まで担うのかが回答者ごとに違うためだと考えられます。なお、この統計に株式会社と合同会社を分けた数値はありません。金額を比べるときは、まず範囲をそろえてください。
当サイトでは費用の内訳表や試算は扱っていません。ここで書いているのは、見積書のどこを見れば範囲が分かるかという読み方だけです。
出典報酬額の統計(日本行政書士会連合会) 令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)。消費税を含み立替金は含まない。会社設立手続は回答者287/平均106,371円/最小7,000円/最大550,000円/最頻値110,…
06返ってきた答えごとの、次の一手

「登記はどなたが担当されますか」に対して返ってくる答えは、だいたい三通りです。それぞれの次の一手を並べておきます。

「登記はご本人で申請していただきます」という答えも、それ自体はまったく問題ありません。本人申請は合法で、法務局が申請書の様式や手続案内を公開しています。ただ、依頼する側がそのつもりでなかった場合に行き違いになりますので、どちらが申請するのかを書面ではっきりさせておくのがよいと思います。
2025年6月1日から、刑法の改正にともなって「懲役」は「拘禁刑」に置き換わりました。司法書士法78条1項も行政書士法21条の2も、現行は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」です。なお、行政書士法19条1項のただし書には「他の法律に別段の定めがある場合」に加えて、総務省令で定める定型的な手続について総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合という除外もあります。「無資格なら一切できない」と単純化しないでください。
出典非行政書士行為について(大阪府行政書士会)
07窓口をひとつにする形の、良いところと注意点

行政書士の事務所が窓口になって会社設立を進める形には、はっきりした良いところがあります。同時に、確かめておくところもあります。両方を並べます。
良いところ
- 説明を一度で済ませられる。同じ話を複数の専門家に繰り返さなくてよい。
- 書類の受け渡しが一本にまとまる。印鑑証明書などの原本の行き来が減る。
- 定款から登記までの段取りを、窓口が組んでくれる。
- 許認可が要る事業なら、目的の書き方から申請まで続けて見てもらえる。
確かめておくところ
- 登記を担当する資格者が誰か。事務所内か、提携先か。
- 見積書に司法書士の報酬が含まれるか、別に請求されるか。
- 登記の段で連絡先が変わるのか、窓口のままなのか。
- 追加費用が発生する条件。
会社設立を自分で進めることもできます。法務局が商業・法人登記の手続案内と申請書の様式を公開していますし、マイナポータルの法人設立ワンストップサービスを使えば、定款認証から登記、税と年金の届出までを本人が一括で申請できます。本人申請は合法で、現実的な選択肢のひとつです。依頼するかどうかは、時間と手間をどう配分するかの判断になります。
会社設立の依頼は、手間と時間を買う選択です。自分で進めるのが危険だということはありません。判断の材料になるのは、許認可の有無、資本金や役員構成の複雑さ、設立後に顧問を付けるつもりがあるか、そして手続きに割ける時間です。
出典会社設立は誰に頼む?司法書士・行政書士・税理士に依頼できること(マネーフォワード) 実務上の運用と料金の目安の補助として使う。法解釈の出典には使わない。
08資格の登録は、名簿で確かめられます

依頼しようとしている相手が登録された専門家かどうかは、各団体の名簿で確かめられます。特定の事務所を勧めるものではなく、どの依頼先を選ぶ場合にも共通して使える確認の手段です。
会社設立の依頼で確かめたいのは、たいてい行政書士と司法書士の二つです。窓口が行政書士なら行政書士の登録を、登記の担当者を教えてもらえたならその司法書士の登録を。二つ調べれば、範囲と担当の対応が取れます。
会員検索は公開されている名簿を見るだけの作業で、相手に断る必要もありません。依頼する側の当然の準備として行ってください。当サイトは、特定の事務所やサービスを比較したり順位を付けたりはしていません。
出典行政書士会員検索(日本行政書士会連合会) 末尾スラッシュなしが実効URL。
09まとめ|案内は正しい。範囲だけ自分でそろえる

「会社設立は行政書士へ」という案内の読み方を、短くまとめます。
- 案内そのものは正しい定款の作成と認証の手続きは行政書士法1条の3第1項の業務です。許認可も1条の4第1項1号で扱えます。行政書士は会社設立の依頼先として通常の選択肢です。
- 登記だけは別の資格設立登記の申請の代理と登記申請書類の作成は司法書士(および弁護士)の分野です。行政書士法1条の3第2項と司法書士法73条1項によります。
- 案内の形は三つ定款までを引き受ける形、提携する司法書士まで含めて窓口になる形、事務所内に両方の資格者がいる形。どれも通常の形です。
- 聞くのは一言でよい「登記はどなたが担当されますか」。この答えで、案内が指していた範囲がだいたい分かります。
- 見積書で裏づけを取る実費と報酬が分かれているか、登記の報酬が含まれるか、追加費用の条件が書いてあるか。
- 自分で進めることもできる本人申請は合法です。法務局の手続案内や法人設立ワンストップサービスが使えます。依頼は手間と時間を買う選択です。
会社設立の依頼で行き違いが起きるのは、多くの場合範囲の思い違いからです。逆にいえば、範囲さえそろえておけば、あとは金額と相性の話になります。相見積もりを取るときも、範囲がそろっていないと比べようがありません。最初の一言が、いちばん効きます。
この記事の内容は2026年9月1日時点で、e-Gov法令検索の現行条文と各団体の公表資料で確認したものです。制度も統計も改まりますので、実際に判断されるときは各セクションに添えた出典で最新の内容をご確認ください。個別の依頼の可否や見積もりの妥当性については、行政書士や司法書士といった専門家に直接ご相談ください。
出典行政書士とは(日本行政書士会連合会) 官公署提出書類の作成・提出代理と、権利義務・事実証明の書類作成
聞き方をひとつ決めておけば、それで足ります
「会社設立は行政書士へ」という案内は、間違ってはいません。定款の作成と公証役場での認証の手続きは行政書士の本来の分野で、行政書士法1条の3第1項が根拠になります。許認可が要る事業なら、そのまま申請まで見てもらえます。依頼先としてまっとうな選択肢です。
そのうえで、会社設立には設立登記が必ず含まれます。ここは司法書士(および弁護士)の分野なので、行政書士の事務所が窓口になる場合、登記は事務所内の司法書士か提携先が担当します。この形に問題はありません。依頼する側がすることは、「登記はどなたが担当されますか」と一度聞いて、見積書のどこに入っているかを見るだけです。
会社設立の依頼で行き違いが起きるのは、多くの場合範囲の思い違いからです。金額を比べる前に範囲をそろえておけば、比べる作業そのものが楽になります。個別の見積もりの妥当性については当サイトでは判断していません。複数の専門家から見積もりを取って、書面で確かめてください。この記事の内容は2026年9月1日時点で確認したものです。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。