会社設立の登記は税理士に頼める?登記申請を担う専門家と、登記のあとに来る税理士の出番
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このページが役に立つのは、たとえばこんなとき
- 会社設立の相談をしている税理士から「登記もこちらで手配します」と言われ、税理士が自分で法人登記をしてくれるのか、それとも別の誰かが入るのかがよく分からないまま話が進んでいるとき。
- 「会社 登記 税理士」と検索したら、「税理士は登記できない」という記事と「税理士に設立を丸ごと任せた」という体験談が両方出てきて、どちらが正しいのか混乱しているとき。
- ここでは、会社設立の登記と税理士の関係を、条文と手続きの順番から説明します。登記申請の手順そのものや、書類の書き方には踏み込みません。分かるようになるのは、登記を誰が担い、税理士はどこから関わるのかという役割の線です。
- 会社設立で税理士に頼めること・頼めないことの全体を先に確かめたい方は、会社設立と税理士の全体像(トップ)からお読みください。
会社設立の登記は税理士に頼める?担当できる専門家を表で確かめる

最初に答えを書いておきます。会社設立の登記申請を、税理士に代理してもらうことはできません。登記申請書や添付書類を税理士に作ってもらうこともできません。登記を業として扱えるのは司法書士と弁護士です。そのうえで、会社設立で出てくる仕事をどの専門家が担当できるのかを、表で確かめます。
| 会社設立の仕事 | 税理士 | 司法書士 | 行政書士 | 社労士 | 弁護士 |
|---|---|---|---|---|---|
| 設立登記の申請の代理 | できない | できる | できない | できない | できる |
| 登記申請書・添付書類の作成 | できない | できる | できない | できない | できる |
| 登記についての相談 | できない | できる | できない | できない | できる |
| 定款の作成・認証の手続き | できない | できる | できる | できない | できる |
| 法人設立届出書など税務の届出 | できる | できない | できない | できない | 通知すればできる |
| 設立後の記帳・決算・申告 | できる | できない | できない | できない | 通知すればできる |
| 社会保険・労働保険の届出 | できない | できない | できない | できる | できない |
| 営業の許認可の申請 | できない | できない | できる | できない | できる |
確認日 2026年10月17日。司法書士法3条1項・73条1項、税理士法2条1項・51条1項、行政書士法1条の3・1条の4、社会保険労務士法2条1項・27条、弁護士法3条による。弁護士の税務は、所属弁護士会を経て国税局長に通知した場合に限られます。
税理士の列を上から見ていくと、登記に関わる三行がすべて「できない」になっています。登記の申請、登記書類の作成、登記の相談の三つは、司法書士法3条1項の1号・2号・5号にあたる仕事で、税理士の資格の範囲には入っていません。
一方で、税理士にしかできない仕事もはっきりあります。法人設立届出書をはじめとする税務の届出と、設立後の記帳・決算・申告です。会社設立という一つの出来事のなかで、登記と税務は担当者が入れ替わると覚えておくと、案内の言葉に迷わなくなります。
他人の依頼を受け、報酬を得て業として行えるかどうかの話です。自分の会社の登記を自分で申請するのは、資格がなくてもできます。
出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
会社は登記で成立する。登記申請を代理できる資格を決めている条文

登記がなぜこれほど大事に扱われるのかは、会社法を見ると分かります。株式会社については会社法49条が「その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定め、合同会社などの持分会社についても579条が同じ書き方をしています。登記が通った日が、会社の誕生日です。

つまり、会社を生み出す登記申請は、司法書士法で司法書士の仕事とされ、ほかの者が業として扱うことは禁じられています。税理士の業務を定めた税理士法2条1項は「租税に関し」という枠のなかで税務代理・税務書類の作成・税務相談を挙げていて、法務局への登記申請はその枠の外にあります。
出典会社法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 26条1項・30条が株式会社の定款と認証、575条が持分会社の定款(認証の規定はない)、579条が設立の登記による成立。
税理士が法人登記の書類を作ると、何が問題になるのか

「会社 登記 税理士」と調べると、税理士が登記をするのは違法だという記事が目に入ります。正確にいうと、問題になるのは税理士が他人の登記申請書類を業として作成したり、申請を代理したりした場合です。税理士事務所が窓口になって会社設立を受けること自体が違法なのではありません。
司法書士法73条1項に違反すると、同法78条1項により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が定められています。依頼者の名前で申請させる形にしても、書類を税理士側が業として作っていれば、この線を越えることになりえます。

2025年6月1日の刑法改正で「懲役」は「拘禁刑」に置き換わりました。古い解説の「1年以下の懲役」は、改正前の条文を写したものです。
依頼する側が覚えておくとよいのは、登記の書類に司法書士の名前が出てくるかどうかです。申請書の代理人欄、見積書の司法書士報酬の行、どちらかで確かめられます。何も出てこないまま「登記もうちで」とだけ言われたときは、担当者を一度聞いてみてください。聞かれて困る専門家はいません。
出典ニセ司法書士にご用心(東京司法書士会)
「登記もまとめて」と案内する税理士事務所で、登記申請を担っているのは誰か

税理士事務所のなかには、「会社設立は登記も含めてまとめてお任せください」と案内しているところがあります。この場合、登記申請を担っているのは提携している司法書士か、同じグループに所属する司法書士です。依頼の窓口が税理士事務所で、登記の部分だけ司法書士が受け持つ、という組み立てです。

この形は、依頼する側にとって説明を一度で済ませられるという利点があります。商号・本店・役員・資本金といった情報は、登記にも税務の届出にも共通して使うからです。窓口が一つなら、同じことを二か所で話す手間が省けます。
- 誰の報酬が含まれているか見積書に司法書士の報酬が別の行で載っているか、税理士の報酬に含めて表示されているかを確かめます。
- 実費はどう扱われるか登録免許税などの実費は、誰に頼んでも同じ額です。「0円」と書かれていても、実費まで0円になることはありません。
- 顧問契約が前提か設立サポートを安くする代わりに、設立後の顧問契約を条件にしている場合があります。月額と最低契約期間を確かめます。
「登記はどなたが担当されますか」と聞けば、たいてい「提携の司法書士の先生です」と返ってきます。それで十分です。疑うための質問ではなく、範囲をそろえるための質問として、気軽に聞いてください。
出典司法書士の業務(日本司法書士会連合会)
登記が終わってから始まる、税理士の出番

会社設立の登記が通ると、その日が設立日になります。そこから、税務の届出の期限が一斉に動き出します。税理士の出番は、まさにこのタイミングから本格的に始まります。国税庁の案内で確かめた主な届出は次のとおりです(2026年10月17日確認)。

いずれも、提出の起点は設立日、つまり登記の日です。登記の申請日をいつにするかが決まった時点で、届出の締め切りもほぼ決まります。税理士に依頼するなら、登記の予定日を早めに伝えておくと準備がしやすくなります。
届出は自分で出すこともできます。国税庁のホームページに様式と記載要領が載っていて、電子申告にも対応しています。ただ、青色申告の承認申請のように出し忘れると第1期に影響が出るものもあるので、税理士に頼まない場合は期限を手帳に書き出しておくと安心です。
資本金の額や決算期は、登記をしたあとに変えるには手間がかかります。設立後に税理士を付けるつもりなら、登記の前に一度相談しておくと、届出の準備も含めて流れが滑らかになります。
出典C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁)
会社の登記を自分で申請するのも合法。税理士への依頼とは切り離して考える

登記申請を代理できるのは司法書士と弁護士ですが、それは他人の登記を業として扱う場合の話です。自分の会社の登記を自分で申請するのは合法で、法務省も一人で設立する会社について完全オンライン申請を案内しています。手順はこのサイトでは扱いませんが、選択肢としては十分に現実的です。

大事なのは、登記をどうするかと、税理士に頼むかどうかは、別々に決められるという点です。登記を自分で出しても、設立後の記帳と申告は税理士に任せる、という会社は珍しくありません。逆に、登記は司法書士に頼み、税務は会計ソフトで自分でこなす、という会社もあります。
どの組み合わせを選んでも、法務局に出す書類と税務署に出す書類は別物です。迷ったら、法務局の登記相談や、税務署の窓口で一般的な案内を受けることもできます。
会社設立の登記を自分で申請すると決めた場合でも、設立後の税務の届出や記帳を税理士に依頼することはできます。反対に、登記は司法書士に依頼し、税務は自分で進めるという分け方もあります。会社設立の手続きは資格ごとに切り分けて、それぞれ依頼先を選べる、というのがこの記事で一番伝えたいことです。
出典法務省:一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!(法務省) 一人株式会社・一人合同会社は公的個人認証サービス電子証明書で全添付書面に電子署名でき、完全オンライン申請が可能
登記の費用は実費と司法書士の報酬。税理士の報酬はその外にある

会社設立の登記にかかるお金は、登録免許税などの実費と、司法書士に頼んだ場合の報酬に分かれます。実費は誰に頼んでも、自分で申請しても同じ額です。税理士の報酬は、この二つとは別の仕事、つまり税務の相談や届出、設立後の顧問に対する支払いです。

司法書士の報酬の目安としては、日本司法書士会連合会の「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施)があります。発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款などの書類をすべて作成し、定款認証と登記申請を代理した場合という設例で、有効回答932件の平均が107,887円でした。前提が違えば金額も変わり、事務所によって異なります。
税理士の報酬には公的な統計がありません。比べるときは各事務所の公開料金を、設立時の金額と顧問料の月額・契約期間をそろえて並べてください。「登記費用込み」と書かれている場合は、そこに実費が含まれるのか、司法書士の報酬だけなのかも確かめておきます。
出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…
まとめ|会社設立の登記は司法書士、税理士は登記のあとから

会社設立の登記と税理士の関係について、ここまでの要点を並べます。

- 税理士は登記申請を代理できない登記書類の作成も含め、司法書士法73条1項で司法書士と弁護士に限られています。
- 「登記もまとめて」は提携の形税理士事務所が窓口でも、登記は提携や所属の司法書士が担当しています。この形そのものに問題はありません。
- 税理士の出番は登記のあと法人設立届出書は設立登記の日以後2か月以内。青色申告や給与の届出にも期限があります。
- 本人申請も合法自分の会社の登記を自分で申請するのは自由です。税理士に頼むかどうかとは別に決められます。
依頼する前に、資格を確かめておく
税理士は税理士情報検索サイトで、登記を担当する司法書士は司法書士検索で登録を確かめられます。特定の事務所を勧めるためのものではなく、どの専門家を選ぶ場合にも共通して使える手段です。
登記と税金は、会社設立という一つの出来事のなかで続けて出てくるので、同じ人が全部やってくれるように見えがちです。けれども実際には、担う資格も、提出する役所も、関わる時期も違います。そこが見えていれば、依頼先の案内を落ち着いて読めるはずです。法令や手続きは改められることがあるので、判断の前には出典で最新の内容をご確認ください。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
登記と税金は、別の専門家の別の仕事です
会社設立の登記は、会社をこの世に生み出す手続きです。その申請を他人の代わりに業として行えるのは司法書士と弁護士だけで、税理士の資格には登記が含まれていません。税理士事務所が「登記も」と言うとき、その中身は提携や所属の司法書士が担う形になっています。この形そのものは、依頼する側にとって便利な仕組みです。
税理士の本当の出番は、登記が終わった瞬間から始まります。法人設立届出書、青色申告の承認申請、給与の支払いに関する届出、そして毎月の記帳と年一回の申告。会社が成立してからの時間のほうが、ずっと長いことを思い出してください。
登記を自分で申請することも、税務の届出を自分で出すことも、どちらも合法です。どこまでを専門家に依頼するかは、ご自分の時間と、設立後に任せたいことから決めてください。制度は改正されることがありますので、2026年10月17日時点の内容として読み、最終的な判断は各専門家にご相談ください。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。