会社設立は税理士と司法書士のどっちに頼む?違い・両方に頼むときの分担・税理士が登記をすると違法になる理由
こんな迷い方をしている方へ
- 「会社設立 税理士 司法書士」と並べて調べてみたものの、どっちの事務所にも「会社設立はお任せください」と書いてあって、結局どこに電話すればよいのか決まらない方。
- 税理士に頼めば登記までやってくれるのか、司法書士に頼めば税金の相談もできるのか。両方に頼むとしたら、費用や手間は倍になるのか。そういう疑問がいくつも重なって、手が止まっている方もいると思います。
- このページは、会社設立で税理士と司法書士が担当する範囲の違いを、法律の条文から見渡すための入口です。特定の事務所を比べたり、どちらの専門家が上かを決めたりはしません。細かい論点は下に並ぶ個別の記事に譲り、ここでは全体の地図を一枚にまとめます。
- 会社設立で税理士に頼めること・頼めないことの全体を先に確かめたい方は、会社設立と税理士の全体像(トップ)からお読みください。
会社設立で税理士と司法書士は何が違う?担当できる仕事の一覧

会社設立の依頼先として税理士と司法書士が並んで出てくると、同じ仕事を取り合っているように見えます。けれども両者の違いは、腕前や料金の差ではなく、法律が配っている仕事の中身そのものにあります。まず、会社設立で出てくる仕事を、業として担当できる資格ごとに並べてみます。

税理士の列と司法書士の列を見比べると、丸が一つも重なっていないことが分かります。登記に関わる行は司法書士、税金に関わる行は税理士。会社設立の手続きでは、この二つがたまたま同じ時期にまとまって出てくるだけで、仕事の置き場所は最初から別です。
もう一つ、表の下の二行にも目を向けてください。社会保険の届出は社会保険労務士、営業の許認可は行政書士の仕事で、税理士も司法書士もここには入れません。人を雇う予定がある会社や、許認可の要る業種なら、二人だけでは会社設立の全部はそろわないということです。
以下で「できる・できない」と書いているのは、他人の依頼を受け、報酬を得て業として行えるかどうかの話です。自分の会社の設立手続きを自分で進めることは、どの資格がなくてもできます。
出典司法書士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 3条1項1号〜5号が業務、同条8項が他法律による制限、73条1項が非司法書士の禁止、78条1項が罰則(1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)。
違いの出どころは二本の条文。税理士法2条1項と司法書士法3条1項

一覧で見た線引きは、慣習ではなく法律から出てきます。税理士の仕事は税理士法2条1項に、司法書士の仕事は司法書士法3条1項に書かれていて、この二つの条文を並べるだけで、会社設立での役割分担の大半は説明できます。

税理士法の条文には「租税に関し」という枠がはめられています。法人設立届出書や青色申告の承認申請書は税務署に出す書類なので、ここに入ります。資本金の額や決算期をどう決めると設立後の税金がどう動くか、という相談も税務相談の範囲です。
司法書士法の条文の側は「法務局」が軸です。会社は本店所在地で設立の登記をすることによって成立する、と会社法49条(株式会社)・579条(持分会社)が定めているので、会社を法的に生み出す最後の一歩は司法書士の領分にあります。
- 税理士が向き合う相手税務署・都道府県税事務所・市町村。会社が成立したあとの税の手続きと、設立前の税務の設計。
- 司法書士が向き合う相手法務局。株式会社なら、その前に公証役場での定款認証もあります。登記が通った時点で、設立の仕事は一区切りです。
- 二人の境目登記事項証明書が出たところ。そこから先の届出に税理士が入り、そこまでの書類を司法書士が整えます。
出典税理士法(e-Gov法令検索(デジタル庁)) 2条1項が業務(1号税務代理・2号税務書類の作成・3号税務相談)、3条1項4号が公認会計士の資格、51条が弁護士の通知、52条が業務の制限、59条1項が罰則(2年以下の拘禁刑又は1…
「税理士が会社設立の登記まで」は違法になりうる。そう言われる理由

「税理士 会社 設立 違法」という検索が出てくるのは、税理士事務所の案内に「設立登記まで対応」と書かれているのを見て、不安になる人が多いからだと思います。結論から言えば、案内の書き方そのものではなく、実際に誰が登記書類を作り、誰が申請を代理したかで判断が分かれます。
司法書士法73条1項は、司法書士会に入会している司法書士または司法書士法人でない者(協会を除く)が、同法3条1項1号から5号の業務を行うことを禁じています。ただし書の「他の法律に別段の定めがある場合」に当たるのは弁護士で、税理士はここに入りません。違反した場合は同法78条1項により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

左の形は、ごく普通に行われている分担です。税理士事務所が窓口になり、登記の部分は事務所の中の司法書士か、提携している司法書士が担当します。窓口が一つで済むという点で、依頼する側にとっては便利な形でもあります。
2025年6月1日から、刑法改正により「懲役」は「拘禁刑」に置き換わりました。司法書士法78条1項も現行の条文は「拘禁刑」です。罰則に触れた記事を読むときは、確認した日付が書いてあるかを見てください。
確かめ方は単純で、「登記はどなたが担当されますか」と聞けば足ります。名前まで聞く必要はありませんが、司法書士が担当すると答えが返ってくるかどうかは、依頼の前に確かめておくと安心です。
出典ニセ司法書士にご用心(東京司法書士会)
会社設立に司法書士は不要?本人申請という選び方もある

「会社設立 司法書士 不要」と調べる方もいると思います。答えを先に書くと、自分の会社の登記を自分で申請するのは合法で、司法書士への依頼は義務ではありません。司法書士法73条1項が禁じているのは、他人の依頼を受けて登記を業として扱うことであって、本人が自分のために手続きすることではないからです。
法務省は、一人で設立する会社の登記について完全オンライン申請を案内しています。法務局のホームページにも申請書の様式と記載例が載っています。手順そのものはこのサイトでは扱いませんが、時間をかけられる人にとっては現実的な選択肢です。

自分で登記をする場合でも、税理士への相談は切り離して考えられます。司法書士に頼まないことと、税理士に頼まないことは別の判断です。資本金や決算期の決め方だけ税理士に相談し、登記は自分で出す、という組み合わせもあります。
反対に、時間が読めない方や、役員が複数いて書類が増える方は、司法書士への依頼を考えたほうが気が楽かもしれません。どちらにしても、会社設立の登記を自分でやるかどうかで迷ったら、自分の時間をいくらと見るかで決めると判断がぶれにくくなります。
出典法務省:一人会社の設立登記申請は完全オンライン申請がおすすめです!(法務省) 一人株式会社・一人合同会社は公的個人認証サービス電子証明書で全添付書面に電子署名でき、完全オンライン申請が可能
税理士と司法書士、どっちに先に声をかけるか

税理士と司法書士の両方が関わるとしても、最初の電話は一本です。どっちに先に声をかけるかは、設立したあとに税理士を顧問として付けるつもりがあるかどうかで、だいたい決まります。
- 顧問を付けるつもりなら税理士から資本金の額・決算期・役員報酬の決め方は、設立後の税金に効いてきます。しかも資本金と決算期は定款や登記に載るので、登記の前に決めておく必要があります。税理士への相談は、司法書士が動き出す前のほうが意味を持ちます。
- 登記だけ済ませたいなら司法書士から記帳や申告は自分でやるつもり、あるいは顧問はあとで探す、という場合は、司法書士に直接依頼して構いません。税理士を通さなければ登記できない、ということはありません。
- 許認可や雇用が絡むなら許認可の要る業種なら行政書士、人を雇うなら社会保険労務士にも早めに相談が要ります。どの専門家に声をかけても、必要なら連携先を案内してもらえることが多いです。
法人設立のあと、税理士の出番はどのくらいで来るか
登記が終わると、すぐに税務の届出が始まります。国税庁の案内では、法人設立届出書は法人設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に納税地の所轄税務署長へ出すことになっています(2026年10月17日確認)。青色申告の承認申請書や、役員報酬を払うなら給与支払事務所等の開設届出書にも、それぞれ期限があります。
つまり、司法書士から先に動いた場合でも、税理士に声をかけるかどうかの判断は登記のすぐあとに来ます。自分で出すなら様式を確かめ、頼むなら登記の段階から候補を探しておくと慌てずに済みます。
毎月の記帳と年一回の決算・申告を誰がやるか。そこに税理士の姿があるなら税理士から、自分の姿しかないなら司法書士から。会社設立の依頼先は、設立の日より、その先の一年から逆算すると決めやすくなります。
出典C1-4 内国普通法人等の設立の届出(国税庁)
両方に頼むと、会社設立の流れの中で担当はどう受け渡されるか

税理士と司法書士の両方に頼む場合でも、二人が同時に同じ書類に手を入れることはありません。会社設立の手続きには順番があり、前の段の成果物を次の段の専門家が受け取る形で進みます。全体の流れを一度だけ見ておきます。

流れを見ると、税理士の出番は1段目と6段目以降に分かれています。資本金や決算期の相談は登記より前、届出と記帳は登記よりあとです。両方に頼むなら、税理士には最初と最後、司法書士には真ん中を任せる、と覚えておくと整理しやすいと思います。
窓口が一つの事務所なら、この受け渡しは事務所の中で行われます。窓口を分けて自分で依頼する場合は、登記が終わったことを税理士に伝える、登記事項証明書を渡す、といったつなぎを自分で受け持つことになります。どちらの形が向いているかは、手間と費用のどちらを自分で引き受けたいかによります。
会社設立を扱い慣れた事務所なら、税理士と司法書士の間で必要な情報をやり取りしてくれます。依頼のときに「もう一方の専門家とはどうつながりますか」と聞いておくと、受け渡しの手間が見えてきます。
出典9-4 定款認証(日本公証人連合会) 拡張子・末尾スラッシュなしが実効URL。
税理士と司法書士の報酬はどう見る?実費とは分けて考える

会社設立にかかるお金は、実費(法定費用)と報酬に分かれます。登録免許税や定款認証の手数料といった実費は、税理士に頼んでも、司法書士に頼んでも、自分で手続きしても同じ額です。依頼先によって変わるのは報酬の部分だけです。

司法書士の報酬には、日本司法書士会連合会の「報酬に関するアンケート」(2024年3月実施)があります。発起人2名・資本金500万円の株式会社を発起設立し、定款・議事録などの書類をすべて作成して、定款認証と登記申請を代理した、という設例で、有効回答932件の平均が107,887円でした。設例の前提が違えば金額も変わりますし、事務所によって異なります。
税理士の側には、会社設立の報酬について公的な統計がありません。日本税理士会連合会の税理士実態調査は税理士という職業の実態を調べたもので、会社設立の報酬の相場を示すものではありません。税理士の報酬を比べるときは、各事務所が公開している料金表を範囲をそろえて見比べることになります。設立時の金額だけでなく、顧問料の月額と最低契約期間まで並べないと、比較になりません。
多くは、顧問契約を結ぶことを条件に、税理士の設立サポート料を0円にしている形です。その場合でも登記の実費は別にかかりますし、司法書士の報酬が含まれるかどうかも事務所によって違います。誰の報酬が0円なのか、顧問料はいくらで何か月続くのかを、同じ画面の条件で確かめてください。
出典司法書士の報酬(日本司法書士会連合会) 2024年(令和6年)3月実施の報酬アンケート。会社設立登記の設例は発起人2名・資本金500万円の株式会社の発起設立で、定款認証手続と登記申請の代理を含む。有効回答932/平均10…
まとめ|会社設立の税理士と司法書士は、違いを知れば両方とも使い分けられる

会社設立で税理士と司法書士のどっちに頼むか、あるいは両方に頼むかを考えるときの要点を、短くまとめます。
- 担当が違う登記は司法書士(と弁護士)、税務は税理士。司法書士法3条1項と税理士法2条1項が、それぞれの仕事を定めています。
- 税理士は登記書類を作れない作れば司法書士法73条1項に触れ、78条1項の罰則があります。税理士事務所が窓口でも、登記は司法書士が担当します。
- 司法書士への依頼は義務ではない自分の会社の登記を本人が申請するのは合法です。税理士に頼むかどうかは、それとは別に決められます。
- どっちが先かは設立後で決まる顧問を付けるなら税理士から、登記だけなら司法書士から。資本金と決算期は登記の前に決まります。
- お金は実費と報酬に分けて見る実費は誰に頼んでも同じ。税理士には公的な報酬統計がないので、顧問料まで含めて比べます。

資格は名簿で確かめられます
税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで、司法書士は日本司法書士会連合会の司法書士検索で登録を確かめられます。特定の事務所を勧める仕組みではなく、どの専門家に依頼する場合にも使える確認の手段です。
会社設立は多くの人にとって一度きりの手続きです。だからこそ、税理士と司法書士の違いを優劣ではなく法律の配り方として押さえておくと、案内の言葉に振り回されずに済みます。条文も制度も改正されますので、実際に依頼を決めるときは各セクションの出典で最新の内容をご確認ください。
出典税理士情報検索サイト(日本税理士会連合会) 登録内容のほか懲戒処分の有無も確認できる。
電話をかける前に、ひとつだけ決めておいてください
税理士と司法書士のどっちに頼むかは、性格や評判で決める話ではありません。会社を成立させる登記を任せたいのか、成立した会社の税金を見てほしいのか。最初に決めるのはそこだけです。登記なら司法書士、税金なら税理士。両方を一つの窓口でまとめたいなら、提携している組み合わせを探すことになります。
そして、どちらにも頼まないという選び方も残っています。登記の本人申請も、税務の届出を自分で出すことも、法律上まったく問題ありません。依頼するかどうかは、時間をどれだけ割けるか、設立後に記帳や申告を任せたいかで決めてください。
制度や条文は改められることがあります。ここに書いた内容は2026年10月17日時点で確かめたものです。ご自分のケースでどこまで依頼するのがよいかは、税理士・司法書士それぞれの専門家に直接ご相談ください。見積もりを取り、範囲をそろえて比べるのがいちばん確実です。
この記事は、依頼先を考えるのに役に立ちましたか。